【日本野球連盟公式サポ通信】黒獅子旗のゆくえ(TDK編)
【写真提供:TDK硬式野球部】
社会人野球のちょっと裏側をお伝えする「日本野球連盟公式サポーター通信」第13回目です。
今回は、優勝チームの証である黒獅子旗のその後を、当時のエピソード共に振り返る人気企画「黒獅子旗のゆくえ」です。
”一戦必勝”を目標に戦い抜いた都市対抗
優勝の証である黒獅子旗を掲げる川本大さん 【写真提供:毎日フォトサービス】
この年、「にかほ市旋風」という言葉ができるほど、勢いのある優勝を見せ、多くの社会人野球ファンを楽しませてくれたチームです。
今回は、優勝時TDKの主将をしていた、川本大さんにお話しをうかがいました。
川本さんは、2007年に現役引退後、2008年からは4年間コーチを務め、2012年から4年間、監督としてチームを指揮しました。
2018年に千葉県成田市に異動となり、現在は成田市にあるTDKの工場に勤務しているそうです。
休日は佐倉リトルシニアでコーチとして、中学生たちの指導に励んでいるとのことです。
優勝時を振り返っていただくと、
「どこのチームも優勝を目標に都市対抗に挑むかと思いますが、当時のTDKは表向きは4強入りを目標にしていたものの、実際は初戦が突破できたらいいよね、と話していました。だから初戦が突破できたことで、チーム全体の嫌な力みがなくなって、純粋に東京ドームを楽しんでいました」
試合が終わるごとに、“さすがに次は勝てないだろう“と、宿泊先に帰ってスーツケースに荷物をまとめ、いつでも秋田に帰れるよう準備をしていたくらいだったので、優勝には本当に驚いたそうです。
転換期だった2006年
秋田県にかほ市にある「TDK歴史みらい館」には野球部の紹介も展示されています 【写真提供:毎日フォトサービス】
秋田県にかほ市は、2005年10月1日に由利郡内の3町(仁賀保町、金浦町、象潟町)が合併し出来上がった街で、そのため、にかほ市での都市対抗出場は初めてでした。
また、この年に船木千美代さんが新監督に就任すると、練習体制も大幅に変更となりました。
「TDK千曲川が前年に都市対抗に出場をしていました。あちらは交代勤務をフルタイムでこなし、休みの日のみの練習での出場でした。ボクらは野球しかしていないのに都市対抗に出られていない。これはいけいない!となりまして(笑)。それまで午前仕事・午後練習だったスケジュールを変更して、冬場は8:30〜17:00まで仕事をして、18:00〜22;30で全体練習。それが終わってから自主練をしていたので、すべての練習が終了するのが24時を過ぎる日も多々ありました。社会人野球をやっている以上、野球で会社に恩返しをすることが仕事です。気持ちが途切れる日もありましたし、音を上げるチームメイトもいましたが、スタッフ陣が社会人野球選手としてのあるべき姿をしっかり伝えてくれたので、頑張れたんだと思います」
”にかほ市旋風”大爆発!
にかほ市と一緒に優勝の喜びを分かち合ったTDK 【写真提供:毎日フォトサービス】
「この年のスコアを見ていただくと分かりますが、本戦での自分自身の結果は10打数無安打でした。大会途中までDH出場でしたが、短期決戦の都市対抗で波にうまく乗れていない自分の状態をスタッフが上手く見極めて、調子のいい選手に入れ替えたのが勝利のポイントでもあったかと思います。結果が残せていないのに、主将だからということで一番最初に黒獅子旗を持たせてもらい、周りからは“あれ?何かしたっけ?”とからかわれました(笑)。今でもこれは当時のメンバーで集まると笑い話にされています」
「にかほ市はTDKの街」と川本さんが語る通り、在住している方の多くがTDKの関係者だそうです。
都市をあげてチームを応援した「にかほ市旋風」は、まさに都市対抗野球大会の象徴ですね。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ