8連覇を達成したバイエルンの歩み

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【(c)Getty Images】

最大の立役者はシーズン途中に就任した指揮官

第32節のブレーメン戦で破竹の11連勝を飾ったバイエルン・ミュンヘンが、ブンデスリーガ史上初の8連覇を達成した。シーズン途中の監督交代を機にチーム力を高め、2節を残して優勝を決めた王者の戦いを振り返る。

今シーズンのバイエルンは、前年に国内2冠へ導いたニコ・コヴァチ監督のもと、優勝候補筆頭という例年通りの前評判でシーズンインした。しかし、序盤戦はよもやの苦戦を強いられる。開幕戦のヘルタ・ベルリン戦を皮切りに、第7節のホッフェンハイム戦、第8節のアウグスブルク戦で勝ち点をとりこぼすと、第10節にショッキングな出来事が待ち受けていた。

夏の移籍市場で主軸が大量に流出していたアイントラハト・フランクフルトに手も足も出せず、1-5という歴史的な大敗を喫したのだ。コヴァチ監督が退任したのはその翌日。アシスタントコーチを務めていたハンジ・フリックが暫定的にチームを率いる緊急事態に直面した。

長らくドイツ代表のアシスタントコーチを務め、DFB(ドイツサッカー連盟)のスポーツディレクター経験を持つフリックは、識者の間でも「優秀な副官」という評判が定着していた。指揮官としての手腕は未知数で、だからこそバイエルンのフロントもあくまで暫定監督という肩書を用意。だが、そのフリックが素晴らしい仕事をやってのける。

まずは複数失点を喫することの多かった守備面を改善。全体の意識を高めると同時に、秩序のある組織を整えることで、ニクラス・ジューレがケガで離脱した穴を埋めるどころか、彼が健在だった頃を上回る守備力を植え付けた。また、コヴァチ前体制で不遇をかこっていたトーマス・ミュラーやジェローム・ボアテングを見事に復調させ、ダヴィド・アラバをCBに固定する独自の起用法も披露。途中就任ながら、悩める王者に新風を吹き込んだ。

すぐに正式な監督へと昇格したフリックが優秀な指揮官だということは、その数字が物語っている。リーグ戦最初の4試合こそ2勝2敗と振るわなかったが、以降は17勝1分けと怒涛の快進撃に導き、チームにマイスターシャーレをもたらしてみせた。当初は“つなぎ役”と目されていたこの55歳こそ、8連覇の最大の立役者と言えるだろう。

ピッチ上のMVPを1人選ぶのは難しい。30ゴール以上を挙げている主砲ロベルト・レヴァンドフスキ、アシストのシーズン記録を樹立したミュラー、チームリーダーの風格を漂わせるだけでなく、第28節のドルトムント戦で見事な決勝点を奪ったMFジョシュア・キミッヒは甲乙つけがたいところ。また、ウイングからコンバートされた左サイドバックで覚醒した新鋭アルフォンソ・デイヴィスの活躍もセンセーショナルだった。

リーグ8連覇という成功の上に胡坐をかかず、現在のチーム状態をキープできれば、DFBポカール、そしてチャンピオンズリーグ制覇も可能だろう。クラブ関係者を含む周囲の予想を良い意味で覆したフリック体制1年目には、まだまだ楽しみが残されている。

文=遠藤孝輔
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