ウィザーズの舞台裏に迫る! 第7回:ウィザーズの日本展開に必要なものとは 

ワシントン ウィザーズ
チーム・協会

【ワシントン・ウィザーズ】

ワシントン・ウィザーズがお届けするインタビューシリーズ! 第7回はスポーツブランディングジャパンのマネジングディレクターを務める日置貴之氏を迎え、これまでにウィザーズが取り組んできた日本市場の展開について、そして海外のスポーツビジネスが日本にマーケットを拡大する際に大切なことなど、さまざまな質問にお答えいただきました。

「日本語対応のコンテンツチームの存在は不可欠であり、ウィザーズが真剣に日本でのビジネスを考えている証明」

–––まず、ワシントン・ウィザーズと契約を結ぶに至った経緯を教えてもらえますでしょうか。そしてウィザーズの日本市場への展開に向けてどのように協働しているのでしょうか。

もともと弊社はNBAの公式サイトの運営などを手掛けていたことがあり、NBAと10年近くビジネス面での協力関係を築いていましたが、数年前、NBA ASIAの社長よりウィザーズやNHLのキャピタルズ、WNBAのミスティックス、そしてそれらのアリーナを経営する『Monumental Sports & Entertainment(モニュメンタルスポーツ&エンターテイメント)』を紹介していただき関係がスタートしました。チームのオーナーやビジネス部門の代表であるジム・バン・ストーン氏と日本やアジアのスポーツビジネスについて意見を交換するうちに、意気投合し、日本のパートナーとして一緒にビジネスを展開することになりました。弊社はスポンサーシップはもちろん、日本語でのソーシャルメディアの戦略構築や運営支援、広報活動など拠点としての機能を果たしていく予定です。

–––ここまで日本でのワシントン・ウィザーズのブランド展開にどのような印象をお持ちでしょうか?どのように変わってきたでしょうか。

残念ながら、昨年までのウィザーズはNBAチームや海外のスポーツフランチャイズにおいて認知度は非常に低かったと思います。しかし、八村塁選手のおかげで一気に知名度は上がりました。ウィザーズは八村選手に限らず、本当に多国籍の選手が集まるチームであり、また、ワシントンD.C.というアメリカの首都のチームとしての圧倒的なアセットを活用したブランド構築が可能なチームです。八村選手のおかげで注目度が高まっている機会を活用し、ウィザーズのブランド価値向上に貢献できればと思います。

–––八村塁選手のユニフォームの売り上げは日本では一番多かったということが発表されましたが、彼がもたらしているインパクトをどのように見ていますか?

スポーツのマーチャンダイジングはチームのブランドと選手の人気の掛け算であり、マーチャンダイジングはビジネスの成績表でもあります。八村選手以外の売り上げが上がっていないのであれば、それは八村選手自身の価値であり、チームの価値が向上しているとは言えません。私たちは八村選手に加え、長期的にウィザーズ自身の価値を高めることが仕事ですので、八村選手と一緒にチームのブランド価値を高める活動が必要だと感じています。

–––スポーツブランディングジャパンはこれまで多くの海外のスポーツ団体とも仕事をしてきましたが、NBAで初めて日本語コンテンツチームを作り出したウィザーズの取り組みについてはどのような印象ですか?ここまで日本のファンとの繋がりを作る仕掛けについてはどのように見ていますか。

私たちはプロアメリカンフットボールリーグのNFL、総合格闘技のUFCをはじめとした多くの国際的なスポーツ組織の日本語でのサービスを展開していますが、特に日本においては言語対応することがファンを獲得するのに不可欠であります。その上で日本語対応のコンテンツチームの存在は不可欠であり、ウィザーズが真剣に日本でのビジネスを考えている証明でもあります。日本ではあまり感じないと思いますが、ヨーロッパのサッカーやNBAの多くのクラブは中国語のサイトを持っているケースが多く、彼らが中国の市場拡大を協力にプッシュしているように、ローカライズというのはスポーツの国際展開においては極めて重要です。

–––これまで多くの海外リーグやチームが日本への展開を試みていますが、スタッフを採用して日本語コンテンツチームを自チームで運営しているケースはどのぐらいありますか?

あまり多くないと思います。これは海外で活躍する日本人選手の数と、その市場におけるビジネスの機会に関係しています。日本語コンテンツチームを作ることは大きな投資であり、マーケットへのコミットメントと言えます。そのマーケットにあったコミュニケーションをネイティブのスタッフがタイムリーに対応することで、ファンとのエンゲージメントを高めていく必要があります。

–––近年、多くの日本企業がユニフォームスポンサーとして海外へ投資する例が増えてきていますが、NBAでの可能性はどうお考えですか? 日本人選手の加入は日本企業の関心度にどのような影響力をもたらしているでしょうか。

実は、はるか昔より多くの日本企業が海外スポーツクラブのユニフォームスポンサーになっています。日本にも多くの多国籍企業がありますから、決して不思議ではありません。NBAの露出が増えれば関心度が高まる、というのは事実ですが、さらにそのような機会を単なる「露出」と捉えるだけでなく、スポンサーシップ・アクティベーションや地域の課題解決、本業への事業機会創出にまで価値を拡大できるよう、相互が協力できれば、ますますスポンサーシップの価値が高まると思います。

–––ウィザーズはNECとも早い段階で直接契約を成立させました。今後、他の日本企業がウィザーズとパートナーを結び、ニーズに応えるプログラム作りをしていく上で、どのような可能性を感じていますか。

ウィザーズのマネジメントチーム、パートナーシップのチームは常に新しい価値創造に積極的に取り組んでいます。ワシントンD.C.という地理的価値、バスケットボールというグローバルスポーツの価値を活用し、広告露出ではなく、社会との繋がりの入り口としてパートナーシップを活用できると考えます。企業の課題を解決する手段としてウィザーズが役に立つ、ウィザーズを通じて企業が社会の役に立つ、という相互メリットを生む形が理想だとおもいます。

–––日本と米国は遠く離れていますが、その中でチームとファンを近づける取り組みはどういったものが考えられますか? 他のパートナー企業との例なども含め教えてください。

今、スポーツは世界的に大変厳しい環境にあります。世界が変わってしまったとも言える状況では、「人が集まる」ということが難しく、スポーツビジネスに携わる人たちは日夜、ファンとチームの精神的・物理的な距離を埋めていく方法を考えています。
コミュニケーション領域のテクノロジーはそれらの距離をどんどん縮めてくれているので、日本とアメリカという距離感はもしかしたら東京と地方都市とあまり変わらないかもしれませんね。ただ時差だけは何ともできませんが。コンテンツの視聴もどんどん変わっていきます。映像制作や他言語対応がクラウド上で可能になり、また、グループチャットや仲間内で実況解説をする、商品を一緒に開発するといったサービスはすでに始まっています。今までは集客こそスポーツビジネスの起点であり、その延長でスポンサーシップや放映権、マーチャンダイジングというのが教科書通りの展開でしたが、教科書が変わる時代がやって来ました。

–––コート外のコンテンツを持ち、ストーリーを伝えることがリーグやチームの強みだとは思いますが、スポンサー企業はこのようなアセットをどう生かしていけると思いますか?

スポンサーシップは前述の通り、双方が協力して社会を豊かにする方法だと思いますので、よりカスタマイズが容易なコート外のコンテンツは試合以上の価値を持つかもしれません。新しいコンテンツ戦略を一緒に作っていく、という発想を双方が持つことが極めて重要で、ウィザーズはその準備ができています!

–––最後に海外の球団やリーグが日本で成功するために最も重要なことは何だとお考えですか?

難しい質問ですね。そのリーグや球団が何をもって成功と考えているかによりますし、おそらく日本市場だけでなくグローバル展開の一つとして日本市場を考えているケースも多いかと思います。

いずれの場合でも、その市場を尊重し、信頼できるパートナーと二人三脚で歩んでいくことが不可欠だと思います。私たちがお付き合いしている企業の多くは3年、5年、10年と長きに渡りお付き合いさせていただいています。ある時、大変な金額でイベントの権利を買いたいと言ってきた企業があったのですが、私たちもそのパートナー企業も、共にこの会社とは長くお付き合いできない、ビジネスの哲学が違うのではと思い、お断り申し上げたことがあります。もちろん、ビジネスなのでマネーファーストという企業もありますが、私たちの会社は、「困った時は助け合い、良い時は分かち合う」という関係を築くことが大事だと信じていますし、そういうリーグや球団と一緒に成功を分かち合いたいと思っています。ウィザーズの経営陣に加え、各部門のスタッフもみな、本当に素晴らしい仲間であり、毎週行われる電話会議で強い信頼関係を実感していますので、必ず大きな成果を分かちあえると信じています。
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著者プロフィール

アメリカプロバスケットボールリーグ・NBA所属のワシントン ウィザーズの公式日本語サイトです。監督、選手インタビューを含む試合前後のレポート、字幕付きオリジナルコンテンツも随時掲載。

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