ウィザーズの舞台裏に迫る!第6回:NBAチームが誇るジュニアプログラムとは?

ワシントン ウィザーズ
チーム・協会

【ワシントン・ウィザーズ】

ワシントン・ウィザーズがお届けするインタビューシリーズ! 第6回のゲストにはユースバスケットボール部門に在籍するシニアマネージャーのシャノン・クランシー氏を迎え、NBAチームが誇るジュニアプログラムについて、そしてこの自粛が続く期間に選手や指導者がどのように時間を過ごすべきかについてもアドバイスいただきました。

「お手本に最適なのはブラッドリー・ビール選手と彼のシュートフォーム」

子供たちを指導するクランシーコーチ 【ワシントン・ウィザーズ】

–––はじめに、これまでのキャリアについて、また『Monumental Sports & Entertainment(モニュメンタルスポーツ&エンターテインメント)』での役割についてお聞かせください。ウィザーズと関わることになったきっかけは何だったのでしょうか。

私はモニュメンタルスポーツ&エンターテインメントでユースバスケットボールのシニアマネジャーをしています。私たちの仕事はユースバスケットボールを通じて新たなファンを作り出すことです。調査によると、ほとんどの人は6歳から14歳の間に特定のファンになったり選手を好きになったりするということが分かっています。ですから、私たちのプログラムの大部分もその年代を対象にしています。

私は16歳の時にニューヨーク州ロングアイランドのルーテル高校でコーチやバスケットボールキャンプの仕事を始めました。ルーテル高校は未来のコーチ養成所のようなところで、当時いた若いメンバーの多くが高校、大学のコーチになりました。中にはNBAのコーチになった人もいます。そういう素晴らしい環境でしたね。私はどんどんキャンプの方で重要な役目を担うようになっていって、大学卒業後はそれが仕事になりました。内容はプログラムのマーケティングと販売、カリキュラムの支援です。やがて立場が上がっていき、最終的にバスケットボールプログラムのディレクターを引き継ぐことになりました。毎年夏になると8週間にわたって1,200人の子どもたちがバスケットボールキャンプに参加しますが、これは1カ所のキャンプとしてはとても大きな規模です。

同時に私はロングアイランドのルーテル高校でJV(二軍)チームのヘッドコーチと代表チームのアシスタントをしていました。それは素晴らしい経験となり、州の選手権で数回優勝して、多数の選手が大学に進みました。中にはプロになった選手もいますよ。

その後、マンハッタンのアッパーイーストにある“92Y”というカルチャーセンターで働き始めました。ファシリティマネジメントについてもっと学んで多様な切り口からプログラミングができるようになりたかったのです。ずっと、コーチやキャンプの仕事にはまたいつか戻りたいと考えていたので、NBAチームのリソースを使ってユースバスケットボールのプラットフォームをゼロから作るというこの仕事のことを知った時は、こんな夢のようなことがあり得るのかと思ったほどです。今の地位を得られたことがいかに幸運かをいつも自分に言い聞かせています。

–––ご自身でも選手経験はおありなのですか? それとも常にコーチを目指してこられたのでしょうか?

私はコーチ業に大きな影響を受けて育ってきたので、それが理にかなった進路でした。高校3年の時は代表チームの練習後も残ってJVチームの手伝いをしていました。大学に入ってからは夏の間に母校の高校チームを手伝いました。朝のワークアウトに一緒に参加して、日中はワークキャンプ、夜はサマーリーグチームのコーチと休みなしでしたね。時には私にも他にやりたいことがあるはずだと思って何度か試したこともありますが、最後はいつもこの世界に戻ってきてしまいました。

–––ジュニア・ウィザーズ・プログラムの歴史についてお聞かせください。

2017年にウィザーズのユースバスケットプログラムを再始動させました。NBAのリーグオフィスが2015年にリーグ全体のジュニアNBAプログラムを再始動させていて、全NBAチームに地元で独自のプログラムを開始するよう奨励していたのです。最初の夏はたった4つのサマーキャンプだけでしたが、3年後にはDMVエリア(注)全体で14セッションにまで増えました。また、ウィザーズ、ミスティックス、キャピタルシティ・ゴーゴーのためのクリニックも開いていますし、ジュニアNBAグローバル・チャンピオンシップの一環として2日間で100を超えるチームが参加する草の根的バスケットボールトーナメントを開催するほか、地域の優秀な高校チームたちの紹介も行っています。コーチや保護者の教育にも力を入れていて、コーチマニュアル、インストラクション用の動画、直接相談できるクリニックやパネルを用意しています。
(注:DMVエリアはワシントンD.C.、メリーランド州、ヴァージニア州を含む地域のこと)

–––通常の学校やキャンプのコーチと、NBA提携プログラムのコーチではどんな違いがあるのでしょう?

私にとって主な違いはリーチと影響です。地元のキャンプや学校でのコーチはその町や市の子どもたちに大きな影響を与えることになります。それがNBA提携プログラムになると、リーチははるかに大きなものになります。自分の地域内だけに限らず、プログラムの届く範囲はデジタルコンテンツを通してグローバルに広がります。

–––全てのNBA団体が同じようなプログラムを持っているのでしょうか? NBAチームがジュニアプログラムを持つことの意味とは何でしょう?

どのチームも何らかの形でユースの活性化に取り組んでいます。力の入れ方はそれぞれですが、今では全員がユースプログラムの重要性に気付いています。20年以上にわたっていくつかのプログラムが展開され、本当に素晴らしい成果を生みました。私は他のプログラムのディレクターたちとも絶えず連絡を取り合っています。団結力の強いコミュニティで、常にアイデアや成功を分かち合っています。

–––ユースバスケットボール全体の展望についてはどのような印象を持たれていますか? 近年で何か大きな変化はありましたか?

昔よりもずっとグローバルなゲームになりました。素晴らしいことです。以前はジュニアNBAグローバル・チャンピオンシップのようなイベントはありませんでしたし、海外からの選手もNBAに数えるほどしかいませんでした。

アメリカはこの10年ほどの間にトーナメント成績やAAU(アマチュア・アスレチック・ユニオン/全米体育協会)を重視するようになりました。それにはプラス面とマイナス面があります。高校生が大学側に見いだされるチャンスが増えるのは素晴らしいことなのですが、特に若い年代にとって重要なことが見失われがちになりました。本来ならその年代はバスケットボールの楽しさを知り、技術の習得を大事にするべきです。にもかかわらず・・・全てのコーチや保護者がそうだとは言いませんが・・・トーナメントに勝つことばかりにこだわってしまう人が多いのです。勝つのは素晴らしいことですし、競争も素晴らしいのですが、アンダー8のバスケットボールトーナメントで優勝したからといってディビジョン1のスカラーシップ(奨学金)が得られるわけではありません。

–––初めてバスケットボールをプレーする子どもたちを相手にする際はどのようなアプローチを心掛けますか?

何よりも重要なのは、初めて何かをしようとしている子どもたちにそれを楽しんでもらうことです。横からガミガミ怒鳴られてばかりで、退屈だとかつまらないと感じてしまったら、その子たちは違うものに興味を移してしまうでしょう。もう一つは彼らを励まし、達成可能なゴールを与えることです。進歩するのは楽しいこと、前にできなかったことができるようになるのは喜びです。若い選手には自分で努力することを覚えてほしいと思います。そうして人は成長するのですから――ですが、あまりにも難しいことを要求してしまうと失敗してしまいます。そして失敗ばかりが続くと、諦めてしまうことが多くなります。

–––過去または現在のウィザーズ選手で、子どもたちのお手本にしている選手はいますか? 世間にもっと注目されるべき選手の動きや、十分に評価されていないプレーがあれば教えてください。

お手本に最適なのはブラッドリー・ビール選手と彼のシュートフォームですね。とてもいいシューターやスコアラーであっても、基本に忠実ではない選手もいます。ですが、ブラッドは違います。彼は非常に速くてコンパクトなストロークで高いリリースポイントを持ち、ローテーションも上手です。正しいシュートのお手本そのものですね。

最も見落とされがちで正当に評価されていない技術の1つはフットワークだと思います。再びブラッドを例に出しますが、彼のステップバックはNBAでも最大級の武器となっています。それは全て優れたフットワークから生み出されたものなのです。彼はそうやってセパレーション(空間)を作るのですが、それはオフシーズン中に何時間も何時間も努力を続けたからこそできることです。

–––現在、外に出てバスケットボールをすることができない子どもたちに何かアドバイスはありますか? 上達するためにはどんなことをすればいいのでしょう。

バスケットボールさえあれば、それを使ってハンドリング技術を磨くことができますし、ストレングスとコンディショニングを強化するには身一つあれば十分です。私なら今はそれを頑張りますね。

他に向上できるエリアはバスケットボールIQ、つまり全体的な知識を高めることです。『YouTube(ユーチューブ)』で試合を見て、コート上の選手たちの動きを研究してみてください。ボールだけを見るのではなく、ボールから離れた場所で何がゴールへの決め手になるのか、ディフェンスがどう反応するかにも注目してみましょう。

–––コーチを志す人々に向けてのアドバイスはありますか? この自粛が続く期間にできることは何でしょう?

コーチとは教育です。選手たちは生徒です。ただプレーを教えるだけではいけません。プレーの“方法”を教えてあげるのです。動作とタイミングだけを教えるのではなく、どうやって、なぜそうするのかを教えてあげてください。ゾーンオフェンスを教えるには、ゾーンの働き方、動き、それぞれの長所と弱点を教えてほしいのです。彼らがコンセプトを理解すればするほど、プレーが上達し、もっと先に進みたくなるでしょう。そして何かがうまくいかなかった時も空中で自ら調整できるようになるはずです。

新しく学べることは常にあります。ですから今は自分の弱点に深く潜り、それを長所に変える素晴らしいチャンスです。努力の必要な部分を正直に認めましょう。そして、それを克服するのです! 例えば、あなたのいるチームが特定の守備を苦手にしているとするならば、その守備のエキスパートになりましょう! 日々前進です。
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著者プロフィール

アメリカプロバスケットボールリーグ・NBA所属のワシントン ウィザーズの公式日本語サイトです。監督、選手インタビューを含む試合前後のレポート、字幕付きオリジナルコンテンツも随時掲載。

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