ウィザーズの舞台裏に迫る! 第5回:専属ビデオグラファーが語る心得、そして八村塁選手の素顔とは?

ワシントン ウィザーズ
チーム・協会

【ワシントン・ウィザーズ】

ワシントン・ウィザーズがお届けするインタビューシリーズ! 第5回のゲストにはプロダクション部門に在籍する専属女性ビデオグラファーのアリエル・ウールフォーク氏を迎え、選手たちを撮り続ける心得、そして八村塁選手の素顔についても語っていただきました。

八村塁選手は「チームメイトやコーチ陣とジョークを言い合うのが好き」

–––はじめに、これまでのキャリアと『Monumental Sports & Entertainment(モニュメンタルスポーツ&エンターテインメント)』での役割について少しお聞かせください。

そうですね、私は大学の最終学年にいた時にプロダクションの仕事を始めました。最初はスポーツニュースのアンカーになりたいと思っていたのですが、地元テレビ局のインターンシップを終えてみて、これではないと気づいたんです。続いてワシントン・ウィザーズのインターンシッププログラムに応募し、採用されました。研修中にチームの立場からスポーツメディアのあらゆる面を見ることができました。出演者、プロデューサー、エディター、そしてビデオグラファー、いろいろな方がいます。ここで自分の中にシネマトグラフィーとストーリーテリングへの情熱を発見したのです。当時、ウィザーズにいた監督プロデューサーとビデオグラファーに師事しました。彼らは私が探検して、ミスを犯し、学ぶ様子を見守ってくれました。インターンとしてスタートし、今はワシントン・ウィザーズの専属ビデオグラファーになりましたが、ここまでの道のりは長いけれど、実りあるものでした。

–––現在のキャリアを志したのはいつですか?

ウィザーズのインターン時代に初めてカメラを手に持った時から、もっと学んでこのキャリアを進んでいきたいと感じました。プロダクション部門がシーズンを通して選手たちのストーリーを作り上げるのを見て、私もこういうタイプのビデオ制作に挑戦したいと思ったのです。

–––残念ながら日本ではまだ女性の専属ビデオグラファーは多くありませんが、ご経験上、NBAやスポーツ界における男女比率はどのくらいでしょう? 現在の役割に就くまでにご苦労などはありましたか?

私がウィザーズに来た頃は、女性のビデオグラファーはほとんどいませんでしたね。インターン時代にコンテンツの撮影、プロデュース、編集を担当する女性プロデューサーが1人いました。女性のビデオグラファーとお会いしたのはそれが最初です。NBA内の正確な男女比率は分かりませんが、これまで各地のNBAのアリーナを訪れた中で女性が撮影している姿を見かけたのは片手で数えられるほど、と言っておきましょうか。それでも、私がこの仕事を始めた時と比べると、女性ビデオグラファーは確実に増えています。残念ながら、まだ少数ではありますけどね。私はまた、若いアフリカ系アメリカ人の女性ビデオグラファーであることに起因するチャレンジに直面したことも何度かあります。駆け出しの頃は女性がスポーツに関わることについて、動機に疑問を持たれることはよくありました。チームや選手たちととても密接に関わる仕事ですからね。誰に何と言われようと、自分の仕事に集中するしかありません。そうすることによって、私個人ではなく、私の仕事を見てくれるようになっていきました。

–––コート外の選手たちを撮影する際に、最も重視し、大切にしているのはどのようなことですか?

私はコート上よりもコート外の選手たちを撮る方が好きみたいです。試合は楽しいですし、そこで生まれる感情や情熱を捉えるのは大好きですが、コース外では彼らの本当の姿を見ることができます。彼らの世界に深く関わり、バスケットボール選手である以前に人間である彼らの姿をファンに伝えられるというのはなかなか珍しい特権だと感じています。彼らには家族がいて、異なる趣味を持ち、楽しい個性を持っています。私は物語性のあるドキュメンタリースタイルの作品作りが好きで、NBAのソーシャルコンテンツは今そうした方向を重視しています。ファンはクールなダンクや3ポイントシュート以上のものを見たがっているのです。

–––なかなか素を見せてくれない選手がいた場合はどのようにして緊張を和らげ、関係を築くのですか?

ほとんどの選手たちは初めてプロダクションチームに会った時は礼儀正しいものの、どこか大人しいです。ごくまれに、自然と心を開いてカメラを受け入れてくれる機会が訪れることがあります。幸いなことに私は選手たちのいるところにどこへでも付いていくことができるとても有利な立場にいます。シーズン中は全ての練習、イベント、試合に同行します。ですから選手たちは毎日私と会うことになり、段々顔なじみとして打ち解けてくれるようになるのです。気が進まないことを無理強いすることは決してありません。彼らの本当の姿を捉えて、できる限り格好良く見せることが私の願いなのですから。選手たちが居心地悪く感じたなら、それは映像に現れてしまいます。そんなことは望みません。チームとずっと一緒にいることは、選手たちと良い関係を築けるだけでなく、コーチたちやフロントオフィス、さらにはメディカルチームとも親しくなることにつながります。

–––ご自身の仕事をどのように批評されていますか?どうなれば成功だと判断なさるのでしょう。

私は自分と自分の仕事を常に厳しく評価しています。仕事に100%満足できたことは、これまでのキャリアでほんの数回ですね。この業界には成長によって磨かれる部分が多々ありますし、私自身が改善できるところもたくさんあります。私はいつも同じような仕上がりになるのが嫌いなので、たくさんの種類の映像やチュートリアルを見るようにしています。いろいろなヒントやこつ、テクニックがあって驚きますよ。それからNBAに限らず、NFL、MLB、MLSなど、他のチームの活動を見るのも好きですね。最近は続々とクリエイティブなコンテンツが出てきていて、自分の撮影スタイルに生かせるものが常にあります。どういう時に成功だと感じるのかをはっきり説明するのは難しいのですが、自分の中でいいものが作れたと納得する瞬間があるのです。

–––これまでに数多くの選手を撮影してこられましたが、現役も含めてウィザーズの中で最も記憶に残っている選手はいらっしゃいますか? 何か披露できるエピソードもあればお願いします。

これまで本当にたくさんの偉大な選手たちを撮ってきましたが、その中で飛び抜けて印象深いのはポール・ピアース選手ですね。私がもっと若かった頃に父と一緒に彼のプレーを見ていたのを覚えています。なんて激しい選手なんだろうと思いました。彼はとてもアグレッシブで、試合中ずっと相手とにらみ合っていました。彼がウィザーズに来た年は、チームとプロダクション部門にとって驚きに満ちた1年になりました。私もプレーオフまで本当に楽しく撮影できて、個人的にあんな体験ができるなんて思いもしませんでした。ポール・ピアースという人は本当に楽しい人なんです。チームと選手たちに献身的で、カメラに写ることが大好きでした。私たちはあらゆる状況で撮影し、彼も喜んでそれに応じて、ありのままの姿を見せてくれました。ウィザーズを去った後も、アリーナでプレーする時はいつも私を見つけてくれて近況を報告し合いました。

–––八村選手がドラフトでチームの一員となり、初めて一緒に仕事をされた時の印象をお聞かせください。

八村選手との初対面はドラフトの日でした。第一印象は礼儀正しく物静かな人だなと思いました。その日は丸一日密着させてもらい、一緒に電車に乗って歓迎セレモニーの行われるキャピタル・ワン・アリーナに戻ってきました。電車に乗っている間、彼の口数は多くありませんでしたが、私に日本のキャンディーを勧めてくれて、とても親切な人だと思いました。選手が打ち解けてくれるまでにはしばらく時間がかかります。特に、会った初日から撮影を始める時はそうですね。八村選手の場合はNBA入りする前からメディアから注目されていたので、カメラに動揺する様子はありませんでした。

–––多くの日本のウィザーズファンがコート外での八村選手のことをもっと知りたいと思っています。彼を近くでご覧になって、どのような印象を持たれましたか?

初めて会った時と今とで、八村選手の印象は変わっています。気分によっては静かなこともありますが、普段はとても面白い人ですよ。チームメイトやコーチ陣とジョークを言い合うのが好きなんです。コート外ではとても人懐っこく、私に好きなテレビ番組を勧めてくれました。自分が出演した回の『テラスハウス』を見てほしいそうです(笑)。

–––あなたのような仕事をしたいと憧れる人は多いと思いますが、彼らにアドバイスするとしたらどんな言葉をかけられますか?

この質問をされると私はいつも、若い大学生たちにインターンシップを上手に利用しなさいとアドバイスします。インターンシップによって私は卒業後に自分の進みたい道を取捨選択することができました。またインターンシップのおかげで私は、学習や成長を促してくれるよき指導者たちと出会うことができました。プロフェッショナルとしての今の私に大きな影響を与えたのがインターンシップなのです。もう1つ最後に付け加えるなら、あなたの夢を誰にも邪魔させてはいけないということです。私がスポーツと映像の世界で働きたいと初めて家族に伝えた時、彼らは応援してくれましたが、これは一過性のものでいずれ冷めると考えていたようです。私が今の地位に就いてからも周囲は動機を疑ったり、いつまで続くのやらという目で見られたりしました。苦しい状況になった時には自分の信念が諦めないという忍耐力につながりました。私には自分の望みが分かっていたので、それを諦めさせることは何ものにもできなかったのです。
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著者プロフィール

アメリカプロバスケットボールリーグ・NBA所属のワシントン ウィザーズの公式日本語サイトです。監督、選手インタビューを含む試合前後のレポート、字幕付きオリジナルコンテンツも随時掲載。

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