【日本野球連盟公式サポ通信】新監督インタビュー(JX-ENEOS編)

チーム・協会

【神奈川県川崎市にあるJX-ENEOSの合宿所看板前にて。美しい施設は野球をするには最高の環境です】

日本野球連盟公式サポーターの豊島わかなです。
社会人野球のちょっと裏側をお伝えする「日本野球連盟公式サポーター通信」第4回目です。今回は、JX-ENEOSの監督として社会人野球界に戻ってきた、大久保秀昭監督に取材をしてきました。大久保新監督の見据える、エネオスの未来とは…?

名将復活!エネオス野球部を再び優勝に引き上げる!

明るく話の内容も面白い大久保監督。チームにも笑顔が増えそうです 【明るく話の内容も面白い大久保監督。チームにも笑顔が増えそうです】

2006年から2014年までJX-ENEOSの監督として黄金時代を築き上げた大久保秀昭監督が、今季エネオス野球部の監督として再就任しました。

エネオス野球部は、2012年に都市対抗と日本選手権を制し、史上2チーム目となる夏秋連覇を達成。
勢いのついたチームは、翌年の都市対抗も優勝し、51年ぶりの連覇という歴史に残る成績を残しました。
この快挙達成を指揮したのが大久保監督であったため、多くの社会人野球ファンが再就任の報道に沸き上がりました。

2015年からは母校である慶應義塾大学硬式野球部の監督として、在籍中3度のリーグ優勝にチームを導いた名将です。

しばらく都市対抗の大舞台から遠ざかっている名門・エネオスを、再び常勝チームへと導くために、「ドラマティックチェンジ」のスローガンを掲げ、戻ってきた大久保監督。
年明けの練習がスタートしたばかりの1月に、エネオスの今年についてのお話しをうかがいました。

自分が戻らなくては…社会人野球界に感じた危機感

「勝ちを知っている人間が組織の中に数人しかいない。エネオスを離れていた間に大きな変化はなかったが、この勝ちを知らないことで、特に若手選手たちは目の輝きを失っているように感じます。現状で大舞台に立ちチーム全体の目標である優勝につなげるためには、劇的な変化、つまり”ドラマティックチェンジ”が必要なんです」
と熱く語る大久保監督ですが、沈んでいるチームの空気を盛り返すのには、少し時間がかかるのではと分析しており、就任してからは選手たちと密にコミュニケーションを取りながら一緒に答えを出していく作業を行っているそうです。

「実はね、エネオスが負ける度に“監督として戻ってこないか?”と打診はあったんです。今年戻ってきた理由のひとつは、慶應野球部での監督業に達成感を感じたから。誰にも言えなかったけど、昨年の8月には慶應を辞める覚悟ができていました。それよりもこのままではエネオス野球部がなくなってしまうかもしれないと話しをされて、これは戻らなくてはな、と。自分の監督としての地位や名誉よりも、何とかしてほしいという言葉に動かされた。ためらいはなかったですね」

大久保監督は、万が一エネオスが野球部をなくすようなことがあれば、ほかの企業も社会人野球から手を引いてしまうかもしれないと危機感を感じ、「それだけは絶対に避けたかった」と再就任の決意をしたそうです。

「ドラマティックチェンジ」に込める思い

今年のチームスローガンであるドラマティックチェンジは、少しの変化ではなく、劇的な変化を見せないと再起できないという大久保監督の強い思いが込められたもの。
「スローガンはチームが勝つための前提条件。キーワードはV字回復です。今年は新人投手を獲得できなかったので、今いる投手陣の底上げは必須です。守り勝つのは当然だけど、現状四番がいないので、核となる存在を見つけて、4月のJABA京都大会までには“新しいエネオスはこういう野球をするんだな”というものを確立したいです」

ヒントを与えながら、ドラマティックチェンジへと導いていきたいと話す大久保監督ですが、意識改革を進められなければシーズン中であろうが今年は人を変えていくと厳しい目線で話します。
「劇的に変わるとはそういうこと。何をやっていいのか分からない、考えられないという子が増えているけれど、ここは大学野球のように4年で結果を出せば良いという場所ではない。なりたい自分になるためには、最短でどうやればいいのかを自分で逆算できるよう育てていきたいです。思考停止型の選手は困りますからね」

しばらく都市対抗に出場できていない、勝ちに飢えているチームだからこそ、勝つことに対しての意識は高まっているはずです。
大久保監督の“アメとムチ”の育成法は、選手たちにとって刺激になると感じました。

チーム一丸となって「忘己利他」の精神で野球に励む!

話の最後に「豊島さんは“忘己利他(もうこりた)”という言葉を知ってる?」と質問されました。
勉強不足のため、初めて聞いた言葉でした。

これは天台宗の開祖である最澄の言葉で、「自分ではなく、他者の幸せを喜ぶ」という仏教用語だそうです。
大久保監督は、チームとして、そして個人としてもこの忘己利他の精神を大切にしてほしいと思い、スローガンとは別で選手たちに伝えたそうです。
「負けるのには“もうこりた(もう懲りた)!”って意味も込めてね(笑)」
と、大きな笑顔でユーモアたっぷりな素顔を見せてくれた新監督は、エネオスに新たな風を吹かせてくれそうです。
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著者プロフィール

1949年に設立した社会人野球を統轄する(公財)日本野球連盟の公式アカウントです。全国の企業、クラブチームが所属し、中学硬式や女子野球の団体も加盟しています。1993年から刊行している社会人野球オフィシャル・ガイド『グランドスラム』の編集部と連携し、都市対抗野球大会をはじめ、社会人野球の魅力や様々な情報を、毎週金曜日に更新する『週刊グランドスラム』などでお届けします。

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