【中国サーフィン最新事情 第2回】河南ウェーブプールの波、サーフランチとの比較
【Nik Zanella】
河南ウェーブプールの波とトレーニング
Nik氏が提供してくれた上記の映像は、秒速5.8メートルで、カタ程度の「ショートボードモード」。会話アプリWeChatを使って、オペレーターに希望の波をリクエストする。 6分毎に1本の波を生成可能だが、8〜10分くらい間を空けたほうがよい波になるという。
地形はこれまでに何度か変更されたが、現在は3セクションあり、外側が一番ほれて小さめのチューブも巻くセクション。その後200mのロングウォールに変形し、インサイドでは急に速くなる。現状はトレーニング用にセットされているため、メローなロングウォールが生成され、コーチングには最適。
最大で秒速8メートル、波高3メートルまで生成可能というが、今年8月時点ではまだフルパワーでの稼働はしなかった。秒速6メートルで走らせると、およそアタマサイズの波が生成されるが、かなりポールの近くでブレイクする。フル稼働させるためには、まだ水深が足りず、外部構造を調整する必要があるのだという。
海に比べて、ウェーブプールの最大の利点は、同じ波で何度も繰り返し練習できることだが、中国ナショナルチームのトレーニングを指導してきたNik氏は、その効果は絶大だと語る。
「サーフィン未経験の子供が、オフザリップ、ボトムターン、カットバックなどのショートボードのベーシックマニューバーを習得するまでに1年かからないと思う。ここでの集中プログラムはカービングを学ぶのにとても役立ちます。」
【Photo: Nik Zanella】
サーフランチとの比較
TSN:サーフランチと比べて特にどんな違いがある?
Nik:サーフランチは10年をかけて開発とテストを繰り返してきたから、波はパーフェクトなんだ。
このプールは開発に1年しかかけていなくて、まだ調整が必要だけど、サーフランチと同じくらい長くて(700m)、3セクションがある波を生成できる。数本試したけど、すごく気に入った。今の波は、ロングボード向きかもしれないね。
TSN:サーフランチのレベルには追い付けると思う?
Nik:ここの波は既にファーストセクションと、ラストセクションでバレルを巻いてる。サーファーが中に入れるように、もう少し大きくする必要があるだけだよ。いつサーフランチレベルに到達するかはわからないけど、常に改良を続けていて、そのレベルに到達できるポテンシャルと技術的な知識は確実に持っている。
全長700mのプールを水中翼の搭載した電気機関車が駆け抜ける様子は「サーフランチ」を想起させる 【Photo: Nik Zanella】
中国からワールドチャンピオンや五輪金メダリストが登場するなんて、まだまだイメージは沸かないが、このサーフランチライクなトレーニング施設を手に入れた中国にとって、それはただの夢物語ではなく、現実的な戦略の上にある目標なのかもしれない。
第3回では、中国のプロサーファー育成戦略についてお伝えする。
執筆:THE SURF NEWS編集部
取材協力:Nik Zanella
Nik Zanellaプロフィール
イタリア人サーファー。2000年代はイタリアのサーフィン雑誌『Surf News』の編集を手掛ける。2010年より中国でISAコースプレゼンター及びレベル2コーチとして指導。2019年までナショナルチームのコーチを務め、現在は中国国内の様々なレベルのサーフィン強化プロジェクトに携わる。2019年5月、9世紀から13世紀まで中国で行われていた波乗りの歴史を紐解く『Children of the Tide』を出版。
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