【MGCいよいよ9月15日!】『マラソングランドチャンピオンシップ』のみどころ〜マラソン強化戦略プロジェクト瀬古利彦リーダーに聞く

日本陸上競技連盟
チーム・協会

【JAAF】

東京2020オリンピック日本代表選考競技会『マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)』が、2019年9月15日(日)に行われる。このレースのみどころを日本陸上競技連盟の強化委員会マラソン強化戦略プロジェクトの瀬古利彦リーダーに聞いた。
◆『MGC』の仕組みと東京五輪への手応え

『MGC』の出場資格は、2017年夏〜19年春の2シーズンに行われた国内男子5大会、合計10レース、国内女子4大会、合計8レースで設定された順位とタイムをクリア、もしくは「国際陸上競技連盟(IAAF)が世界記録を公認する競技会」で決められたタイムを出した選手に与えられる。『MGCファイナリスト』と呼ばれ、男子が31名(出場辞退3名除く)、女子が12名(出場辞退3名除く)となった。

瀬古リーダーは、「3年前にMGCのプロジェクトを立ち上げて、最終的に、こういう選手がMGCに出れば強化はうまくいっているな、という選手が揃った。女子は人数が少し足りないが、トップ選手はみんな入った」と語る。ただ、「男子は日本記録が立て続けに出ることは想定していなかった。大迫傑選手(Nike)が2017年12月の福岡国際マラソンで、2時間07分19秒をマークした時に、それに近い記録は出ると思っていたが(当時の日本記録は2時間6分16秒)」と、こちらは嬉しい誤算だったようだ。

また、瀬古リーダーは、「マラソン選手を育てるには最低3年かかる。プレッシャーがかかる中、複数回マラソンを走ることで、この選手なら間違いないという仕組みを作りたかった」。そして「MGCは、本番の真夏に近い環境でレースができる。冬で走れても、夏に走れるのかという疑問がある。それに対する答えでもある」と語った。


◆レース展開を予想。注目選手は?

「男子は31名いるので予想するのが難しい」と瀬古リーダー。「1番のポイントは当日の天候」と断言する。「9月中旬は雨が降ったら涼しいし、晴れたら30℃ぐらいになる。個人的には25℃を超えて、誰が夏に強いのかがわかるといいと思っている」。

さらに「スピードのある選手、スピードをスタミナでカバーする選手、揺さぶる選手もいるし、落ち着いて走りたい選手もいるので、レース展開が読めない。今回はタイムは関係なく、順位だけ。選手も勝負に徹するので予想はもっと難しくなる」。そして、女子については「12人なので、1人が動けばみんな動く。力が拮抗しているので、誰がどこで仕掛けるかに注目したい」。

注目選手を上げてもらうと、「男子はみなさんが思っている通り、日本記録を出した大迫選手と設楽悠太選手(Honda)、そして真夏のアジア大会(2018年ジャカルタ)で優勝した井上大仁選手(MHPS)の3人が中心」と瀬古リーダー。「ただ、予想通りにいかないのがマラソン」とも付け加えた。

さらに「山本憲二選手(マツダ)が好調と聞く。また、服部勇馬選手(トヨタ自動車)、佐藤悠基選手(日清食品グループ)、中村匠吾選手(富士通)も力がある」。女子については「記録は速くないが、力的には鈴木亜由子選手(日本郵政グループ)、若手の一山麻緒選手(ワコール)。それに松田瑞生選手(ダイハツ)、安藤友香選手(ワコール)も実力者。ただ、飛び抜けた力を持つ人がいないので、レース展開を含め、こちらも予想は難しい」。

【JAAF】

【JAAF】

◆東京五輪と同じコース、勝負のポイントは?

MGCのコースは基本的には東京オリンピックの本番と同じだが、新国立競技場が完成していないため、近くの明治神宮外苑(いちょう並木)が発着となる。かつて行われていた『東京国際マラソン』『東京国際女子マラソン』と、現在の『東京マラソン』を合わせたようなコースだ。

コース図を見ながら勝負のポイントを聞くと、「普通に考えると、最初から飛ばす人はいないと思う。10kmぐらいまでは様子見になるだろう。レースが動くのは10km過ぎ。24km付近の芝公園の折返しからは大きく動くと思う」と瀬古リーダー。

勝負のポイントは、やはり36kmの水道橋駅前からの上りですか?と聞くと、「もちろんそこは勝負を左右するが、その前の皇居付近がカギを握ると考えている」と意外な場所をポイントに挙げた。

皇居脇を走るのは、32〜34kmの2kmほどでフラットな部分だが、「上り坂の前で少し休みたい区間だが、日差しが強くて遮るものがない。照り返しもきついし、景色は変わらないのでペースもつかみにくい」。

さらに「見通しがきく上に、二重橋での折返しもあり、相手との差や顔色も確認できる。みんなが嫌で、苦しいと思うこの場所で仕掛ける選手は面白い。前が見えていて、100m以内なら逆転のチャンスがある。逆にここで遅れたら厳しい」。

そして、36kmから40km過ぎまで、30m以上の高低差がある上り坂。かつては『東京国際マラソン』『東京国際女子マラソン』で数々のドラマを生んだ最大の難所だ。瀬古リーダーは「スパートのタイミングが勝負の分かれ目。間違えると難しい」。また、「ラストの外苑西通りに入ってからのアップダウンも油断できない」。

最後にMGCが楽しみですね。と聞くと「日本のお家芸、マラソンが復活するかどうか。その火を消さないためにも選手たちにはがんばってほしい」。さらに「今頃、いろんなところでMGCで誰が勝つかを予想しながら、皆さん楽しそうに話をしていると思う。それが一番楽しい。居酒屋なんかでビールのつまみになっているはず。楽しみなので早く来てほしいし、寂しいから終わってほしくないし…」と瀬古リーダーは笑った。


文:小野寺俊明
■マラソングランドチャンピオンシップ

兼 東京2020 オリンピック日本代表選考競技会
兼 第103 回日本陸上競技選手権大会

公式サイト:http://www.mgc42195.jp/

■8 時50 分 男子マラソンスタート
■9 時10 分 女子マラソンスタート

男子:TBS テレビ系列全国ネット、TBS ラジオ
女子:NHK 総合、NHK ラジオ

コース:明治神宮外苑発着(日本陸上競技連盟公認コース)
明治神宮外苑いちょう並木〜四ツ谷〜水道橋〜神保町〜神田〜日本橋〜浅草雷門〜銀座〜新橋〜芝公園〜日本橋〜神保町〜二重橋前〜明治神宮外苑いちょう並木
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

陸上競技界の様々な情報を、より早く、より深く、より沢山お届けいたします。 日本代表やトップアスリートたちの素顔、大会の裏側、データで見るコラムなど、ここでしか読むことができないコンテンツをお楽しみください。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント