通算400本塁打達成!OBの田淵幸一氏、渡辺久信氏、田邊徳雄氏が語る中村剛也選手のホームランの魅力

埼玉西武ライオンズ
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【中村剛也選手通算400号記念メインビジュアル】

史上5番目の早さ……驚異的なペースでホームランを量産

2019年7月19日のバファローズ戦。9回に金子侑司選手の一発で3点差を追いつくと、延長11回に中村剛也選手がサヨナラホームラン。これがプロ野球史上20人目となる通算400本塁打になった。ドラマティックな偉業達成に沸き立つメットライフドーム。興奮を隠せぬチームメイトも、ホームベースを踏んだ中村選手を手荒く祝福した。

1611試合での大台到達は、史上5番目の速さだった。「レジェンド」の名前がずらりと並ぶ記録達成者の中でも、中村選手のホームランを打つペースは驚異的といえるだろう。

中村選手はこのほかにも

通算満塁本塁打 18本(プロ最多)
交流戦通算本塁打 77本(プロ最多)
6試合連続本塁打(リーグ最多タイ)
シーズン4満塁本塁打(リーグ最多タイ)

と、さまざまなホームラン記録を打ち立ててきた。中村選手が希代のホームランバッターであることを、あらゆる数字が証明している。

3人のOBが語る 中村選手のホームランを生み出す「技術」

ライオンズOBは、中村選手の活躍をどう見ているのか。田淵幸一氏、田邊徳雄氏、渡辺久信氏(現 埼玉西武ライオンズGM)の3人に話を伺った。

ルーキー時代から中村選手を指導してきた田邊徳雄氏

中村選手は2001年のドラフト2巡目でライオンズに入団。ルーキーイヤーの2002年は二軍のみの出場だったが、当時二軍の打撃コーチだった田邊氏は「打撃面ではほぼでき上がっている選手だった」と振り返る。
中村選手の特徴である「力感がないスイング」の萌芽はすでにあった。思い切りバットを振っていないように見えるにもかかわらず、傑出した打球の飛距離。ロングティーでは、西武第二球場のレフトに張っているネットを軽々越えていった。
自身の打撃スタイルを追求しながら、2年目の2003年に一軍初出場。その翌年にプロ初本塁打を記録する。

2014年には、シーズン途中から一軍監督として中村選手を指導。この年、田邊氏の記憶に強く残っているエピソードがあるという。

シーズン最終盤まで本塁打王争いを繰り広げていた中村選手だったが、9月後半にケガをして5試合欠場。しかし、シーズン最終戦となる10月3日のイーグルス戦、代打で打席に入った。

「ケガで出場できていなかったが、このときに『代打でいくぞ』と話したら『いいですよ』と答えた。結果は、右中間方向への同点3ランホームラン。本塁打王のタイトルが決定的になった。それを見て、彼は真のホームランバッターだと思った。チャンスは1打席だけだったが、そこで最高の結果を出した姿にとても感心した」

この年、中村選手は111試合の出場にとどまったが、それでもチームメイトのメヒア選手に並ぶ34本塁打でタイトルを獲得した。

球団のGMとして、渡辺久信氏が中村選手に期待する役割

中村選手はこれまで6度も本塁打王に輝いた。46本塁打で初めてタイトルを獲得した2008年は、渡辺氏が監督に就任した年でもある。

「ボールを飛ばすのは誰にでもできるものではないが、さんちゃん(中村選手)はボールを遠くに飛ばす技術をすでに持っていた。
ホームランを打てるバッターは、三振が多くても魅力がある。そういった選手が試合に出ていれば、ファンにとっては大きな楽しみになる。そういう意味もあってさんちゃんを使い続けた」

その後、渡辺氏が監督を担った2013年までの6年間で、中村選手は4度も本塁打王のタイトルを手にした。
「本塁打王や打点王を複数回獲得できるのは、彼の努力と技術の賜物。パワーやスイングの鋭さでなく、技術の高さで何度も本塁打王を獲得している。このことが、彼が並のバッターではないことを証明している」

現在は中村選手もベテランの域に入り、若手とともに汗を流している。今年からGMに就任した渡辺氏は、チームにおける中村選手の存在をどのように見ているのか。

「若手が伸びてくるのはいいことだが、伸び盛りの選手だけで戦うのは難しい。中村選手や栗山選手がチームにいることで、若手や中堅の選手には安心感がある」

ライオンズは今年、山川穂高選手が日本人最速で通算100本塁打に到達。若手や中堅打者の成長が著しい。栗山選手とともに野手最年長となる中村選手が、チームにどのような影響を与える存在となるのか楽しみだ。

「ホームランアーチスト」田淵幸一氏が語るホームランバッターの条件

1979年に誕生した「西武ライオンズ」の初代4番を務め、常勝西武軍団の礎を築き日本一にも貢献した田淵氏。通算474本塁打を記録したレジェンドは、中村選手を「完璧なホームランバッター」と讃える。

「バットをギュッと握らず、胸の前あたりで楽に構えている。力を入れないで打球を飛ばすのが本当のホームランバッターだ。中村選手のホームランは高く上がるので、滞空時間も長い。それをお客さんも楽しんでくれている」

現役時代に「ホームランアーチスト」と呼ばれた田淵氏も、ゆったりした構えからの軽いスイングでホームランを量産。中村選手より速いペースで400本塁打に到達した1人だ(田淵氏は1290安打(1438試合)、中村選手は1405安打(1611試合)で達成)。

また、中村選手の性格については次のように話す。

「中村選手にはとても親しみを持っている。ラジオの収録で一緒になることがあったが、考え方がホームランバッターのそれだと再認識した。彼はあまりしゃべらないように思われるが、実際に話すと明るい性格だ。ホームランバッターは変わっている選手が多い(笑)。気持ちが強くないとタイトルは取れない」

「もっとホームランを打てる」 中村選手が次に目指すもの

表彰式ではチーム全員で記念Tシャツを着てその偉業を祝福 【©seibulions】

7月30日、メットライフドームで連盟表彰が行われた。

表彰当日に400本塁打の記念Tシャツを全員で着用。表彰後にはそのまま記念撮影を行った。初めての試みだったが、ライオンズ一筋で前線に立ち続ける中村選手へのリスペクトの思いを込めた企画だった。また、球団の公式サイトでは特設ページを公開。記念グッズの情報や、ホームランの軌跡を写真で振り返るコンテンツなどを楽しむことができる。

中村選手は8月15日に36歳を迎えるが、まだまだ主力としてチームに欠かせない存在だ。気が早いかもしれないが、450本塁打、そして過去8人しか到達していない500本塁打への期待が膨らむファンも多いだろう。

「400本塁打は単なる通過点」と話すのは渡辺GMだ。
「身体も元気なので、500本塁打を目指して1年でも長く現役をやってほしい。ファンも私もそれを望んでいる」

田邊氏も渡辺GMと同様に
「太く長く、現役を続けてほしい。1本でも多くホームランを積み上げてほしい」と語った。

田淵氏は、自身のホームラン記録を念頭に置いてエールを送った。
「今年はすごく調子がいいと思う。1年でも長く現役を続けて、私の記録(通算474本塁打)に迫ってほしい」

当の中村選手は、400本塁打を達成した日のヒーローインタビューでこう締めくくった。

「まだまだ、もっとホームランを打てると思うので、より一層努力してがんばっていきたいと思います」

長年の練習で磨かれた技術は簡単に枯れるものではない。ベテランになってもたゆまない努力の先に、次の大記録が見えてくるはずだ。
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埼玉西武ライオンズに関する選手、イベント情報はもちろん、選手コラムやライオンズが取り組む活動についてもお届けいたします!週1〜2回を目途に公開いたしますのでお楽しみに!

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