成田緑夢、村岡桃佳も参戦! 日本パラ陸上競技選手権大会
【©? Rokuro Inoue】
多くの選手が11月の世界選手権(ドバイ)出場の条件となる派遣標準記録突破を狙って参加。大会前半はコンディションも良く、各種目の記録更新も期待される中で、選手たちはそれぞれの課題に向き合い、東京2020パラリンピックを見据えた。
和田伸也は1500m(T11/視覚障がい)で新たな伴走者と日本記録を樹立した 【©? Rokuro Inoue】
世界選手権優勝候補の結果は?
常々、記録更新には「気持ちが一番大事」と話している。パラ陸上界をけん引するベテランとしての自覚もあるのだろう。この日は記録更新こそならなかったが、大会を盛り上げようと、あえて世界記録更新を予告して大会に臨んでいた。「気候、観客、報道、雰囲気……様々な条件が揃ったタイミングで記録は出る。自分ひとりではどうにもならない」と振り返りつつ、50社を超える報道陣が集まったことについてはニヤリと笑顔。しかし、この日は公式発表2030人という観客で物足りなさも感じているようだった。
それでも、同クラスの選手が8人もエントリーしたことについて「すごくいい雰囲気だった。(リオパラリンピック金メダリストのハインリッヒ・ポポフ氏らと共に取り組んでいる、義足ユーザーのための)ランニングクリニックの成果だと思う」と2020年以降に向けた明るい兆しを喜んだ。
200mも26秒64の世界新。「今シーズンの好調を維持できている」という山本篤 【©? Rokuro Inoue】
東京内定を目指す選手たちの課題と収穫
「今シーズンは世界選手権で4位以内に入り、東京の出場権を獲ることが目標」と話した高桑早生(T64/片下腿義足)は、走り幅跳びで一本目からしっかりと記録を残し、4本目で5m24を跳んで優勝。「まずまずの結果。これを自信にしてこの先の試合に臨みたい」と笑顔で話した。
女子・走り幅跳び(T64)で優勝した高桑早生 【©? Rokuro Inoue】
視覚障がいクラスの日本記録保持者・高田千明(T11)、澤田優蘭(T12)はともに世界選手権の派遣標準記録に届かなったものの、「一連の動作が噛み合えば記録は簡単に出ると思う」(高田)、「助走と踏切を見直している最中だが、いい跳躍も何本かあった」(澤田)と自信と手ごたえを口にした。
成長に自信をのぞかせた走り幅跳びの高田千明 【©? Rokuro Inoue】
やり投げで新戦力が台頭
53m65をマークし、世界選手権の派遣標準記録を突破した高橋峻也 【©? Rokuro Inoue】
「数年前までは(国内の)競技力が低かったが、野球をやっていた選手たちが競技転向したことで記録が出ている。今大会で派遣標準を切った選手もおり、世界選手権には複数の選手を派遣できそう」と、日本パラ陸上競技連盟の指宿立強化委員長も評価する。
山崎晃裕(F46)が56m76の大会新で優勝 【©? Rokuro Inoue】
F12の視覚障がいクラスで日本記録を更新し、日本チャンピオンになったのは昨年競技を始めたばかりの大学生・若生裕太だ。甲子園にも出場した日大鶴ケ丘高時代は主将も務めていたが、20歳でレーベル病と診断された。「ステップや投げるときの腕の振りは野球経験が活かされている。下半身を強化するなどして記録を伸ばし、東京パラリンピックに出場したい」と目を輝かせた。また、同じく野球出身の政成晴輝は3位だった。
54m25の日本新記録で優勝した若生裕太 【©? Rokuro Inoue】
冬の金メダルを持つ2人の挑戦
車いすレーサーで100mを駆け抜けた村岡桃佳 【©? Rokuro Inoue】
日本パラ陸上競技連盟の増田明美会長によるアナウンスが会場に響く。大会2日目の100m(T54 /車いす)。平昌2018冬季パラリンピックで金メダルを含む5個のメダルを獲得したアルペンスキーの村岡桃佳が登場し、18秒36で2位に入った。小学2年時に陸上競技を始めたが、中学2年からはアルペンスキーに夢中になり、陸上競技の大会から足が遠のいていた。久しぶりの陸上競技のレースを終えて、「緊張して焦りが出てしまった」と振り返ったが、力強いスタートを見せて高いポテンシャルを示した。世界選手権の派遣標準記録16秒75を切れば東京の舞台も見えてくる。「そんなに甘い世界ではない。2020年はまだまだ遠い」と話しつつ、「ずっと走りたかった。やっぱり陸上競技は楽しい」と充実感をにじませた。
走り高跳びで日本記録に迫る跳躍をした成田緑夢 【©? Rokuro Inoue】
T61(両大腿義足)100mと200mで世界新をマークした湯口英理菜 【©? Rokuro Inoue】
T13 (視覚障がい)400mでは佐々木真菜が58秒34のアジア記録を樹立 【©? Rokuro Inoue】
photo by Rokuro Inoue
※本記事は2019年6月に「パラサポWEB」に掲載されたものです。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ