オープン戦の成績はシーズンとどう関係するか?〜オリックス・バファローズで見る相関分析

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【オープン戦の成績はシーズンとどう関係するか?〜オリックス・バファローズで見る相関分析】

【これはnoteに投稿されたあとざとさんによる記事です。】

1. はじめに

リーグ3連覇という球団史に残る黄金時代を築き上げた中嶋聡監督が退任し、岸田護監督の下で新たな時代が幕を開けようとしているオリックス・バファローズ。シーズン開幕まで残り2週間を切ったが、オープン戦では最下位に沈みファンからは嘆きの声が多く聞かれる。
しかし、オープン戦はあくまでシーズンに向けて選手が試合経験を積み、調整を行う場であり、その結果が必ずしもシーズン成績に直結するものではない。実際、2001年以降以降のオープン戦最下位(同率を含む)となったチームのうち、21.4%(6チーム)がペナントを制している。
とはいえ、だからと言って全くシーズンに影響しないかというとそんなこともない。今回は、オープン戦の成績がシーズンの成績とどのように関連しているかを相関係数を用いて分析し、どの指標に注目すべきかを明らかにしたい。読者のオープン戦に対する見方に、少しでも新たな視点を提供できれば幸いだ。

2. チーム成績から見る関連性

まずは、オープン戦のチーム成績とシーズンのチーム成績の関係性を、各指標ごとに見ていこう。
今回の分析に使用するデータは、NPB公式サイトでオープン戦の成績が公開されている2012年から2024年までの各シーズンにおけるオリックス・バファローズの打率やOPS、防御率などの各指標を対象とする。ただし、2020年シーズンは開幕が延期されたため、分析対象からは除外する。

チーム野手指標

以下の表は、チーム全体のオープン戦における各野手指標と、その年のシーズン成績における各指標、打撃の相対的な総合指標であるwRC+、およびチーム勝率との相関係数を示したものである。なお、 相関係数とは、比較対象との相関を-1から1で表したものであり、0に近づくほど相関がないことを示す。

チーム野手指標の相関係数 【あとざと】

打率や出塁率、OPSについてはそれぞれ相関係数が0.4未満であり、オープン戦でこれらの数値が低くてもシーズンの成績を心配する必要はなさそうだ。
一方で、長打力を表すISO(長打率-打率)やHR%(本塁打/打席)はやや相関が見られ、オープン戦で長打が出るとシーズンでも出やすい可能性があることが示唆される。
また、K%(三振/打席)やBB%(四球/打席)のアプローチ系の指標にもやや相関が見られ、シーズンとの関連性が窺える。
走塁指標のSpdに関しては、相関係数0.708と強い相関があり、シーズンのSpdとの乖離は少ないようだ。
一方で、wRC+や勝率との相関については、大小の差はあれど、さほど大きな関連性は見られない。したがって、オープン戦のいずれかの指標だけを見て、シーズン全体の打撃貢献や勝率を予測するのは難しいと言えるだろう。

チーム投手指標

同様にチーム全体のオープン戦における各投手指標と、その年のシーズン成績における各指標、投球の相対的な総合指標であるFIP-(低いほど良い)、およびチーム勝率との相関係数を示したのが、下表である。

チーム投手指標の相関係数 【あとざと】

防御率やFIP、WHIPといった指標はいずれも相関がほぼなく、野手における打率やOPSなどと同様に、これらが悪くても気にする必要はなさそうだ。
その一方で、唯一K%(奪三振/打者)は若干の相関があり、さらにチーム勝率との相関係数は0.722と強い相関が見られた。つまり、オープン戦で奪三振が多いシーズンは、勝率も高くなる傾向があることが分かる。
また、ホームラン自体が少ないため偶然の可能性は高いものの、オープン戦でのHR%(被本塁打/打者)はシーズンのHR%と-0.657という比較的強い負の相関が見られた。これに理屈をつけるなら、オープン戦でホームランを打たれた投手はシーズンで使いづらくなり、試合に出場しなくなるからと考えることもできる。しかし、そこまで深く考えすぎずにオープン戦でホームランを打たれたらシーズンではその分減る、くらいの軽いジンクスのように捉えても面白いかもしれない。

3. 個人別に見る関連性

次に、各個人のデータで見ていこう。
今回は、2012年から2024年(2020年を除く)シーズンにおいて、オリックス・バファローズでオープン戦20打席かつシーズン100打席以上の延べ114選手の野手、また同様にオープン戦6イニング以上かつシーズン30イニング以上の延べ85選手の投手を対象とし、各指標の相関係数を算出する。

個人野手指標

個人のオープン戦における各打撃指標と、その年のシーズン成績における各指標およびwRC+との相関係数を示したのが、下表である。

個人打撃指標の相関係数 【あとざと】

個人別に見ても、概ねチーム全体と同様の結果が得られ、長打力を示すISOやHR%にはやや相関があり、K%とSpdでそこそこ強い相関が見られた。やはり、長打やアプローチ、走塁といった要素については、オープン戦とシーズンでそれほど乖離はないようだ。
ただし、こちらもチーム全体と同様にwRC+との相関は見られず、選手の傾向があまり変わらないだけで、そこから生み出される貢献についてはオープン戦とシーズンで別物であることが分かる。
ちなみに、2024年シーズンの8選手のみでサンプル数が少なすぎるため、参考程度に留めておくが、O-swing%(ボール球スイング率)やContact%(コンタクト率)は強い相関が見られ、前述のアプローチ傾向が変わらないことの裏付けとなっている。
一方、打球方向に関しては、Pull%(引っ張り割合)とOppo%(流し割合)がそれぞれ強めの負の相関を示しており、オープン戦ではやや差し込まれ気味な打者もシーズンでは対応して引っ張ることができていると推測できる。

個人打撃傾向指標の相関係数 【あとざと】

個人投手指標

同様にオープン戦における各投手指標と、その年のシーズン成績における各指標、FIP-の相関係数を示したのが、下表である。

個人投手指標の相関係数 【あとざと】

投手でも、チーム全体と同様にK%にそこそこ強い相関が見られる。FIP-に対しても一定の相関があり、オープン戦で三振を奪える投手はシーズンでも活躍しやすいと言えるかもしれない。
その他の指標についても2024シーズンの6選手のみで算出してみたが、サンプル数が少なく、ばらつきが見られた。ただし、O-swing%については打者やK%とも整合性があり、奪空振り力が1つの鍵を握っているのは間違いないだろう。

個人投球傾向指標の相関係数 【あとざと】

4 . おわりに

結論として、野手,投手ともに長打と空振りに関連する部分は比較的シーズンにも関わるが、それ以外の指標ではあまり関連性が見られなかった。これは、目先の結果にこだわらず、どれだけ「質」の高い内容を残せるかが重要であることを示しており、オープン戦の目的を考えると非常に納得しやすい結果ではないだろうか。
シーズン中でも同様のことが言えるが、結果だけを見て一喜一憂せず(ましてや打率や防御率だけを取り上げて何か結論づけようとするのはナンセンス)、次に繋がる「質」の良いパフォーマンスに注目していくことで、また新たな希望や気づきが得られるかもしれない。
「常熱」をテーマに掲げる岸田野球では、どの選手がどのような野球を展開してくれるだろうか。開幕の瞬間が待ち遠しくてたまらない。
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