【日本選手権35km競歩】前日会見レポート/髙橋和生、野田明宏、丸尾知司、園田世玲奈、梅野倖子

日本陸上競技連盟
チーム・協会

【JAAF】

第109回日本陸上競技選手権大会・35km競歩(日本選手権35km競歩)が3月16日、石川県能美市で行われます。本大会は、例年4月に石川県・輪島市で行われていましたが、2024年1月1日に発生した能登半島地震の影響で開催が困難に。これに伴い、第109回大会からは同地が復興するまで、毎年3月に開かれてきた全日本競歩能美大会との併催で、実施されることになりました。今年9月に行われる東京 2025 世界陸上競技選手権(東京世界選手権)の競歩種目代表選考競技会としては、本大会が最後に位置づけられています。
大会を翌日に控えた3月15日の午後、日本選手権に出場する注目選手の前日会見が、石川県小松市内のホテルにおいて開かれました。
冒頭で、風間明日本陸連副会長が、「今回、能美市のご支援を得て、全日本競歩能美大会で、日本選手権35km競歩を開催していただけることとなった。選手たちも、また私たちも感謝の思いを持って明日の大会を迎えたい」と挨拶して始まった会見には、男子35kmに出場する丸尾知司選手(愛知製鋼)、野田明宏選手(自衛隊体育学校)、髙橋和生選手(ADワークスグループ)、女子35kmに出場する園田世玲奈選手(NTN)、梅野倖子選手(順天堂大)の5名が出席。ここまでの経緯や現在の状態、レースに向けた抱負、目指す結果などを述べたのちに、メディアからの質問に応じました。各選手のコメントは、以下の通りです。

【前日会見コメント(要旨)】

【JAAF】

◎髙橋和生(ADワークスグループ)
まず、今回の日本選手権35km競歩の開催にあたって、能美市が受け入れてくださったことに感謝したい。岩手県出身の私は、中学2年生のときに東日本大震災に遭い、希望が見えないなかスポーツから希望をもらった経験がある。競歩選手となった今、被災者の方々に、競歩を通じて、最後まで諦めず戦い抜く、そうした姿勢をお見せして、希望や勇気を届けられたらと思っている。
明日の天候は、あいにくの予報になっているが、私自身は派遣設定記録の突破と優勝を目指して、最後まで頑張りたいなと思っている。2024年は、20kmや(オリンピック代表となった)混合競歩リレーに向けて、スピードや短い距離を強化してきた。この大会に向けては、そこから35kmに向けて、もう一度持久力をつけることに取り組み、ボリュームのある練習の継続を目指してきた。また、昨年10月の高畠のときは、レース序盤に注意を受けてしまうことが多かったので、そこからフォームの修正を重点的に取り組んできた。先月の神戸で、大きな違反もなく歩ききることができたので、その点は確認できている。フォームの安定性というところには自信を持って、明日は臨みたい。ポイントとなるのは、力の差が出始めるであろう後半のあたりから。しっかりとギアを上げていき、ペースを落とさずに、最後で順位を取りきることを目指してやっていきたい。
<自国開催の世界選手権に向けた思いを、との問いに>
昨年、パリオリンピックに出場してみて、ヨーロッパのレースでの歓声がすごく大きかったことが一番印象として残った。世界規模の大会が、地元の日本で開催されるとなると、本当にすごい歓声の中で歩けるのだろうなと思うし、日の丸を背負って地元東京で歩けることは、パリオリンピックと同様、もしかしたらそれ以上に誇りを持って戦える大会になるんじゃないかなと思っている。ぜひ、またもう一度日の丸を背負って勝負したい。

【JAAF】

◎野田明宏(自衛隊体育学校)
髙橋選手も話したように、いつもであれば輪島市で開催する日本選手権35km競歩を、ここ能美市で開催していただけることに、本当に感謝している。本当にありがとうございます。今大会では、(日本選手権として実施される)35km、(全日本競歩として実際される)20kmに出る選手とたくさんいるが、地震の被害を受けた輪島市をはじめ石川県のたくさんの方々に、私たちの歩きで元気や勇気を届けられたらなと思っている。
私個人の今回の目標は、もちろん、派遣設定記録を突破しての優勝というところを、しっかり目指して頑張りたいと思っている。タイムに関しては、秘密ということで(笑)…、楽しみにしていただきたい。
<レースで課題になると思われるところは?の問いに>
ポイントとなるのは、たぶん全部になる。しっかり、レースをうまく運びたいなと思う。
<この大会までの経過は?の問いに>
神戸(日本選手権20km競歩)に向けては、ロングのトレーニングも積みつつも、スピードのトレーニングをかなり多めにやっていたが、神戸が終わってからは、歩型の部分、動きの技術部分を中心に取り組んできた。もちろんそのなかで、スピード練習やロングの練習も、この能美大会に向けて、もう一度しっかり取り組んできている。
<自国開催の世界選手権に向けた思いを、との問いに>
2021年の東京オリンピックでは、代表選考会を本気で狙って、そこで敗れて、本番を歩くことができなかった。その時の悔しさや辛さをずっと持ってやってきた。今回、世界陸上が東京で開催されるということで、ここは必ず(出場権を)勝ちとりたいと思っている。

【JAAF】

◎丸尾知司(愛知製鋼)
本来であれば、輪島で開催していたロングの種目(日本選手権35km競歩)を、大会種目が多いなか、能美市で受け入れていただいたことに、まず感謝を申し上げたい。そして、私たちを強くしてくれた輪島への強い想いを持って、明日は、選手みんなが全員協力して熱いレースをしたいと考えている。
私個人の大会に向けての思いとしては、高畠で(昨年10月に行われた選考レースで、川野将虎選手に)負けてからの4カ月間、4回の強化合宿を経て、勝つことに執着してきた、タイムに関しては、(目指しているタイムが)ないというわけではないが、勝つことにフォーカスしてきたので、そこに執着していきたい。
前半の20kmは楽に歩けるところなので、その楽なところを「いかにエコノミーな動きで進められるか」というところが鍵になってくると思っている。レースでは、そのへんの動きの調整を大事にしたい。
<この大会に向けて強化してきたことは?の問いに>
高畠競歩において27kmで勝負がついたことを思い出し、この大会に向けては、自分自身の後半がペースダウンしないよう動きのところを見直してきた。練習の強度について、スピードを上げることを意識するよりは動きのところを見直したわけだが、このほか、休みの取り方など練習以外の根本的なところについても、もう一度見直してきた。
<日本選手権20km競歩の結果から、20kmの代表入りが濃厚な状況だが、35kmについて、どう考えているのか?の問いに>
35kmの代表権に関しては、「ここを一番取りたい」と思ってやってきた種目。確実に取れるように頑張りたい。
<自国開催の世界選手権に向けた思いを、との問いに>
東京世界陸上に向けての思いというのは、めちゃくちゃ強い。(出場が叶わなかった)2021年の東京オリンピックのリベンジという思いが強く、「そこ(東京オリンピック)で取れなかったメダルを獲得できるように…」と、強く思っている。

【JAAF】

◎園田世玲奈(NTN)
男子の皆さんも話しているが、まず、今大会、能美市で開催というご協力をいただき、「本当にありがとうございます」とお伝えしたい。
私自身は、今年は元旦競歩に出場したあと、ここまでは動きの特化した練習を積み重ねてきた。調子が上がらなかったり、ケガを繰り返したりと、なかなかうまくいかないこともあったのだが、今年は東京で世界陸上が開催されるということで、出場したいという強い思いがあった。また、この35kmという距離が好きで、ずっとひたむきに取り組んできたところがあるので、出場権を獲得できるように精いっぱい頑張りたいと思っている。明日は、悪天候のなかでのレースとなるが、会社の皆さんや応援団の皆さんをはじめ、たくさんの方々が応援に駆けつけてくださることになっている。今の実力以上の力を発揮し、悔いのレースにしたい。
<この大会に向けて強化してきたところは?の問いに>
今回は、2月の神戸(日本選手権20km競歩)も出場をやめて、この大会に合わせて調整してきたのだが、実は直前に少し怪我があり、なかなか思うような練習ができなかったというのが正直なところ。ただ、35kmのレースを何回も経験してきたことは自信になっているし、また、ケガをしたことで、動きつくりをもう一回見直すことができた。それが今回のレースにどう出るかということに、少し期待もしている。
<レースで課題になると思われるところは?の問いに>
明日は悪天候ということで、本当に何もかもが読めない状況になってしまう可能性がある。しかし、そこを力に変えられるようにしたい。まずは、どんな天気や状況であっても、冷静な判断をして、自分のレースが進められればいいなと思っている。

【JAAF】

◎梅野倖子(順天堂大)
ここまで、4人の選手の皆さんが話してこられたように、日本選手権35km競歩を能美市で開催していただけることを大変感謝している。今回は、初めての35kmとなるので、自分にとっては未知なる世界。最後まで本当にちゃんと歩けるのかという不安と、35kmへの挑戦にワクワクする楽しみな気持ちの両方がある。まずは、2分48分00秒の(世界選手権)参加標準記録を切って3位内に入ることを最低限の目標として、今までやってきたことを精いっぱい出しきりたい。
<この大会に向けて取り組んできたことは?の問いに>
もともとロングが苦手で、20kmですら後半にすごくタレてしまうほど、後半の体力切れやエネルギー切れが、自分の弱いところだったので、この大会に向けては、距離を踏む回数として、20km以上のロングの練習を増やしたり、根本的な体力を上げるために短い距離での速いスピードでの練習などを多く取り入れたりしてきた。また、ポイント練習以外でのストローの距離を増やしたり、ストローのタイムを少しずつ上げたりするなど、地道なところから基礎的な体力を上げていくような準備をしてきた。
<レースで課題になると思われるところは?の問いに>
35kmは初めてなので、たぶん課題しか見つからないレースになると思う。試合では20kmまでしか歩いたことがないので、それ以降のところで自分がどれだけ動けるか、足がもつか、体力が保てるかというところが勝負になる。そこをクリアしていけるよう、必死に頑張っていきたい。
<自国開催の世界選手権に向けた思いを、との問いに>
世界陸上が東京で開催されることで、日本全部が盛り上がると思うし、陸上をしている方だけでなくて、いろんな人に見ていただけるのではないかと考えていて、特に競歩の場合はロードで歩く種目なので、気軽に見てもらうことができ、親しみを持っていただけるかなと思っている。ぜひ、自分の手で世界陸上の出場権をつかみ取って、全国の皆さんを勇気づけられる歩きをしたいなと思う。


日本選手権男女35kmは、東京世界選手権の日本代表選手選考会として行われ、男女優勝者が、このレースで日本陸連が競歩のみ独自に設けている派遣設定記録(男子:2時間26 分00秒/女子:2時間45分00秒)を突破した場合は、即時日本代表に内定します。また、選考条件として、本大会の順位が最も高い優先度を持つため、男子においては、昨秋、高畠(山形)で開催された第108回日本選手権35km競歩(輪島市開催の中止に伴い、開催地を変更)ですでに内定済みの川野将虎選手(旭化成)に続く、2枠目・3枠目を巡っての激戦が見込まれています。10選手がエントリーしている女子では、上記の派遣設定記録、さらにはWA(ワールドアスレティックス)が設定する2 時間 48 分 00 秒の参加標準記録を狙ってのレースが繰り広げられそうです。
また、男女20kmをメイン種目として開催されている全日本競歩能美大会も、今年で第49回を数える由緒ある大会。例年、アジア選手権、日本学生選手権を兼ねて行われており、1つのレースで、全日本チャンピオン、アジアチャンピオン、学生チャンピオンの座を懸けた戦いを見ることができるのが特徴です。アジア選手権の部には、男子は濱西諒選手(サンベルクス)、女子は柳井綾音選手(立命館大)が、日本代表としてエントリー。また、日本学生選手権は、7月にドイツ(ラインルール)で開催されるワールドユニバーシティゲームズの日本代表選考レースになっています。
大会は、3月16日、石川県能美市の根上総合文化会館前を発着点とする1周1kmの能美市営コースにおいて行われます。当日は、8時00分スタートの日本選手権男女35kmで熱戦の火蓋が切られ、両レースの終盤となる10時35分に高校男子10kmが出発するタイムテーブル。全日本・アジア選手権・学生選手権として行われる20km競歩は、男子が11時40分、女子は11時41分にそれぞれスタートし、その後、高校女子5kmが13時50分から、中学男女3kmが13時51分から行われる日程が組まれています。
当日は、YouTube「TBS陸上ちゃんねる」( https://www.youtube.com/watch?v=WYti-s3f77g )において、ライブ配信されることになっています。男子20km競歩前世界記録保持者で、2019年ドーハ世界選手権男子50km競歩金メダリストの鈴木雄介さん(新潟アルビレックスRC)が解説を務めるほか、日本の誇るトップウォーカーたちがゲストとして特別参加する予定もあるそう。こちらも、どうぞお楽しみに!
このライブ配信情報ほか、エントリーリストや日程、大会を楽しむさまざまな話題は、日本陸連公式サイト内の大会情報ページ(https://www.jaaf.or.jp/competition/detail/1917/)からアクセスすることができます。ぜひ、観戦にお役立てください。


文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)

【LIVE配信】東京2025世界陸上選考大会 日本選手権競歩 男子・女子35km競歩 & 全日本競歩能美大会 男子・女子20km競歩

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