昨夏の甲子園4強メンバーが多く残り、秋の東北大会は優勝した2023年に続いて決勝に進み、準優勝した。「個」ではなく、特色のある戦略とチーム力で戦う新生・青森山田は、攻守に抜け目がない。

　伝統の「守りからリズムを作る野球」を象徴するように、青森大会から東北大会までの計9試合は全て3失点以内に抑えた。特筆すべき点は、全試合で確立した虎谷投手、菊池統磨投手、下山大昂投手の右腕3人が継投する「必勝リレー」だ。

　コントロールに秀でる虎谷投手が先発して試合を作り、中継ぎの菊池統磨投手は横手から繰り出す独特の球筋で打者の目線を変える。エースナンバーを背負う抑えの下山投手は変化球と直球を織り交ぜ、試合を締めくくる。基本的にそれぞれ3イニングずつを投げる。

　打者に的を絞らせないだけでなく、トーナメントを勝ち抜く上で重要な体力の温存もできる。虎谷投手は「任される役割が決まっている分、より集中して投球できる」と手応えを口にする。

　打線は秋の公式戦のチーム打率3割7分5厘が示すように頼もしく、兜森崇朗監督は「攻撃的に打てるチームになる可能性を秘めている」と語る。

　1番から9番までそれぞれの役割を定めており、上位、下位ともに得点を狙える。佐藤洸史郎選手、葛西陽永選手の1、2番コンビが出塁し、勝負強い4番の蝦名選手らクリーンアップが還す。東北大会では4試合全てで先制点を挙げており、先手必勝の攻撃パターンは強力だ。

　一方で、東北大会決勝の聖光学院戦は逆転負け。暴投が失点につながり、けん制死などの走塁ミスも出て好機を逸した。主将の菊池伊真選手は「心の緩みで受け身になってしまった」と唇をかむ。それだけに「一瞬のすきも作らない」をテーマに、守備や走塁の動きなど「基本」を見つめ直した。

　降雪でグラウンドでの練習が制限される冬場は体力や筋力向上など個人のレベルアップに磨きをかけた。「全員で束になって自分たちらしく戦う」と菊池伊真選手。昨夏、3年生としてチームをけん引した右腕・関浩一郎さんや4番・原田純希さんら中心選手が抜けてもチーム力は高い。そこに個の力が加われば、春の最高成績だった8強、さらには初の頂点も見えてくる。