若きエースが抱く勝利への飽くなき欲求。躍動への集中がチームを勝利へと導く
相手ゴール前、中央の混戦から右サイドへボールが展開された瞬間、左ウイングの沢村舜が猛然と右サイドへと走り出し、タッチライン際で数的優位を作る。最後は走り込んできた右ウイングの太田景親のトライをアシストした。
今季のヤクルトレビンズ戸田(以下、L戸田)が強調しているプレーだ。自分のサイドがないと思えば逆サイドに関わっていけ──。バックスリーダーの沢村が言う。
「フォワードがモールからトライを取るなど頑張ってくれている中、バックスとしてはああいうプレーからトライを増やしたいんです。ウイングは片側を走るだけでなく両サイドに顔を出す。もっと運動量を増やす。大変ですけど、やらなければトライにつながらないし、つながればチームの勝利に貢献できる」
L戸田に加入して4年。下の世代から突き上げていけば、上の世代も負けられないとチームが活気づく。それが若きエースの責任だと沢村は考えてきた。
教員になるべく、日本体育大学時代を最後にラグビーは辞めようと考えていた時期もあるが、周りから「もったいない」と翻意を促され、社会人ラグビーの世界へ。加入したL戸田は強く、加入した1年目にトップイーストリーグで初優勝。「こんなチームでラグビーができるんだ、このチームで高みを目指すぞ」と心を動かされた出来事だった。そして昨年、チーム一丸でリーグワン参入を決めた。沢村は若くしてエースの立場になっていた。
当時はバックスコーチだった河野嵩史ヘッドコーチから細かな注文を受けたことはほとんどない。自分は自分らしく、何にも縛られず、躍動的にプレーすれば必ずチームに貢献できる──。その感覚が沢村には染み付いている。
「レビンズにはいい意味で上下関係がないんです。僕ら下の世代から上の世代にも要求できるし、先輩らも僕らにいろいろと教えてくれながらも『いまのプレーはどうだった?』と聞いてくれる。何でも言い合えるし、切磋琢磨できる。本当にいい環境だと思っています」
だから、伸び伸びとプレーさせてもらえるL戸田でもっと勝ちたい、と沢村は思いを深める。
「L戸田のラグビーを最後までやり切りたいんです。残りの8試合には出続けたいし、欲を言えば、ちょっとでも目立ちたい。自分が目立って、チームにいい影響を与えられれば、それが必ずアシストやトライにつながるので」
沢村は自身が躍動することに集中する。今節も、エースの仕事を全うする。
(鈴木康浩)
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