営業、チアの通訳、石垣島交流試合の運営も。台湾プロ野球球団でマルチに活躍する日本人女性インタビュー

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楽天モンキーズ・寺本萌野さん 【写真:筆者撮影】

 昨年11月の「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」や、元パ・リーグ選手の在籍により日本での注目が高まっている台湾プロ野球。そのなかでも楽天モンキーズは、元千葉ロッテの陳冠宇(チェン・グァンユウ)投手がプレーするほか、チアリーダーの「Rakuten Girls」が東北楽天の主催試合や千葉ロッテとの石垣島での交流試合に駆けつけるなど、特に日本となじみ深い。

 そんな楽天モンキーズで球団職員として働く日本人女性がいる。営業部の寺本萌野さんだ。

1年間で中国語を1200時間勉強し台湾へ

「台湾には大学時代から住んでいて、今年で10年目になります。幼少期、将来は観光業界や航空会社で働きたいと思っていて、親から『中国語も勉強したらいいんじゃない?』と勧められ『それもいいな』と。高校3年生の1年間、中国語を勉強する予備校に通いました。1年で1200時間中国語の勉強をしたらだいたい理解できるようになって、台湾の外国人枠で進学しました」

 大学生活を台湾・桃園市で過ごした寺本さんは卒業後、台北市の日系広告代理店に就職したが「北海道出身で小さい頃から北海道日本ハムファイターズを見ていて、野球自体は好きだったのでプロ野球業界で働くことにも興味があったんです。桃園は大学4年間住んでいた場所でもあったので『戻ってもいいかな』と思って」と、2022年5月に楽天モンキーズへ入社した。

 現在は主にスポンサー営業を担当。楽天モンキーズは台湾のプロ野球チームのなかで唯一、親会社が日系企業の楽天であることから、台湾の日系企業を中心に広告や本拠地・楽天桃園棒球場のVIPルームを販売している。シーズン中は営業で獲得した案件に応じて、球場のイベント運営も行う。

国際交流事業も担当。千葉ロッテとの交流試合では運営の中心に

 中国語と日本語を話せるからこその業務もある。

 コロナ明けから観光需要が増加したことを受け、楽天モンキーズでは日本の地方創生事業として、Rakuten Girlsが各地のプロモーション活動を実施。宮城県仙台市の喫茶店や菓子店を訪れた動画をSNSで発信したり、福島県いわき市の「いわきサンシャインマラソン」にチアメンバーと一緒に参加できる観光ツアーを行ったりと、各自治体からの依頼に応じて日本のインバウンド誘致に寄与している。このような取り組みでRakuten Girlsが来日する際のアテンドや通訳も寺本さんの仕事だ。

 さらには期間限定で球場アナウンスも。楽天モンキーズは、2017年から日本をテーマにしたイベント「YOKOSO 桃猿」を開催している。寺本さんは入社2年目の2023年から2年連続で、イベント期間中の土日に場内のアナウンスを担当した。

「球場アナウンスを日本語でやりたいというリクエストがあったのですが、当時はRakuten Girlsに日本人メンバーがいなかったんです。そこで、上司から『じゃあ、萌野お願いします』と言われて(笑)。ガチガチに緊張しながらやらせてもらいました」と、はにかみながら振り返る。

 スポンサー営業を行う一方で、日台の国際交流事業に携わること3年。今年2月に開催された千葉ロッテとの交流試合「アジアゲートウェイ交流戦 Power Series 2025 in石垣島」では、Rakuten Girlsのアテンドもしつつ、中心となってイベントを運営した。

千葉ロッテと楽天モンキーズの交流試合にて、始球式を務める台湾の子どもに事前説明する寺本さん。投げる位置など、千葉ロッテのスタッフとの打ち合わせ内容を通訳して伝える 【写真:筆者撮影】

「(昨年まで)日本人の上司がイベントを主導しているのを見て、いつかやりたいなと思っていたところ、ちょうど『やってみる?』と声をかけてもらいました。わからないことだらけでしたが、上司の力も借りつつ無事に終えられたのでホッとしています。これまでも、営業の案件でイベントデーの運営に携わってきましたが、社会人になってから、球団全体が関わるような大きな案件で裁量権を持つのは初めてだったので、特に印象に残る仕事になりましたね」

始球式の投球に拍手を送る 【写真:筆者撮影】

「普段球場に来られないお客さんのために」今後、力を入れたいこと

 これだけ幅広い業務を担っているが、「大変じゃないと言ったら嘘になりますけど、イベントがうまくいったときにスッキリするというか、みなさんの『よかったよ〜』という声がうれしくて。やりがいをすごく感じているので、大変よりも楽しいという気持ちが勝っています。日台両方の企業と向き合っていますが、私自身が日本人なのでカルチャーショックも少ないです」と笑顔の寺本さん。今後、より注力していきたいことを聞いた。

「国際案件はこれからも広げていければと思いますが、台湾国内の社会貢献活動にも力を入れています。例えば、老人ホームとの取り組みを実施していて、昨年はイベントデーで98歳のおじいさんが始球式をしたんです。そういった普段球場に来られないお客さんを呼んで、おじいさんやおばあさんが喜んでいる顔を見ると『よかったな』と思います。今年はこの取り組みのほかに、小さい子ども向けのイベントも行う予定があるので頑張っていきたいです」

 そして、インタビューの最後にこう口にした。

「私は趣味が仕事になりました。もちろん、良し悪しはあると思いますけど、いろいろな業務を楽しみながらできるという点で、天職だったのかなと思いますね」

インタビュー・文 高橋優奈
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