鷹の未来のエース候補 前田悠伍の示した大器の片りんと今後の課題

パ・リーグインサイト
チーム・協会

福岡ソフトバンクホークス・前田悠伍投手 【写真:球団提供】

上々のスタートを切ったルーキーイヤー

前田悠伍投手 2024年の二軍投手成績 【ⓒデータスタジアム】

 名門・大阪桐蔭高校でエースとして活躍し、2023年ドラフト1位で福岡ソフトバンクホークスに入団した前田悠伍投手。ルーキーイヤーだった昨季は4月に二軍で公式戦初登板を果たすと、最終的には9先発を含む12登板で防御率1.94をマーク。10月には一軍のマウンドも経験するなど、充実したプロ1年目を過ごした。今回は鷹の高卒ルーキーが好成績を残した要因と今後の課題にデータで迫っていきたい。

過去の高卒ルーキーたちと比べても際立つ質の高いピッチング

2005~24年 二軍 高卒1年目投手のK/BBランキング 【ⓒデータスタジアム】

 ピッチングにおいて奪三振と与四球は重要なポイントであり、その2つを比で表したK/BBは投手の能力を測る指標としてよく用いられる。昨季65イニングを投げて58奪三振8四球を記録した前田投手のK/BBは7.25となり、これは過去20年間に二軍で50イニング以上投げた高卒ルーキー27人のなかで最も優れた数字となっている。ランキングの対象選手にはオリックス・宮城大弥投手や埼玉西武・髙橋光成投手など、現在それぞれのチームでエース格として活躍している投手もいるが、プロ1年目の指標としては彼らを上回る数字を残したことになる。もちろんリーグや年度によって環境が異なるため、単純な比較で優劣を決めることはできないが、前田投手の持つポテンシャルの大きさを示すことはできるだろう。

すべての球種でストライクを奪える

前田悠伍投手 2024年の二軍球種別ストライク率 【ⓒデータスタジアム】

 質の高いピッチングのなかで特に優れている点が与四球わずか8個という制球力であり、それを支えているのが持ち球の精度の高さだ。球速140キロ前後のキレのあるストレートに加え、チェンジアップやスライダーなど4つの変化球を操るが、各球種のストライク率はすべてウエスタン・リーグの平均を上回っている。5つの持ち球すべてでストライクを奪うことができるため、簡単には四球を与えない安定感抜群の投球を実現することができるのだ。

決め球チェンジアップで空振りを誘う

2024年ウエスタン・リーグ チェンジアップ奪空振り率ランキング 【ⓒデータスタジアム】

 制球力だけでなく三振奪取能力にも優れる若き左腕だが、持ち球のなかで特に効果的だったのがチェンジアップだ。球速120キロほどで右打者から逃げていくような軌道が特徴で、高校時代から“魔球”と称されるこのボールは、ウエスタン・リーグ3位の奪空振り率を誇るなどプロの舞台でも決め球として威力を発揮。ストレートとの緩急は効果抜群で、58奪三振のうち約4分の3に当たる44個をストレートとチェンジアップの2球種で記録している。

課題は走者を背負った場面のピッチング

前田悠伍投手 2024年の二軍走者有無別ストレート成績 【ⓒデータスタジアム】

 プロ1年目としては十分過ぎるほどの成績を残した前田投手ではあるが、当然ながら改善するべき課題もある。そのひとつが走者を背負った際のピッチングで、ストレートの成績を見ると走者ありの場面では平均球速が2.6キロ低下し、被打率は3割近くまで悪化。本人も「クイックになったら球速が落ちちゃうのでどうしても変化球に頼ってしまったりとか、真っすぐを打たれてしまうことが多かった」と力不足を痛感している。

前田悠伍投手 2024年の二軍走者有無・球種別奪空振り率 【ⓒデータスタジアム】

 さらに、先に紹介したチェンジアップや、同じく空振りを奪うボールとして機能していたツーシームなども、走者を背負った場面では威力が減少。結果として、対戦打者に占める奪三振割合は走者なし時の27.6%から16.1%にまで低下していた。これからより高いレベルのピッチングを見せるためには、クイックモーション時の投球の質を磨いていく必要があるだろう。

 10月の一軍デビュー戦では3回8安打6失点と打ち込まれ、プロの壁の高さにはね返された前田投手。このオフはシカゴ・カブスの今永昇太投手の自主トレに参加し、多くの学びを得たようだ。今年の春季キャンプでは主力が集まるA組に振り分けされており、球団や小久保裕紀監督からの期待の高さがうかがえる。プロ入り後初めてのオフを経て、鷹の未来のエース候補はこれからどのような成長を遂げるのか。その歩みに引き続き注目していきたい。

※文章、表中の数字はすべて2024年シーズン終了時点

文・データスタジアム
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

「パ・リーグインサイト」は、ニュース、ゲームレビュー、選手情報、スポーツビジネスなど、パシフィックリーグ6球団にまつわる様々な情報を展開する、リーグ公式ウェブマガジンです。「パーソル パ・リーグTV」を運営する、パシフィックリーグマーケティング株式会社が運営しています。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント