“怒り”をあらわにするようになった板倉滉 あのアジアカップ以降、自らに課すテーマとは?
1つ前でつぶし切るシーンが増えた
ボルシアMGのプレッシングサッカーを最終ラインから支える。ハイラインを維持するため、板倉が意識して実践しているのが1つ前でつぶし切るディフェンスだ 【Photo by Ralf Ibing - firo sportphoto/Getty Images】
「キャプテングループというのはピッチ外のことを話すんです。事務的な話を聞いたり、ピッチ内であまりうまくいっていないときに強化部と話したりといったことが多い。そこで今年は監督に『滉はもういいよな』みたいな話をされて、こちらも『全然OKだよ』と(笑)。むしろピッチ内では『お前がやれ』と言われているんです」
話を聞いてすっと腑に落ちた。ここまでリーダーシップを発揮しているのにグループから外されるなんておかしいなと思っていた。情報に踊らされたなと思ったと同時に、こういうことは聞いてみないと分からないものだと再認識した次第である。
さらに言えば、板倉は今シーズン、真のリーダーになるための努力を欠かしていない。例えば、最終ラインでのディフェンスに関して言うと、ラインを下げたくないというチームのスタイルを鑑みて1つ前のところでつぶす守備を実行。これまではそこでイエローカードをもらってしまうケースが多かったが、今シーズンはきっちりとつぶし切る場面が増えている。
今シーズン途中に知り合いのカメラマンから、「ファウルでもいいからつぶしに行こうとしているように見える」と言われて以降、注目していたのだが、そこは明らかに変化してきている部分だ。板倉は言う。
「ガンガン行くようにしていますね。そうすることでチーム全体も前から行くようになる。あそこが緩くなるとダメ。特に奪った後は行かないといけないという感覚があります。そこで奪えたら逆にチャンスになるので。ただ、全員が同じラインでやらないといけない。最終ラインをパッと見たときにラインが低かったりしたら、その瞬間にやられるので。そこは練習からずっと声をかけながらやっているところです」
日本代表でも「仲良しこよしはダメ」
今年2月のアジアカップ準々決勝イラン戦で、決勝点につながるPKを献上した板倉。この敗戦を教訓に、レベルアップのため日々新たなトライを重ねている 【写真は共同】
「あの大会を経て、すべてをレベルアップしないといけないと思いましたけど、体をでかくしたり、スピードを速くしたりは、そんなにすぐに変わるものではない。だから、まずは日々の取り組みから意識を変えていくことで強さを得ていくしかないのかなと。今はそういうところで新たな楽しさを感じている」
レベルアップのために日々新たなトライをする姿勢が、結果に少しずつ表れていると言っていい。
”リーダーシップを発揮する“ことと”個の能力を高める”ことの同時進行は、2026年北中米ワールドカップのアジア最終予選を戦う日本代表においてもキーポイントになっている。先日、最終ラインのリーダーとしての思いについて、こんな話をしてくれた。
「もう仲良しこよしではダメですからね。いろいろな試合を重ねていくうちに責任感というか、もっとやらないといけないという思いは強くなっている。チームのみんなもそうですが、納得できないところは納得できないと言えばいいし、ダメなところは話し合って修正していけばいい。もっとそういう集団になっていかないといけないと思います」
11月シリーズ(15日のインドネシア戦、19日の中国戦)を前に、最終ラインに怪我人が続出している状況を踏まえれば、板倉に懸かる期待は非常に大きいものとなるだろう。そんなときに生来の温厚さが顔をのぞかせて、厳しいことを言えないようでは意味がない。フランクフルト戦のように、ときには周りを叱咤することも必要だ。クラブと同様、代表でも今まで以上に最終ラインのリーダーとしての自覚を持ち、チームを支える選手となってほしい。それがさらなる進化への一歩となるはずだ。
(企画・編集/YOJI-GEN)