秋季近畿大会は突出したチームが不在 大阪の2強に智弁和歌山や東洋大姫路も要注目だ
決勝で大阪桐蔭を破り、6年ぶりに秋の大阪大会を制した履正社。過去2年はいずれもベスト8だった近畿大会でどこまで勝ち上がれるか 【写真:沢井史】
※丸数字は府・県大会の順位
滋賀:滋賀学園①、滋賀短大付②
京都:立命館宇治①、龍谷大平安②、北稜③
奈良:天理①、奈良②
和歌山:智弁和歌山①、和歌山東②、市和歌山③
大阪:履正社①、大阪桐蔭②、大阪学院大高③
兵庫:東洋大姫路①、神戸学院大付②、三田学園③
ともに投手兼任の二遊間コンビが履正社の軸
大阪大会で6連覇がかかった大阪桐蔭を決勝で破った履正社は、1年秋から二遊間を守る辻琉沙(2年)、矢野塁(2年)が攻守にわたる軸だ。ともに投手としてマウンドにも立つ。
夏の大会でも登板した辻は、サイドからキレのある変化球で内角を突き、凡打の山を築く。一方の矢野は、最速140キロのストレートに気持ちの強さで勝負する。府大会準決勝の近大付戦では6回途中からマウンドに上がり、4回1/3を投げ3安打無失点。中盤まで激しい打ち合いだった試合の流れを引き寄せ、チームは延長タイブレークの激戦を制した。
大阪桐蔭との決勝では、辻→矢野の継投で強力打線を5安打3失点に抑え、ライバルを破った。今夏の準決勝でも両校は相対しているが、2-12で5回コールド負けを喫している。夏のリベンジを果たした多田晃監督は、「準決勝から1週間の時間があるなかで、全員で時間があれば(大阪)桐蔭のビデオを見て、しっかり対策しました。このままじゃ(相手投手の)森(陽樹)君のボールを打てないぞとか、言い合って練習してきました。でも、ここまで(12安打)打てるとは思いませんでした」と喜びのなかで驚いた表情を見せた。
打線は例年のような大砲は不在だが、1番・矢野、3番・辻のポイントゲッターに加え、準決勝では代打で左越え本塁打を放ち、8番スタメン出場の決勝では2安打をマークした加藤正宗(2年)、1年生ながらパワーのある7番・辻竜乃介ら下位にも好打者が並び、切れ目がない。
大阪桐蔭は先行されても跳ね返す力をつけられるか
大阪桐蔭の森は府大会で2試合に先発。準々決勝の関大一戦では大差がついて4回でマウンドを降りたが、被安打1、6奪三振と見事な投球を見せた 【写真:沢井史】
野手は捕手の増田湧太(2年)、俊足巧打の中堅手・畠中健太(2年)と甲子園を経験したセンターラインが現チームに残る。右翼手のレギュラーを掴み、今秋、1年生で唯一スタメンに名を連ねた内海竣太は、兄・優太(広陵→明大)に負けない打撃センスを持つ。
4連覇がかかる近畿大会に向けては、履正社戦のように先行された時に跳ね返す力をどこまで備えられるか。西谷浩一監督は「まだまだうまくいかない部分が多いですね。(府大会決勝は)ミスから失点してしまったので、そういったところを(近畿大会までに)どう修正できるかが課題だと思います」と前を向く。
大阪の2チームに加えて、今夏の甲子園に出場したレギュラーが4人残る智弁和歌山も上位進出が有力視される。
エース番号を背負う渡邉颯人(2年)、宮口龍斗(2年)の2人の右腕も健在で、宮口は今秋の県大会決勝で152キロをマークした。短いイニングだったとはいえ、「ピッチャーとしての自覚が出てきたし、スピードだけでなく状況に応じたピッチングができるようになった」と中谷仁監督は成長を認める。まとまりのある好右腕・田中息吹(2年)に加え、188センチの長身からの角度のあるストレートを武器とする奥雄大(2年)も今秋に経験を積み、投手層は厚い。
この秋、急成長を見せたのが1年生の正捕手・山田凜虎。勝負強い打撃も見せ、打順は試合ごとに上がり、県大会では中軸を担った。中谷監督は「インサイドワークはまだまだですが、アウトサイドワークはレギュラークラス」と成長を認める。打線では他にも1年生からレギュラーの藤田一波(2年)に、「この秋、もっと上がってきてくれたら」と指揮官が期待する福元聖矢(2年)ら巧打者が多く、投打にバランスが取れている。
初戦で対戦する神戸学院大付のエース・浅中翔達(2年)は緩い球を丁寧に投げる好左腕。夏の甲子園では初戦で霞ヶ浦の技巧派左腕を打ちあぐねただけに、どう対応してくるのか見ものだ。