MLBポストシーズンレポート2024

「我々は翔平に対していいプランを持っている」 挑発的なパドレスに大谷率いるドジャースはどう迎え撃つのか?

丹羽政善

「翔平に回せばなんとかなる」

優勝投手となったドジャースのマイケル・コペック。今季はチーム最多タイの67試合に登板し、防御率3.46、6勝8敗9ホールド15セーブを挙げた 【Photo by Kirby Lee/Getty Images】

 それを思い知らされたのが、9月24日からのパドレス3連戦だったという。

「1戦目は最後、トリプルプレーで負けたけど、次は翔平の打順だった。彼に回れば、なんとかなるんじゃないか。そんな雰囲気だった」

 端から見れば、終始パドレスが優位に試合を進め、トリプルプレーがなくても逃げ切っただろう――そんな展開と映った。

 ただ、戦っていた選手の肌感覚は、そうではなかった。

「最後、あそこまで追い込んだ。流れはむしろ、こっちにあると感じていた」

 あの翌日、実は大谷もこう話している。

「最後、ああいう形で終わりましたけど、その前にこちらが1点取ってますし、簡単にまず、終わらなかったというところが、重要だと思う。最後は不運というか、ああいう形で終わりましたけど、そこまでの過程で言えば、そこまで悪くなかった」

 実際、全体の勢いはドジャースにあり、トリプルプレーでも流れは変わらなかった。2試合目は四回、大谷が同点二塁打を放ち、六回には勝ち越しタイムリーを放った。3試合目も七回、大谷が前夜に続いて勝ち越し適時打をマークし、ムーキー・ベッツが続いて、突き放した。いずれもきれいな勝ち方だった。

 コペックは、こう総括した。

「確かに、パドレスには勢いがあった。でも、1戦目に負けても、そんなに追い込まれたとは感じなかった。とにかく、翔平がすごかったから。確か、8試合(9月19日〜27日)で24安打を打ったのかな? 2試合目と3試合目は、“なんとかなるんじゃないか”が現実になった。もしも1試合目、あそこで翔平に打順が回っていたら、どうなっていたのか。そんなことを考えたほどだ」

パドレスの研究を凌駕した大谷の執念

9月24日から26日にかけて行われたパドレスとの3連戦の2試合目、エイドリアン・モレホンから決勝打を放ったドジャースの大谷翔平 【Photo by Ronald Martinez/Getty Images】

 もっとも、あのシリーズでパドレスは大谷をよく研究し、それを徹底してした。

 結果としては大谷が勝ち越し打を放ったが、2試合目の七回、左腕エイドリアン・モレホンの大谷に対する攻めは、それを象徴した。

 高めで2ストライクと追い込んだ後、モレホンは外角低めにスライダーを投げた。大谷が見送ってボールになったが、相手バッテリーもこれは想定内。もしも、ボール球を追いかけてくれたら、それはそれで打ち取れる可能性が高まるが、そもそも4球目の伏線だった。

 というのも、大谷は後半に入ってから左投手に対して見逃し三振が増え、前半は6回だったが、後半は9月4日までで12回。そのうちシンカーを見逃したのが8回で、さらに6球が外角。これは2018年から23年までの6シーズンと同じ数だった。

 一方で、左投手の外角のボールになるスライダーを振る割合は、45.3%(2018年~23年)から22.5%(今年9月4日まで)に半減。スライダーを振らないように、という意識の副作用がシンカーの見逃しにつながっているように映るが、モレホンはそのデータ通り、4球目にシンカーを外角に投げてきたのである。

 その球を大谷が見送った。判定はボール。ボール1個分、外れていた。

 5球目、モレホンはもう一度、シンカーを外角に投げたが、やや真ん中寄り。あのときの大谷が逃すはずがなかった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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