体操・岡慎之助が個人総合で金メダル「航平さんのように勝ち続けたい」 連覇逃した橋本大輝「心を動かすものをもらえた」
橋本「思い描いていた自分とはかけ離れている」
連覇は叶わなかったが、「次の糧になる『心を動かすもの』をもらえた」と橋本はパリ五輪を振り返った 【Photo by Naomi Baker/Getty Images】
3年間しんどかったなって。特に最後の5月からの2カ月間、怪我をして自信を失いかけた。この舞台に立って演技することができ、期待してくださったり、応援してくださった皆さんには全然恩返しできなかったが、ここまで頑張ってきた自分を褒めたい。みんなのために団体で金メダルを獲れたことでお腹がいっぱい。また次を目指せるチャンスもあるので、この3年間何も成長できなかった自分を見直して、次のロサンゼルス五輪や、次の目標に向けていったん気持ちを整理してからスタートしようと今日決めた。
――体力的に相当厳しかったと思うが、今日の演技を振り返るとどんな6種目だったか?
まずは6種目できるかが一番不安だった。でもそれを不安と捉えずに、もう最後まで戦えなくてもいいから全てを出そうと思って、演技台に立った。ミスはあったが、最後まで諦めない気持ちを持って(最後の)鉄棒まで行き、できれば鉄棒も悔いの残らないように予定していた演技構成を組もうと思った。それは無理だったし、そうした悔しさが次の原動力になる。
今思えば怪我をしてからもずっと「個人総合の金を取りたい」とか、「種目別の金を取りたい」と言っていた自分を恥ずかしいと思うぐらい、もっと自分と向き合う時間を持てればよかったなと思っている。もう質問の内容も忘れるぐらい何を話しているかわからないけど(笑)。ここに立てなかった人たちには申し訳ないが、僕のパリは終わった。でも幸せです。
――最後の鉄棒を終えた後は感情を収めるような表情に見えたが、着地した瞬間の感情は?
一番はこの神聖な場であんまり泣きたくないなって思って。まだ(岡)慎之助の演技も残っていて、(最終演技者の)張選手の演技も残っていて、「この場で泣くのは早いな」と思った。でも演技が終わったらすごい解放されて、急に涙も出そうになって堪えるのが大変だった。着地を堪えるくらい。
――3日前のミーティングで、仲間に「苦しかった」と橋本選手が話したと聞いたが、どういう気持ちだったか?
(萱)和磨さんがずっと悔しい思いを持って戦っていることを聞き、苦しかったのは自分だけじゃないし、悔しかったのも自分だけじゃないなと思えた。全て話してスッキリしてから団体決勝を戦いたいと思えたし、本当にみんなのお陰で今の自分がある。成長できなかった自分がいるけど、みんなのために団体の金メダルを獲れた。今大会は悔しい思いもあるが、次の糧になる「心を動かすもの」をもらえたので幸せです。
――パリ五輪はどんな大会になったか?
東京五輪が終わってからの3年間は思い描いたものとも違うし、想定外のこともあった。思い描いていた自分とはかけ離れているけど、今はそれでいいなと思えるぐらい充実した3年間を過ごせたと思う。成長はできなかったけど、もう次にどうすればいいのかというところもちゃんと考えるように、自分と向き合う時間が一番必要なんだなと思う。思い描いていた3年間と今の立ち位置は全然違うけども、まだまだ挑戦できる自分がいるので、自分が4年後どうなっているかわからないなと思えたし、また新しい自分を作り出せるようにしていきたいと思う。
水鳥監督「オリンピックという大会が彼を急成長させた」
本当に期待していた選手だったが、 まさか1カ月間でここまで見違えるとは想像を超えていた。日本のこの素晴らしい体操を体現してくれた選手だと思うので、こうやって力を付けて結果を出してくれて嬉しかった。
――岡選手の勝因は?
僕らが想像しているよりも点数が出てきて、世界が彼の体操は「基本に忠実で素晴らしい」と評価してくれた。僕らが「着地」とよく言っていたところを彼が一番意識できていたので、そこがまず勝因としてある。この1カ月間、この大会に(調子を)合わせる彼の強さと質が急激に高まった。オリンピックという大会が彼を急成長させた。