週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#06】大型左腕のヤマハ・沢山優介、上位指名へアピールなるか? 日本生命・石伊雄太は稀少な即戦力捕手

西尾典文

「スローイングは天下一品!打撃も社会人で大きく成長」

【写真提供:西尾典文】

石伊雄太(日本生命 24歳 捕手 179cm/83kg 右投/右打)

【将来像】小林誠司(巨人)
スローイングは小林に匹敵。打撃は社会人時代の小林よりも上

【指名オススメ球団】中日
木下拓哉の後釜を石橋康太とともに争う正捕手候補として

【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

 石伊は三重県の出身で、高校時代は近大高専でプレー。同校は過去に同じ捕手の鬼屋敷正人(元・巨人)がプロ入りしており、甲子園出場こそないものの県内では強豪として知られているが、石伊の在籍時は目立った成績は残していない。その存在が関係者の間で話題になったのは近大工学部の3年時だった。秋のリーグ戦ではMVPに輝く活躍を見せ、明治神宮大会にも出場。チームは佛教大に初戦で敗れ、石伊も3打席連続三振と結果を残すことはできなかったが、2.00秒を切れば強肩と言われるイニング間のセカンド送球では度々1.90秒前後をマークし、そのスローイングは強く印象に残った。4年春にも大学選手権に出場。前年秋の悔しさを晴らすように2試合で3安打を放ち、打撃でも成長ぶりを見せている。

 大学卒業時にもプロ志望届を提出したが、指名はなく日本生命に入社。大学時代に評判だった捕手が社会人では苦しむケースも多いが、石伊はその高いディフェンス力を武器に1年目から正捕手に定着すると、都市対抗、日本選手権でも全試合スタメンマスクを任せられている。

 そんな石伊のプレーを直近で見たのは4月16日に行われたJABA日立市長杯の対日本製鉄鹿島戦だ。この試合でも石伊は度々素早いスローイングを披露。3回には盗塁を許したものの、これは相手のスライディングが上手かったためであり、タイミング的には十分にアウトという送球だった。大学時代と比べて感じられたのがプレーの落ち着きだ。試合は1点を争うロースコアの展開となったが、登板した2人の投手の持ち球を上手く使い、最後まで相手打線に的を絞らせることなく2対1で勝利をおさめている。ピンチの場面でも投手や野手に積極的に指示を出す姿は入社2年目の若手選手とは思えず、名門で1年間ホームベースを守り続けてきた自信が感じられた。

 もうひとつ成長が感じられたのが打撃だ。この日は5番で出場すると、ヒットこそなかったものの8回のワンアウト三塁の場面で決勝の犠牲フライを放ち、クリーンアップとしての役割を見事に果たした。大学時代よりも楽に鋭く振り出せており、ボールをしっかり呼び込めるようになった。第2打席では追い込まれてから粘りを見せて相手投手に9球を投じさせ(結果はサードゴロ)、第3打席ではきわどいボールをしっかり見送って四球も選んでいる。4月25日に行われたJABA京都大会の日本新薬戦ではホームランを含む3安打2打点の活躍を見せており、今年の公式戦の打率は.333と好調をキープ。レベルの高い社会人で打撃もしっかり向上させてきたのは見事だ。

 近年、社会人の捕手に対する評価は厳しく、最後に指名されたのは柘植世那(2019年西武5位)となっている。ただ、比較的早く使える捕手の需要はあるはずで、石伊はそのニーズに間違いなくマッチするはずだ。これから始まる都市対抗予選でもその持ち味を十分に発揮して、大学時代の指名漏れの悔しさを晴らしてくれることを期待したい。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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