井口資仁『井口ビジョン』

井口資仁が次世代へ伝えたい“考え方”とは 自身の今後と100年先を見据えたビジョン

井口資仁

実現させたいアメリカでのコーチ修業

 プロ野球もメジャーも、これだけ広く野球を観ることができるのは初めてです。当たり前ではありますが、野球にはセオリーこそあれど、どんなプレーをするかは十人十色。まったく同じ状況は二度と生まれませんし、監督の数だけ、選手の数だけ、選択肢は広がるのです。監督をしていた時は「どうしてあの采配になったんだろう?」「どんな意図を持って仕掛けたプレーだったのか?」と疑問に思っても、対戦チームの監督や選手に聞きに行くことはできませんでした。結局、答えは分からないままになることが多かったですが、評論家である今は何のためらいもなく質問できます。すぐに疑問を解決できるので、いろいろなスタイルの野球に対する理解を深めることができています。

 野球人としての引き出しを増やすという意味では、タイミングが合えばメジャーやマイナーでのコーチ修業は実現させたいところです。先にも触れた通り、現役を引退した直後、ホワイトソックスのオーナーから「コーチ修業をしたいなら、いつでもいらっしゃい」と有難い言葉をいただきました。アメリカと日本の指導は何が違うのか、やはり自分の目で確かめてみたいのです。

 青山学院大学の同期で、ダイエーではチームメートだった倉野信次が2022年から2年にわたり、テキサス・レンジャーズで指導者としてのキャリアを積んだことにも刺激を受けています。2023年3月にアリゾナへキャンプ取材に行った時も会いましたが、非常に有意義な時間を過ごしているようでした。日本でも投手コーチとして千賀滉大(メッツ)らを育てた手腕は高く評価されていましたが、メジャーの現場を経験したことで指導者としての引き出しはかなり増えたようです。2024年からは再びソフトバンクに戻りますが、チームにどんな経験や知識を還元するのか、楽しみでもあります。

100年先の未来でも野球が愛されるように

 機会があればメジャー球団でも監督をやってみたいですし、いつの日か侍ジャパンで指揮を執ることにも興味を惹かれます。さらに言えば、プロ野球のコミッショナーとなり、アマチュア球界も巻き込みながら、日本球界を変える大きなうねりを生み出してみたい思いもあります。

 プロもアマチュアも、日本球界は今、大きな変化に向けて動き始めているように感じます。これまで「野球は国技だ」「長年培ってきた伝統がある」と守ってきたスタイルは、100年先の未来でも野球が広く愛されるスポーツであることを願いながら、恐れずに変えていきましょう。

 昔は昔、今は今、そして未来は未来。今、日本球界に必要な変化を加えたとしても、これまで紡がれてきた野球の歴史は変わりませんし、先人たちの功績も色褪せることはありません。「野球を次世代につなぐ」ためのビジョンを多くの人と共有しながら、未来に向かって歩み続けていきたいと思います。

書籍紹介

【写真提供:KADOKAWA】

 高校では甲子園出場、大学では三冠王と本塁打新記録。

 プロ野球では日本一、メジャーリーグでは世界一を経験し、ロッテ監督時代は佐々木朗希らを育てた。

 輝かしい経歴の裏には、確固たる信念、明確なビジョンがあった。ユニフォームを脱いで初の著書で赤裸々に綴る。

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