高橋大輔の18年が詰まった『ロクサーヌのタンゴ』 親友・小林宏一と共演、経験を反映した“渋い”滑り

沢田聡子

共演者のパワーを感じ「同じ楽曲でも全然違う」

公演後、充実感を漂わせる高橋(右端) 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 そんな経緯を経て、1月19日に開幕した東京公演では、『Welcome Moulin Rouge Medley』の一部として高橋が『ロクサーヌのタンゴ』を滑り、プリンスアイスワールドチームともコラボレーションする構成が初めて披露されることになった。

 公演の約1週間前となる1月12日には、KOSÉ 新横浜スケートセンターでコラボレーションナンバーの練習が公開された。プリンスアイスワールドチームの男性ラインキャプテン・小林宏一と高橋は、アマチュアスケーターとして同期だった。小学6年生の頃から試合で共に戦ってきた幼なじみの2人は、現在に至るまで親しく交流しているという。高橋は、小林と一緒に臨んだ公開練習後の囲み取材で、コラボレーションナンバーへの思いを語った。

「僕はずっと(2006年~)プリンスアイスワールドに単にゲストとして出演させていただいて、コラボレーションというのは今回初めてなので、そこに対してすごくワクワクしています。今回のナンバーを外から見ていて、『自分も出てみたいな』と純粋に思っていたところにこういうお話をいただいて、本当にすごく嬉しく思います」

 見どころを問われると、高橋は「全体的に見どころではあるとは思うのですが」と前置きしつつ、小林と絡む部分について言及している。

「今回宏一と、短いのですが絡みがあって。そこからメンズのタンゴ風みたいな、初めての感じで。僕も基本アイスダンスでは男性役をしているのですが、(今回のコラボナンバーでは)ポジションでいうとちょっと女性のポジションっぽい気がするので、そこは見ている方には新鮮なのかなと思います。

 あと後半の盛り上がるところは、宏一の子分的な感じでやろうかなとも思っているので。僕もああいうテンションが高い感じというのは(今まで)やってきていないと思うので、そこらへんも楽しいのかなと」

 東京公演初日となる1月19日、シックな黒の衣装で登場し『ロクサーヌのタンゴ』を滑り始めた高橋は、本番でしか見せないオーラを放っていた。試合でこのプログラムを滑っていた18歳の頃は「とにかくセクシーに“エロく”なりたい気持ちが強くて、とりあえずそれだけを考えてやっていた」という高橋だが、37歳のプロスケーターとなった今は、一味違う洗練された深みのあるスケートを披露した。シングル時代から唯一無二だったエッジワークはアイスダンサーとしての鍛錬でさらに磨かれ、人生経験による渋味も加わって、楽曲に込められた哀愁を存分に体現する滑りだった。

 公開練習の際、本番はジャンプに挑戦することを明らかにしていた高橋は、言葉通りダブルアクセルを着氷させている。現役時代に積んだ修練に加え、エンターテイナーとしての経験も生かして滑る、絶品の『ロクサーヌのタンゴ』だった。

 続く『Welcome Moulin Rouge Medley』での高橋は、チームをリードする小林とお揃いの赤いジャケットを羽織り、共に会場を盛り上げる。その姿からは、プロスケーターとしてプリンスアイスワールドチームで滑り続け、15年目を迎える幼馴染をサポートしたいという高橋の思いが感じられた。

 公演後メディアに対応した高橋は、プリンスアイスワールドチームと共に滑った『ロクサーヌのタンゴ』を、充実感を漂わせながら振り返った。

「僕自身ソロで滑っていたナンバーでしたので、その時は本当にそれこそ状況を思い描きながら滑っていた。今回は前半入った時に女性と絡んだり、途中で男性と絡んだり、最後自分がバッと手を出した時に男性がバッと出てきてくれたり、本当にすごく新鮮で。より一層パワーを感じられながら滑ることができたので、同じ楽曲でも全然違うものに感じた今回でした。すごく楽しかったです」

 シングルスケーター・高橋大輔の名プログラム『ロクサーヌのタンゴ』は、18年を経た今、親友と共に新たな魅力を発揮するナンバーとしてよみがえった。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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