Vリーグ・大河バイスチェアマンが語るバレーの可能性 「あっという間に2倍、3倍」にする方法とは?
日本もやりようによっては勝てる
西田有志(パナソニックパンサーズ)は世界に通用する選手のひとり 【VLAP-2023-002 ©JVL】
バレーボールは野球と一緒で、負けているチームも最後の最後まで勝つ可能性を持っていますよね。バスケも「残り8秒で3点差を逆転」みたいなことはありますけど、バレーボールは25点を、最終の第5セットは15点を取られるまで、必死にやったら逆転できるかもしれない面白さがあります。そして別に2セット取られても3セット取り返せばいい。僕が見た試合でも24-19になってもう終わりと思ったら、そこから6点か7点連続して入れて、逆転したセットもありました。そこは面白いところだと思います。
あと決定的な違いは、ネットで挟んでプレーするから、バスケに比べて身長や横幅が直接は関係しないところです。バックアタックも含めて走ってから打てるので、相手が2メートルあっても185センチの人が加速して跳んだら勝てる。もちろんサーブは誰にも邪魔されずできる。身長が他より低い日本でも、やりようによっては勝てるな……とW杯を見て強く思いました。
――アウトサイドの選手を見ると石川祐希選手、西田有志選手、髙橋藍選手はみんな190センチ前後ですけど、W杯を見たらスパイクをバシバシ決めていましたね。
アルバルク東京の小酒部(泰暉)みたいなタイプはバレーボールに向いていますね。身長は190センチないけど、あれだけの身体能力があって飛び跳ねられれば世界と戦える。
スターがいて、認知度も高いバレー
大河氏はJリーグ、Bリーグで既に「改革」「成長」のフェイズを経験している 【スポーツナビ】
Bリーグが立ち上がったときは、田臥勇太以外にスターがいないのが泣きどころでした。当時は比江島(慎)も田中大貴も富樫勇樹も今のようには知られていなかった。Vリーグは既に西田有志(パナソニックパンサーズ)がいて、セッターの関田(誠大/ジェイテクトSTINGS)も、ミドルブロッカーの山内(晶大/パナソニックパンサーズ)もいる。女子の古賀紗理那(NECレッドロケッツ)もそうですね。知られている選手がいるのは圧倒的な強みだと思います。それが活かされていないのは、リーグとしてのプロモーション力がないからですが、そこをこれから変えていきます。
――バレーという競技、選手の認知度は間違いなくありますね。
「観戦したいスポーツランキング」の調査を取ると、女性はバレーボールが一番で、男性は野球、サッカー、バスケ、バレーという順番で4位です。女性の「するスポーツ」は60代まで含めてバレーがダントツです。ママさんバレーとかもあって、浸透度が高いんです。そういうデータを見ると、VリーグがBリーグに事業規模で差を付けられるのは不思議です。認知度もBリーグより少し下だけど、半分とか3分の1というわけではない。だけど入場者数、スポンサー、チケット収入は圧倒的に負けている。Bリーグの売上は75億で、Vリーグは9億ですよ。8倍以上の差が付く理由は考えにくい。正しく皆がバレー、Vリーグを発展させる同じ方向に向けば、間違いなく伸びるはずです。
――言ってしまうなら「普通にやれば絶対結果が出る」と。
簡単に言うと、JリーグとBリーグと同じ仕組みでやれば、あっという間に2倍、3倍になります。あと男子バスケはBリーグができてからW杯のアジア予選を突破できるようになって、先日のW杯では(48年ぶりの予選突破となる)パリ五輪出場を決めました。リーグのガバナンスや経営を強くすることは、競技力にもつながるんです。
バレーとバスケは長身選手を取り合うライバルですけど、今は給与が違いすぎるから、このままだとバレーに人が流れなくなります。石川選手や髙橋藍選手はBリーグが始まった頃にもうバレーボールを始めていた世代です。だけど10年後、15年後のバレーボール界はどうでしょう? その国の「バレーボール力」を上げるために、代表だけでなく、リーグがどれだけ日本各地で盛り上がっているかが大事です。
<後編につづく>