今季初V 西郷真央-苦悩と上昇を語る

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【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】

 JLPGAツアー2023シーズン第36戦『第39回伊藤園レディスゴルフトーナメント』(賞金総額1億円、優勝賞金1800万円)大会最終日が11月12日、千葉県長南町・グレートアイランド倶楽部(6741ヤード/パー72)で行われ、首位スタートの西郷真央が通算16アンダーで今季初優勝。1年半ぶりのツアー6勝目を「大好き」という地元の千葉で飾った。3打差の通算13アンダー、2位は木村彩子。
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 進化と苦悩は紙一重。西郷真央にとって、1年半のブランクは想像以上に長く、つらかった。通算6勝目の感想を質問され、「今までの優勝とはまったく違った印象と、喜びがある」と話す。ムービンデーの前日、コースレコードタイの63をマークした。

 よく、ゴルフ界でささやかれることがある。いいスコアの翌日は、スコアが伸びない。当然のように、例外はあるに違いない。この日、もっとも気をつけたのは集中力。「優勝はあまり意識しない。とにかく、自分を信じて、目前のワンプレーへ全力を傾ける-ことだった」という。2番でボギーが先行したものの、5番から3連続バーディーで首位を快走した。とにかく冷静沈着。これまで以上の静かな迫力を感じた。

 中盤まで展開は混戦を呈したが、パー5・15番。残り98ヤードの第3打を54度で、4メートルにつける。ここが勝負のターニングポイント-とばかりに、ラインを読む視線に光が宿る。そして、カップイン。3打のアドバンテージを得た。ただし、ここからもまったくスキなど見せない。プレーへ入るまでのルーティンを大事にし、最終ホールを迎えたが、まったく危なげなし。

 とはいえ、1メートルのウイニングパットが決まり、ボールを拾うとカップを見ると、少しだけ涙腺がゆるんだ。「ずっと、気を引き締めていた。でも、カップインするとすぐに、この1年半、いろんなことがあった。ちょっとこみ上げてくるものが...」。まさに好事魔多し-の22年の苦悩を細かく語った。

【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】

「去年の春、寝違えて首を痛め、2試合欠場。その頃から、ほんの少しずつ、体に負担がかからないようなスイングを、と改造を続けました。でも、こちらがいい、と改良していくうちに良かったところまで削られていく」と、負のスパイラルへ陥った状況を初めて明かす。何しろ、開幕から出場して10戦5勝という快進撃を続けていたのだ。それが突然、ストップする。最終戦のJLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップでは最下位で、しかも35オーバー。

 「もう、クラブを握ることがイヤでした。ゴルフをはじめてから、そんなことはなかった。2週間、休養をとって、オフは先が見通せない状況からのスタートです。何をしてもうまくはいかず、寝るまでいろいろと考え抜いた。そして、朝が来て、また練習です。元々、練習量は多い方だと思ったけど、とにかくその比ではないぐらい、ボールを打ち込んだ。開幕前、クラブのグリップがつるつるになっていた」と、苦笑しながら振り返った。

 そんな体験を経て、最終日を迎えている。鉄のように強固になったメンタルに加え、ドローヒッターとしてのニュースタイル、さらに信頼がおけるクラブまでそろった。晴れやかな表情で、「優勝して、会見に呼んでくださった。本当に光栄です」と胸を張ってあいさつする姿がまぶしい。
 自らが決断した24年からの米ツアー挑戦のための、Qシリーズも控える。幸運の総量は決まっている-といわれるものの、努力しだいで総量を増やせることを証明してみせる。それほど、今大会のプレーは素晴らしかった。(青木 政司)

【Photo:Atsushi Tomura/Getty Images】

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