「全米No.1高校生」の座を手に入れたコービー コーチKも参加したスカウト合戦は…
敷かれた「高卒NBA入り」のレール
キャンプに来ていたコーチは全員自分自身と大学のプログラムをコービーに売り込むチャンスがあり、誰もコービー本人の計画を知らなかったため、全員が彼を勧誘しなければならないと感じていた。そんな中、コービーとグレッグ・ダウナーとイーガンがロスマン・センターのエレベーターに乗ると、ドアが閉まる直前にシャシェフスキーも乗り込んで来た。彼とコービーが面と向かって会ったのはこの時が初めてだった。こうしてシャシェフスキーは文字通りエレベーターピッチ(※エレベーターに乗っているような短い時間内で簡潔に行うプレゼン)をする機会を得た。
我がデューク大では、ダイヤの原石を磨く。素晴らしい素質があることがわかっている選手を、さらに輝かせるんだ。
すごいな、なんていいセリフだ、とイーガンは思った。
リップ・ハミルトン、レスター・アール、シャヒーン・ホロウェイ、ジャーメイン・オニールが揃っていたキャンプで、四人とコービーが一緒にラサール大学で新たな『ファブ・ファイブ』を結成する話をまだしていた中、コービーは一年前にソニー・ヴァッカロにした約束を果たした。キャンプのMVPに選ばれ、実質全米一の高校生選手の座を手に入れたのだった。その場にいたジョーは、息子が注目を集めていることを大いに楽しんだ。ブライアント家では数々のコーチからの電話が鳴り響き、そのたびに一家の食事は中断させられた。ジョーがバートラムに通っていた頃はこうではなかったものの、ジョーはコービーに代わって堪能していた。
「信じられないほどたくさんの人から、コービーのプレーを楽しんでいると言われるんだ」とジョーはキャンプ中に発言していた。
コービーの進学については? 「今は大学の話はなるべく避けるようにしている」とジョーは言った。
「コービーが大学を選ぶ時間はまだたっぷりある。大事なのは、今のこの人生で一度きりの体験を吸収することだ」。
どの道、これでもう知れ渡るはずだった。リクルーティングのランキングで誰がトップに君臨することになるのかは、すでに全員が知っていた。知らない人々も、すぐに知ることになるはずだった。誰がキングなのか、すでに全員が知っていた。知らない人々も、すぐに知ることになるはずだった。
気の毒なことに、ケリー・キトルズはもはやヴァッカロの頭の隅へと追いやられていた。ヴァッカロは、コービーこそが自分がAdidasで思い描いていた野心に釣り合う選手だと信じていた。これは、コービーにふさわしいエージェントとパートナーをつけて、完璧に進めなければならない計画だった。
ブライアント家と同様にフィラデルフィアでの経歴があるような人物だ。ヴァッカロと同じように、プロを目指すアスリートは自分の好きなようにキャリアを築く権利があり、NBA入りするためには大学が必須ではないと信じているような人物だ。コービーをバスケットボール界の次なる神の子にするというヴァッカロのビジョンを共有し、それを実現するために人脈を使えるような、名声のある人物が必要だった。その夏、ヴァッカロはアーン・テレムに電話をかけた。
書籍紹介
本書はNBAレジェンド、コービー・ブライアントがフィラデルフィアで州大会優勝を成し遂げ、レイカーズに入団するまでの軌跡を描いています。コート上の話だけでなく、アメリカの黒人文化や社会構造、また大学リクルートの過程などさまざまな要素が若きコービーに影響を与える様が綿密に描かれているファン必携の一冊です。