U-22日本代表・山本理仁が語る欧州挑戦とパリ五輪予選「海外挑戦ができた今、あらためて世界大会に出たい」

飯尾篤史

10年以上の仲である譲瑠の存在はありがたい

シント=トロイデンには盟友の藤田やU-22日本代表GKの鈴木彩艶も在籍。同世代と切磋琢磨しながら上を目指す 【飯尾篤史】

――開幕戦からここまで(8月28日時点)5試合連続して途中出場を果たしていますが、ベルギーリーグの印象やレベルをどう感じていますか?

 日本のほうがチームとして戦う感じで、ベルギーは個人で戦う印象ですね。一人ひとりの距離が遠いから、必然的に個の打開力が求められる。そこで剥がす能力は全ポジション、日本よりもレベルが高いと感じます。ただ、ポゼッションして、立ち位置で相手をズラして、チームとして剥がしていく部分では、日本のレベルのほうが高いと思いますね。

――(トルステン)フィンク監督はそういうサッカーをやりたいんですよね?

「3-4-3や4-3-3でつないでいきたい」って、監督はずっと言ってますね。この前(8月27日)対戦したセルクル・ブルージュは蹴ってくるチームだったんですけど、練習でその対策をしているときに蹴り返すと監督は怒るので、しっかりつなぎたい人なんだなって感じています。

――3-4-3の場合はボランチ、4-3-3ならインサイドハーフを狙っていると思いますが、ポジションをつかむために必要なことは?

 得点に絡むパスを出したり、シュートチャンスで決め切らないといけない。決められるか、決められないかで、監督のチョイスも変わってくると思うので。今は目に見える結果を早く残したいですね。

――チームにはヨーロッパでの経験豊富な岡崎慎司選手がいます。どんな話をしていますか?

 キャンプではオカさんと同部屋だったんですよ。欧州のサッカーについても喋りましたし、いろいろ聞かせてもらいました。例えば、シントでは技術レベルは日本人選手のほうが上だと。それで、できない周りの選手に立ち位置がどうのこうのって言うより、それをカバーできるように、自分のプレーの幅を広げたほうがいいよって言われて、なるほどなって思いました。自分のやれないことをできるようにするいいチャンスだと、ポジティブに捉えたほうがいいなって。

――盟友である藤田選手と再びチームメイトになりましたが、この縁については?

 気持ち悪いですよね(笑)。

――山本選手のほうが先に決まって、数週間後に彼の移籍が決まった。その話を聞いたときは?

 ありがたいと言えば、ありがたいなって。だって10年以上の仲ですからね。お互いのことはすべて分かっているし、ふたりで組めば、これまでやってきたことをやり続ければいいだけなので。海外挑戦においては、ありがたい話だなって思いました。

――ただ、今はその藤田選手とポジションを争う形になっていますね。

 そこはあまり深く考えないようにしています。深く考え込んで、プロ2年目はドツボにハマってしまったので(苦笑)。自分と譲瑠は良さがまったく違うわけで、攻撃的にやりたかったら自分でしょうし。監督がどう考えているのか分からないですけど、出たときが勝負。そこで何ができるか。それ以外、余計なことは考えないようにしています。

――9月6日からはパリ五輪アジア1次予選がいよいよ始まります。パリ五輪は、キャリアにおいてどういう位置付けですか?

 通過点ですけど、自分の代がオリンピック世代の最年長になるのはずっと前から分かっていたので、15歳でアンダーの代表に選ばれてから、ずっと意識していましたね。そこから7年間ずっと代表に入り続けられるとは思わなかったですけど、15歳のときから持ち続けてきた思いを実現するチャンスが目の前にあるので、しっかりとつかみ取りたいです。

――U-17W杯のときは年下の世代だったから、最終的にW杯メンバーに選ばれず、年上の世代となったU-20W杯はコロナ禍で中止に。15歳から代表に選ばれ続けながらも、これまで世界大会とは縁がなかったですよね。藤本選手や菅原選手、堂安律選手(フライブルク)のように、U-20W杯で活躍して海外に行くという道筋を思い描いていたと思いますが。

 つくづくツイてないなって思います(苦笑)。おっしゃるとおり、U-20W杯で活躍して欧州に行くことを思い描いていたし、実際、僕らの世代は東京五輪世代と比べて海外でプレーしている選手が少ないですよね。ただ、こうして海外挑戦ができた今、あらためて世界大会に出たいという思いが強い。もちろん、簡単に出られるとは思ってないです。自分が落ちる、選ばれるもそうですし、チームとしても、最終予選は難しい戦いになる。正直に言うと、世界大会に出たいという思いは強いですけど、まだパリ五輪は意識してないです。1次予選をクリアして、最終予選を突破しなければ辿り着けないので、今は目の前の戦いに集中したいと思っています。

今、代表チームで流行っているのは「人狼」

U-22日本代表ではインサイドハーフを担う。チーム内で他にいないプレーメーカータイプとして貴重な存在だ 【Getty Images】

――パリ五輪アジア1次予選はバーレーンで行われます。中東で戦うのは2022年3月のドバイカップU-23以来で、アジアのチームとの対戦は22年6月のU23アジアカップ以来となります。

 昨年9月から欧州遠征を重ねてきて、チームとしても個人としてもある程度、自信がつきましたけど、アジアとの戦いはまったく別物。そこは全員に言い聞かせないといけないなって思っているところです。パレスチナ、バーレーン、パキスタンと相手は曲者ばかりなので、舐めてかかったら足をすくわれる。心して戦いたいと思っています。

――欧州遠征でスイス(●1-2)、イタリア(△1-1)、スペイン(●0-2)、ポルトガル(○2-1)、ドイツ(△2-2)、ベルギー(●2-3)、イングランド(○2-0)、オランダ(△0-0)と対戦して、チームとして手応えをつかめた部分と課題として残っている部分は?

 守備は間違いなく良くなっていると思います。イングランドやオランダをゼロで抑えたし、積み上げを感じています。その一方で、格上の相手に対して、後ろからしっかりボールをつないで、意図した形で崩していく部分はまだまだ。簡単なエラーが出たり、少しのプレッシャーで慌てて蹴ってしまったりすることがあるので、そこが課題ですね。

――ビルドアップにおけるミスは、特に予選では命取りになります。

 しかも自分を含めて、予選というものを経験している選手が少ない。独特の緊張感のなかでエラーも出るだろうし、ピッチ状態も悪いかもしれない。そうなると、特に初戦は割り切ることも必要になってくるなって。まずは守備から、という形も大事になってくると思いますね。

――昨年秋以降、キャプテンマークを託される機会も増えましたね。

 代表歴が長いからじゃないですかね(笑)。でも、やっぱり「俺が引っ張っていく」という気持ちになるし、チーム全体をしっかりつなげられるように、といったことは意識しますね。6月シリーズでは初招集の選手が多かったので、彼らに気持ちよくプレーさせてあげるにはどうしたらいいかということを意識していました。自分は声を出すタイプではないけれど、そういうことは譲瑠がやってくれるので(笑)。あと、オフ・ザ・ピッチでもどう一体感を高められるか。今、代表チームで流行っているのは「人狼」。だいたい(小久保怜央)ブライアンの部屋にみんなを集めてやっていて(笑)。そのときには初招集の選手にも「来なよ」って声をかけて。ブライアンも明るいやつなので、ブライアンとか、譲瑠とか、周りに助けられながらやっています。

――最後に、パリ五輪アジア1次予選ではどういう戦いを見せたいですか?

 チームが今まで積み上げてきたもの――攻守におけるシームレスだったり、プレー強度だったりをしっかり求めて戦っていきたいと思いますし、ファイトするなかでも、自分が好きなフットボール、観ている人を楽しませるようなサッカーをしっかり見せたいと思います。

山本理仁(やまもと・りひと)

2001年12月12日生まれ、神奈川県相模原市出身。ジュニアから東京ヴェルディの生え抜きで、高校2年生だった2019年1月に飛び級でトップチーム昇格。5月5日のV・ファーレン長崎戦でトップデビューを果たす。2022年7月にガンバ大阪へと完全移籍をすると、今夏、ベルギー1部のシント=トロイデンに期限付き移籍をした。15歳から年代別日本代表に名を連ねる左利きのプレーメーカーで、大岩ジャパンではインサイドハーフの主軸として期待されている。

(企画・構成/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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