世界ゴルフ選手権(WGC)の終焉と、賞金を増やすだけの取り組みの危険性

北村収

1999年に開催された「WGC NECインビテーショナル」。優勝したタイガー・ウッズ(中央)に向かって右隣にいるのは初代日本ゴルフツアー機構会長の島田幸作氏。さらにその右側にいるのは当時の米国PGAツアーのコミッショナーだったティム・フィンチェム氏。WGCは世界各国のツアーが運営に関わった 【Photo by PGA TOUR Photo Services/PGA】

 8月上旬、米国PGAツアーは2024年のスケジュールを発表した。1999年以来、毎年スケジュールに名を連ねていた「準メジャー」と言われるイベントが、ひっそりと姿を消していた。それが世界ゴルフ選手権(以下「WGC」)である。

WGCは世界の6大ツアーで構成された団体が運営

 WGCは世界の4大メジャー大会に次ぐ規模のビッグトーナメントを実施しようと企画し、米国、欧州、豪州、南アフリカ、アジア、そして日本の6大ツアーで構成している「インターナショナル・フェデレーション・オブ・PGAツアーズ」が運営をしていた。この団体は、オフィシャルワールドゴルフランキングの制定や運営も行っている。

 1999年に設立された当時、筆者はまだ新米のゴルフ編集者だったが、世界のゴルフツアーが連携してメジャーに匹敵するトーナメントを創設するという壮大な構想に心躍らせていた。初年度の1999年には、開催されたWGCの3試合のうち2試合で、すでにスーパースターとしての地位を築いていたタイガー・ウッズが優勝。期待通りの盛り上がりを見せた。

1999年にスペインで開催された「WGC アメリカン・エキスプレス選手権」で優勝を果たしたタイガー・ウッズ 【Photo by Stan Badz/PGA TOUR Archive via Getty Images】

米国PGAツアーよりも高額賞金で予選落ちなし

 WGCの賞金の高さも話題になった。どの試合でも、プロゴルフトーナメントとしてはメジャー大会や米国PGAツアーの基幹大会にも匹敵する、世界最高額に迫る賞金が設定されていた。さらに、WGCは出場人数が通常のトーナメントよりも少なく、予選落ちがなかった。出場すれば必ず最後までプレーができ賞金を得られることが、世界のトップ選手たちを惹きつける要因となっていた。

 WGCは毎年3〜4試合を開催。米国内だけでなくオーストラリア、スペイン、中国、メキシコなど、世界を舞台にトップ選手が集まった。WGCは「準メジャー」としての地位をしっかりと築いていた。

2020年からWGCの試合が徐々に減少

 2019年までは年間4試合が開催されていたが、コロナ禍の影響で2020年からは中国・上海を舞台とする「HSBCチャンピオンズ」が開催されなくなった。また、2021年の「WGCフェデックスセントジュードインビテーショナル」は、2022年から「フェデックスセントジュードチャンピオンシップ」として、PGAツアーのプレーオフ初戦として位置づけられた。

 メキシコで開催されていた「WGCメキシコチャンピオンシップ」は2020年で幕を閉じた。2021年には「WGCワークデイチャンピオンシップ」としてフロリダで開催されたが、2022年以降は同時期のWGCトーナメントの開催はなくなった。そして、2023年には「WGCデルテクノロジーズマッチプレー」のみが開催され、2024年のスケジュールではWGCの名は完全に消えてしまった。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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