【西岩親方に聞く5月場所の展望】十両期待の力士は落合だけじゃない! 幕下以下の若い力にも注目(十両以下編)

飯塚さき

期待の若手は「中卒たたき上げ」

 また、幕下以下で今後十両・幕内に上がる可能性のある力士といえば、大学で実績を残してきた力士が挙げられると思います。例えば今場所デビューする二所ノ関部屋の大の里や、幕下の川副など、すでに大きな注目を浴びています。しかし、私はあえてアマチュア出身の力士ではなくて、中学から入門して番付を上げてきた、吉井と大辻の2人に注目したいです。2人は同級生で、中学から全国大会で優勝を争ってきました。現在19歳。今場所は幕下上位に上がってきたので、こういう若い力に関取になって頑張ってほしいなと思っています。

現役時代の思い出も交えながら解説する西岩親方 【スポーツナビ】

 アマチュアで実績を残してきた力士たちにももちろん期待していますが、私自身も中学を卒業して15歳で入門しましたので、同じ境遇の力士たちに頑張ってほしいんです。こうして相撲部屋の師匠の立場になってみて、15歳からの下積みがあったからこそいまがあるなと、あらためて感じています。番付を上げるだけではなくて、力士として必要なことを師匠からたくさん教えていただきましたので、15歳から関取になるまでの期間は非常に貴重な時期でした。アマチュアで実績を残して、落合のように一場所で関取になるのも素晴らしいことですが、相撲だけじゃなくていろんなことを覚えながら番付を上げていくのもまた素晴らしいことですから、応援したいですね。そのなかでも、吉井と大辻の2人の出世争いに注目しています。

 大辻は押し相撲で、スピードがあります。19歳とは思えない立ち合いの当たりとスピードが持ち味です。これからも、スピードと激しい押し相撲を磨いてほしいです。一方で吉井は、まわしを取ったり中に入ったりと、器用な相撲を取ります。立ち合いの当たりをもっと身につけて前に攻め込むような相撲を目指すと、吉井がもっている技術が生きてくると思います。どちらにしても、相撲の基本である立ち合いの当たりと押す力を身につけていく必要があるでしょう。二人とも有望な力士なので、今場所も頑張ってもらいたいですね。

  ◇ ◇ ◇

 今場所の一番の注目は、霧馬山が大関昇進なるか。ここが一番のポイントです。そして、照ノ富士と貴景勝の復活にも期待したいと思います。皆さんぜひいろんなところに注目して、5月場所を楽しんでください。

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著者プロフィール

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)、スポーツ庁広報ウェブマガジン『Deportare』などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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