【WBC総括】現地で激闘を見届けた3人の外国人記者が語る「侍ジャパンの勝因とWBCの未来」

杉浦大介

栗山監督は常に適切なボタンを押し続けた

外国人記者たちからは、栗山監督(中央)の采配を絶賛する声が相次いだ。どの国よりも多くの時間をかけて周到な準備で大会を迎えたことも、日本の勝因だろう 【Photo by Koji Watanabe - SAMURAI JAPAN/SAMURAI JAPAN via Getty Images】

──今大会を通しての日本の戦いぶりをどのように評価する?

クレア記者 投手陣の質の高さが何よりも印象に残る。先発はすべてのピッチャーがエース級の実力を持っており、実際にエースと呼ぶにふさわしい投球をした。個人的には山本由伸(オリックス)の力量に目を見張らされた。

 また思慮深く、丁寧で、温かく、聡明な栗山監督の手綱捌きも見過ごされるべきではないと思う。ゲームをよく理解し、そしてフィールド外のことにも目を配れる監督という印象だ。とてつもないプレッシャーを背負っていたはずだが、選手たちに愛され、ゲーム中の戦略、マネジメントも素晴らしかった。栗山監督は常に適切なボタンを押し続けた。

ナイチンゲール記者 大会開始前、多くのスカウトから日本の投手陣がどれだけ素晴らしいかを聞かされていた。“WBC史上最高の投手陣”というのが、彼らの見立てだった。大谷、ダルビッシュ、佐々木朗希(ロッテ)、山本に匹敵するような投手は、アメリカには1人もいなかった。

 アメリカ以外の国のメジャーリーガーたちも、大谷、ダルビッシュとの対戦経験はあったが、日本の他の投手に関しての知識は少なく、その質の高さに度肝を抜かれたはずだ。故障を恐れたアメリカの一流投手たちが大会に参加せず、おかげで日本の投手陣のクオリティが余計に際立つ形になった。

モンテス記者 このトーナメントに向けて、他のどのチームよりも多くの時間をかけて準備をしたのが日本だった。主力選手の多くが日本でプレーしていて、自国開催の1次リーグに余裕をもって備えることができたのは、大きなアドバンテージだっただろう。

 最高の選手たちを選出し、しっかりと大会に照準を合わせてきたことが勝因だ。日本の成功がスタンダードとなり、今後は多くのチームが綿密に大会前の準備をするようになるのではないか。

多くのファンがWBCの魅力に気づいた

多くのビッグスターが参戦したことに加え、ドミニカなど中南米国のファンが作り出した熱狂的な雰囲気も、大会の盛り上がりに一役買った 【Photo by Al Bello/Getty Images】

──今大会のアメリカ国内での盛り上がりはどうだったのか?

クレア記者 決勝ラウンドが行われたマイアミでは、ドミニカ共和国、プエルトリコ、ベネズエラという中南米国のファンが、とてつもない雰囲気を作り出してくれた。彼らは常に騒がしく、大会を盛り上げてくれた。

 一方で日本のファンは、どんな展開だろうと熱さが変わらず、選手のテーマソングを奏で続けていた。特に村上の応援ソングが、私のお気に入りだったよ(笑)。彼らの対戦相手にも敬意を払う姿勢は素晴らしかった。

 対照的にアメリカのファンは、チームが劣勢になるとすぐに意気消沈してしまっていた。その点が日本やラテンアメリカのファンとの違いだ。決勝戦でも、日本に逆転を許した後、声援での後押しという形でチームをサポートできなかったのは残念だった。

ナイチンゲール記者 過去の大会と比べれば、確実に盛り上がったと思う。2017年の前回大会で初優勝を果たし、楽しい時間を過ごしたことで、アメリカでもMLBに対する選手、ファンの意識は高まった。

 今大会にはトラウト、ベッツといったビッグスターが参加し、さらに好ゲームの連続となったこともあって、より多くのファンがWBCの魅力に気づいたのではないか。大会中にプエルトリコのエドウィン・ディアス(メッツ)、ベネズエラのホセ・アルテューベ(アストロズ)といったメジャーのトッププレイヤーが怪我をして、一部から批判が出たのは残念だったが、それでも参加した選手たちの多くが、「このトーナメントは素晴らしい」と公に発信し続けた。

モンテス記者 多くの好選手が参加したおかげで、アメリカ・ラウンドもこれまで以上に盛り上がった。新型コロナウイルスの感染拡大によって開催が延期され、前回大会から間隔が空いたことで、期待感が高まった部分もあったと思う。

 決勝ラウンドの開催地がマイアミになったことも、観客動員と雰囲気作りという面で意味があった。準々決勝以降はすべてのゲームがソールドアウトになり、ベスト4に残ったメキシコ、キューバ、日本、アメリカというすべての国のファンを数多く動員していた。マイアミはWBCの開催地として優れていることを改めて示したように思う。

サッカーのW杯のような透明性を

WBCの価値は確実に向上していると、外国人記者たち(左からクレア記者、ナイチンゲール記者、モンテス記者)も口をそろえるが、一方で今後の課題も指摘する 【杉浦大介】

──今大会を通じてWBCの価値は高まったと思うか。評価すべき点と今後に向けての改善点は?

クレア記者 WBCは向上し、より大きな大会になっていると思う。アメリカ代表にもビッグネームが次々と参加するようになり、おかげでより多くのファンが大会を楽しみにするようになった。

 それと同時に今大会ではチェコ、イギリス、オーストラリアといった国々の健闘も目立ち、世界的にベースボールの質が高まっている印象を強く受けた。日本、アメリカ、ドミニカ、プエルトリコ、韓国といった野球大国だけでなく、その他の国々の実力がさらに上がることが、次のステップにつながるのではないかと考えている。

ナイチンゲール記者 WBCの価値は、選手、ファンの双方の間で間違いなく高まっている。ただ、次のステップに進もうと思うなら、やはりアメリカのベストピッチャーたちの参加は必須だろう。

 今回、故障歴によって保険に入れず、ドジャースのクレイトン・カーショウが出場辞退となったのは痛かったし、メッツのジャスティン・バーランダーやマックス・シャーザーといった大物が登板していたら、もっと大きな話題になっていたはずだ。3年後の2026年大会では野手だけでなく、投手陣にも豪華メンバーを揃えることが、アメリカ、ひいてはWBC全体の課題になると思う。

モンテス記者 まず、主催のMLBは1次リーグの組分けをもっと公平にすべきだ。アメリカ、日本といったビッグマーケットのホームで開催されるのは理解できるし、例えばドミニカ共和国がアジア開催のグループに入るということが、現実的でないのは分かっている。それでもWBCの権威を高めたいのであれば、サッカーやバスケットボールのW杯のような透明性を持って運営にあたってほしいと願う。

 加えて、MLBの各チームもよりフレキシブルに対応すべきだろう。これほど素晴らしいイベントなのに、球団側が選手に「出場するな」とか「(必要以上に)球数を投げるな」といった指示を出しているとしたら、それは非常に残念なことだ。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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