高津監督就任初年度の屈辱と、そこで得たもの。手応えがなくても、信じて進むしかない
手応えがなくても信じて進むこと
正直言えば、手探り状態で進んだ1年目だった。「こういうときは何をすればいいのか?」「こんなときはどんな手を打てばいいのか?」を手探りで探している感じだった。野村さんの言うような「種をまく」ということがきちんとできたのかどうかは、この時点ではまだ自分ではわからなかった。
このとき、自分が現役だった頃、プロ1年目のオフのことをふと思い出した。
プロ1年目、僕はリリーフをやったり、先発を任されてみたり、いろいろなことを経験した。その年のオフの秋季キャンプで野村さんと面談があった。そこで、「この1年どうだった?」と聞かれて、僕は「選手としてうまくいくかどうかはまだわからないけど、プロ野球の世界というのは大体こんな感じなんだなということが理解できました」と言った。
初めて1軍監督として過ごした1年を終えたとき、まさにプロ1年目が終わった心境と一緒だった。1軍監督のやるべきこと、あり方というのがかなり見えてきた気がしたのだ。もちろん、たった1年では深いことはまだわからないかもしれない。「10」あるうちの、せいぜい「1」か「2」程度の理解かもしれない。
それでも、まったくの「0」から始まった開幕時期を思えば、確実に「1」か「2」かはわからないけれど、理解できることが増えていた。
野球は生き物だから、今年の野球と来年の野球は決して同じものではない。それはわかっているけれど、初年度に経験したこと、感じたことは絶対に翌年に活かさなければいけない。それは強く思っていた。
「今年、つかんだこと」とは、具体的にはこんなことだ。例えば、1軍と2軍の連携である。自分も2軍監督だったから、その点は理解していたつもりだったけれど、いざ自分が1軍監督になってみると、2軍にかなりの負担を掛けてしまうこともあった。選手たちに迷惑を掛けることもあった。
その点はしっかり反省して、2021年シーズンに備えたい。
やるべきことはまだまだある。しかし、監督に就任したばかりの1年前と比べれば、わずかながらも進歩したこと、一歩前に進んだこともあった。
選手たちは本当によく頑張ってくれた。しかし、まだまだ足りないところも多い。もちろん、それは首脳陣たちも同様であり、監督である僕のことでもある。それでも、何も希望の光がなかったわけではない。やるべきことがわかっているのならば、あとは一つずつそれをクリアしていけばいい。
道は遠く険しいかもしれない。けれども、一歩ずつ歩んで行けば、必ずその先には明るい未来が待っている。僕はそう、信じていた。
2020年はファンの皆さんに悔しい思いをさせてしまった。その責任を強く感じることとなった。我々はまだまだやるべきことの多いチームだ。だからこそ、この悔しさを決して忘れずに、来季こそはファンの皆さんと喜べるように選手一丸となって頑張るしかないのだ。
そんな思いとともに、2021年シーズンを迎える決意を固めていた。
この時点ではまだ、「日本一」の予感など、微塵もなかった――
「明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと」
【写真提供:株式会社アルファポリス】