書籍連載:ヤニス~無一文からNBAの頂点へ~

僕は次のデュラントになる ヤニス~無一文からNBAの頂点へ~

ダブドリ編集部
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デュラント(右)を目指したヤニス(左)。ともにNBAを代表するスーパースターだ 【Getty Images】

「当初は彼の存在なんて気にもしていなかったんだ」とパナシナイコスU18のアシスタントコーチだったトリガスは話す。「でも気付けばスカウティングリポートは全部彼に関するものになっていた」。

 自信も付き始めていた。サルストロスはある日「もっと上手くなる。最強になるんだ」とヤニスに言われたことを振り返った。それは傲慢などではなく、決意と集中の表れだった。「彼が手を止めることはなかった」とサルストロスは話す。

(中略)

 自分の兄に対する周囲の評価が変わり始めていることに、アレックスも気付いた。屋外コートでシューティングをしていると、知らない人に「ヤニスすごいな」と言われるのだ。心の中でアレックスは笑っていた。そんなことは、彼は小さい頃から知っていたからだ。彼にとってヤニスは、ギリシャ神話の神のような存在だった。「僕とヤニスは親友なんだ」とアレックスは話す。「僕らほど仲がいい兄弟はなかなかいないよ」。

 アレックス自身のプレイも、知らない人から褒められるようになった。しかし、彼は別に今まで以上に認められた気にはならなかった。バスケットボールを始めた頃から、ヤニスにすでに評価されていたのだ。ヤニスは常に弟たちを励まし、教えていた。「誰かにポテンシャルがあると言われるのを待っていることなんてなかった」とアレックスは語る。「毎日お互いと競い合っていたから、それぞれがどれだけできるかはわかっていたんだ」。

 しかし、ギリシャの外で他の選手たちがどれだけ上手いのかは理解していなかった。当初、ヤニスは米国人の選手についてあまり詳しくなかった。NBAなんて、どこか遠くにあるもので、どんな場所なのか知る由もなかったのだ。「インターネットが無かったんだ」とコスタスは話す。「NBAの試合なんて観れなかったんだよ」。
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著者プロフィール

異例の超ロングインタビューで選手や関係者の本音に迫るバスケ本シリーズ『ダブドリ』。「バスケで『より道』しませんか?」のキャッチコピー通り、プロからストリート、選手からコレクターまでバスケに関わる全ての人がインタビュー対象。TOKYO DIMEオーナーで現役Bリーガーの岡田優介氏による人生相談『ちょっと聞いてよ岡田先生』など、コラムも多数収載。

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