「自信がなかったらこの場にいない」。夢の舞台に立つチャンスが来ることをイメージしながら、谷口彰悟は静かに準備を進める

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©Aoyama Tomoo】

初めてのW杯はベンチで迎えた。

強敵ドイツを相手にチームは躍動。川崎フロンターレで共にプレーした田中碧や三笘薫といった選手たちが活躍する中、谷口彰悟はベンチから必死に声を出してチームを鼓舞していた。

「最高の雰囲気というか、雰囲気や相手のレベルを含め、やはり世界ナンバーワンの大会だなと実感できました」

そして、訪れた歓喜の瞬間。谷口は勝利を喜びつつも、試合を通して一つの感情が胸に湧き上がっていた。

「やはり悔しい気持ちがありました。それは全員が全員だと思いますけど、俺を出せよと思っている選手しかいないと思います。自分もピッチに立ちたいという思いはあるけど、その気持ちを超越しているというか、それは当たり前で、何よりも出番が来た時にいい守備をしていくことが大事。もう常に準備していくしかないというか、日々の練習で全力を尽くすしかない。とにかく自分に出番が回ってきたときに、ちゃんとしたパフォーマンスを出すために準備をし続ける。本当にそこしかないかなと思います」

ドイツ戦の翌日から目の前のトレーニングにより集中する男の姿がある。「とにかく今日のトレーニングがすごく楽しみだった。ドイツ戦を終えた時点で早く練習がやりたかった」とは谷口の言葉。一つひとつのプレーに意識を研ぎ澄ましながら、自分に何ができるかをさらに追求していく。そうすることでトレーンングからアピールしているように思えた。「出してくれたらオレはやるよ」。そんな声が聞こえてきそうなほどに。

ドイツ戦から中3日で迎えるコスタリカ戦は、初戦の疲労や今後の状況を考えて多少なりともターンオーバーをする可能性がある。冨安健洋の状況次第ではあるが、CBは人数が少なく、谷口に出番が回ってくることもあるかもしれない。夢に描いたW杯のピッチに立つ瞬間が少しずつ近づいている。

「コスタリカは、しっかり守ってカウンターという狙いを持っているチームだと思います。前線も個の能力としては高い印象を受けた選手がたくさんいた。ディフェンスとしては、そこの一発には常に注意しないといけない。こっちがボールに握れるのかは始まってみないとわからないところがありますけど、ドイツ戦と一緒で、とにかく我慢強く、焦れずにやり続けるのが大事なポイント。攻めてる時も守っている時も、とにかく焦れずにやるのは大きなポイントになると思っています」

「我慢強く」、「焦れずに」というのは、近年、守備の柱として君臨するフロンターレでもよく聞かれた言葉だ。どんな状況になっても冷静に頭を回転させ、我慢強い戦いをチームに浸透させていく。そうしてチームにいくつものタイトルをもたらしてきた。

だからこそ、ピッチに立つチャンスが巡ってくれば、自分自身がこれまでやってきたことをピッチで表現するだけだ。

「チームのコンセプトや、やるべきことは試合に出る選手だけではなく、全員が頭に入れてしっかり準備できている。それは次のコスタリカ戦も一緒だと思います。チャンスをもらえるかどうかはわからないですけど、自分もいつ出てもいいような準備はしています。そこは自信を持っていますし、逆に自信がなかったらこの場にいない。それぐらいの覚悟と自信を持ってここに立っているので、いつ出番が来ても大丈夫だと思ってもらえるようにやっていきたい」

グループステージ突破へ大きな意味を持つコスタリカ戦。出番が回ってくるその時を信じて、谷口は静かに闘志を燃やしている。

(文:林 遼平)
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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