【東京2020オリンピックメダリストインタビュー】谷川航:悔しさが増えてきて、また次に向けて頑張るその意味ができました
【東京2020オリンピックメダリストインタビュー(写真:アフロスポーツ)】
谷川 航(体操/体操競技)
男子団体 銀メダル
■優勝争いの楽しさ
チーム全員で全ての演技を大きなミスなく終われたことは、すごく難しいことだからこそ、うれしい気持ちでした。でも、金メダルを目指してやってきた分、どんどん悔しさが増してきて、また次に向けて頑張る意味ができたと感じています。
――今回、団体で出場した4人全員が「悔しい」という言葉を残しています。東京でのオリンピックを楽しむことはできましたか。
チーム戦の緊迫した場面で緊張しましたし、不安ももちろんあったのですが、でもそのなかで、多少緊張感もありつつ、楽しむ気持ちもありつつみたいな感じで、少しは楽しむこともできたのかなと思っています。
――良かったです。金メダルを獲得したROC(ロシア・オリンピック委員会)との点差が0.103と本当にわずかの差でした。2019年の世界選手権の際のロシア、中国との差と比較しても、本当に紙一重の戦いだったと思います。
18年、19年の世界選手権は優勝争いに絡めていない感じで、やはり悔しさがありました。今までは同じ土俵に立てていなかった、戦えていなかった……、そう思っていました。今回は優勝争いをして戦っている感覚があったので、そこは楽しかったですし、うれしかったです。
■着地が止められた団体決勝
決勝では、全体的に着地を止められたことがすごく自分の中で良かったと思いました。あと、跳馬は予選で失敗してしまって不安だったのですが、決勝ではしっかり決めることができたので、その点も良かったと思います。
一方で課題は、平行棒で本来予定していたDスコアより0.1下がってしまったことですね。完璧にできていたら勝てたと思うのでそこは悔しいです。また、種目別では決勝に残れませんでした。跳馬では金メダルまで狙えるような技を用意してきていたので、予選で失敗してしまったことがすごく悔しいです。一本で決めなくてはいけないというところはしっかり決める。そういったところは今後の課題だと思います。
――跳馬で足のケガをされましたが、弟の翔選手もTwitterで両足がしっかりついていてすごく良かったという話をしていたと思います。男子団体決勝の跳馬で「リ・セグァン2」を決めた時は、どういうお気持ちでしたか。
予選でミスがあったので不安もありましたし、ここでまた失敗したらメダルもとれるか分からないところまで落ちる可能性もありましたし、そういう怖さがありました。ただ、今までずっとやってきた練習と自分自身を信じて思い切ってやるしかないという気持ちでした。
――自分が目指していたスタイルや目標は全て表現できたと思いますか。
練習してきたことを100%試合で出すのは不可能に近いというか、難しいこと。失敗が出ている時点で、100%は出し切れていないのだと思いますから。それでも、決勝で着地を数多く止められたことは、自分の持ち味を出せた部分です。
■楽しむ気持ちを大切に
パリオリンピックでは弟の翔選手と一緒に「金メダルをとれるよう頑張りたい」と谷川選手は語った 【写真:アフロスポーツ】
コロナ禍で精神的につらい思いをされている方もたくさんいると思います。そういう方に自分たちの演技や、負けたくないと努力してきた姿を見てもらって、少しでも元気や勇気を与えられるような演技がしたいという気持ちが強かったです。今回は、今まで以上にそういう意識を持って練習してきましたし、その気持ちが少しでも伝わっていればうれしく思います。スポーツは、人を感動させることができる力を持っていると思います。それこそがスポーツの価値かなと思います。
――谷川選手のプレーを見て、これから体操を始めたいと思う子どもたちにアドバイスをいただけますか。
スポーツは結果を求められますし、結果を出すことが大事だとは思います。でも、競技を楽しむというところが全ての原点だと思います。それは、どのスポーツにおいても同じこと。うまくなりたい気持ちや強くなりたい気持ちも大事ですが、楽しむという気持ちを絶対に忘れず大事にしてほしいと思います。
――3年後にはパリオリンピックがあります。抱負を一言いただけますか。
今回悔しい思いをしました。リオデジャネイロオリンピックで男子団体が金メダルをとれたのも、その前のロンドンオリンピックで銀メダルという悔しい思いをしたからこそだと思います。僕たちもここで悔しい思いをしたので、それを忘れず、次は絶対に金メダルがとれるように今から本気で練習していきたいと思います。
――今大会では、弟の翔選手と一緒に出場することはかないませんでしたが、谷川兄弟としてパリに向けての一言をお願いします。
今回のオリンピックを見て、相当刺激を受けて、悔しい思いもしているでしょうし、さらにオリンピックに対する思いが強くなったんじゃないかなと思います。僕が頑張れと言わなくても勝手にやってくれるはず。あとはお互いケガに気をつけて努力していけば絶対に代表に入れると思います。そして、メンバーに入るだけではなく、一緒に金メダルをとれるように頑張りたいです。
――ありがとうございます。頑張ってください。
ありがとうございました。
(取材日:2021年8月4日)
■プロフィール(東京2020オリンピック当時)
谷川 航(たにがわ・わたる)
1996年7月23日生まれ。千葉県出身。6歳の時に体操を始める。2016年に全日本種目別選手権の跳馬で優勝。17年、世界選手権で初代表入り。18年、19年と団体銅メダルに貢献した。19年の全日本種目別選手権では平行棒で優勝を果たす。代表選考となる21年全日本個人総合選手権では自己最高の2位に入った。同年の東京2020オリンピックでは、個人総合、種目別に出場し、男子団体で銀メダル獲得に貢献した。弟の翔も体操選手。セントラルスポーツ(株)所属。
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