ゼ・リカルド新監督を招聘した清水エスパルス 創設30周年記念試合を国立で開催する意味
“マリノスキラー”西澤が挙げる攻略ポイント
“マリノスキラー”の異名を取る、アカデミー出身の西澤健太。新たな歴史の担い手は、横浜FM攻略のポイントに「浮いたポジションを取ること」を挙げた 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】
「F・マリノスが強敵であることは間違いないですし、難しい試合になると思います。ただ、僕個人としてはすごく良いイメージがあるので、記念マッチの相手がF・マリノスであることは楽しみです」
そう話す西澤が、対横浜FM戦の攻略ポイントとして挙げたのは、「攻守の切り替え」と「浮いたポジション」。
「F・マリノスは結構前に出てくるし、人数をかけて攻めてくるので、しっかりと我慢して、引っ掛けて、切り替えの部分で上回れればチャンスはある。あとは、相手のシステムにハマらないように“浮いたポジション”を取ること。そこを見つけるのは自分の得意な部分でもあるので、狙っていきたいと思います」
シーズン途中に無念の契約解除となってしまったが、西澤にとってはアカデミー時代の恩師でもある平岡宏章前監督の下で磨きをかけたカウンター攻撃は、1つのカギになりそうだ。
パリ五輪世代の有望株であるU-21日本代表MF鈴木唯人も、キーマンの1人に挙げられる。3月6日のJ1リーグ第3節で横浜FMと対戦した際には、FWの核となる選手が不在で、鈴木の負担が増大。チームとしての見せ場も少なく0-2で完敗した。しかしその後、エースのチアゴ・サンタナがケガから復帰し、U-23韓国代表FWのオ・セフンも加入。鈴木は大型ストライカーの周囲で惜しみない運動量を発揮している。
「あまり考えずにプレーしている時の方がうまくいく」という天性の動き出しを武器に、横浜FMのDF陣をかき乱せるか、注目したい。
ブラジル路線への転換が持つ意味とは?
16節終了時点で16位に沈む清水は監督交代に踏み切り、ブラジルのヴァスコ・ダ・ガマを率いていたゼ・リカルドを新監督に招聘。新体制で記念試合に臨む 【Photo by Alexandre Loureiro/Getty Images】
さかのぼれば清水の歴史は、ブラジル人のジュリオ・エスピノーザ初代監督の下で始まった。ここへ来てのブラジル路線への転換は、挑戦と原点回帰の両面の意味を持つ。伝統の継承と、進化の融合。この監督交代によって新たな風を吹き込まれたチームは、30周年のさらに先へと歩みを進めていく。
慣れ親しんだ本拠地アイスタ(IAIスタジアム日本平)ではなく、あえて静岡から離れた東京・国立で30周年記念マッチを行うことは、常に挑戦を続けるクラブの姿勢の表れでもある。
「クラブが国立でやると決めた覚悟もあるだろうし、選手たちもそれは少なからず理解しているつもりです。アイスタでも他のスタジアムでも、僕たちは観に来てくださるサポーターのみなさんの思いに絶対に応えたい。そのためには勝利が一番。このF・マリノス戦がクラブにとって、1つのターニングポイントのような試合になればいいなと思います」(西澤)
Jリーグ創設から30年。スタンドを華やかに演出するのは紙吹雪からライトに変わった。コロナ禍で声出しができなくなると、音源を利用したリモート応援システムが活用されるようにもなった。サッカーも、応援の形も時代に適応し、変化を恐れず前に進み続けてきた30年。国立競技場でクラブの歴史に新たな1ページが刻まれる瞬間を、目に焼き付けたい。
(企画・編集/YOJI-GEN)