佐々木朗希の完全試合「伝説の105球」を振り返る
数々の大投手が成しえなかった3つの記録を、プロ入りからわずか14試合で達成
今回は、4月10日の試合で記録された投球データを詳細に紹介するとともに、この日の佐々木朗投手はどこがすぐれていたのかについて、より深く掘り下げていきたい。
19個の奪三振を奪いながら、異次元の“省エネ投球”を披露した
打者27人のうち、カウントが3ボールになったのはたった1度、7回表の後藤駿太選手の打席のみ。2ボールとなった回数すらわずか6度と、バッティングカウントを迎えること自体が非常に稀だった。
また、ボールゾーンに投じられた球は全部で42球だが、そのうち相手が手を出さずにボールとなった球は23球だけ。19個もの奪三振を記録しながら打者一人あたりに要した球は3.89球と、まさに異次元の“省エネ投球”だった。
例えど真ん中であっても捉えられない、まさに抜群の球威
また、ど真ん中に行ってしまった11球に関しても、ファールが7球、見逃しが3球、空振りが1球という内訳に。甘いコースに行った球であっても捉えられた当たりは一つもないという事実が、佐々木朗投手の並外れた球威を物語っている。
データにも示される、「狙い通りに奪った三振」の多さ
試合全体を通じて、カーブは3球しか使わなかったが……
しかし、投じられた3球のカーブのうち2つは、4回表に吉田正尚選手を相手に投じられたものだった。吉田正選手は試合開始前の段階で14試合に出場し、三振はわずかに1つ。昨季はシーズン全体で喫した三振が26個のみと、極めて三振が少ない打者として知られる。
そんな吉田正選手に対して、佐々木朗投手は第1打席でフォークを振らせて3球三振。続く第2打席ではカーブを2球続けて追い込み、4球目のフォークで再び空振り三振を奪った。投球の引き出しの多さを見せたうえで、7回の第3打席はひざ元の速球で見逃し三振。少ない投球数でもアクセントとなった緩い球は、NPB屈指の好打者封じにも寄与していた。
速球の割合は全体の6割に達したが、結果球では全く違った傾向に
そして、奪三振を記録した球種においては、この傾向がより顕著となっている。
また、この日佐々木朗投手が打たせた28個のファール(捕邪飛1本を含む)のうち、速球を打ったものが実に25球に達した点も示唆的だ。力強い速球でファールを打たせてカウントを稼ぎ、最後はフォークで仕留める。奪三振のコースにも表れていたバッテリーの狙いの適切さは、その他のデータにも明確に示されている。
この日の佐々木朗投手には、野手のファインプレーすら不要だった?
また、前に飛んだ打球は初回の先頭打者である後藤選手のセカンドゴロを除けば、いずれも野手の定位置に近い当たりだったことも特筆ものだ。ノーヒット・ノーランのような記録の裏にはファインプレーあり、と言われることも多いが、この日の佐々木朗投手の場合は、そうした野手がヒットをもぎ取るプレーすら必要としなかったということだ。
あらゆる意味で過去に類を見ない、まさに球史に残る快投だった
これだけの投球を展開したのが、20歳の佐々木朗投手と18歳の松川選手という非常に若い二人だったという点も、この試合がもたらしたインパクトを増幅させている。若き名コンビがこのまま成長を続ければ、今後もさらなる衝撃をもたらす快投を見せてくれるかもしれない。そんな途方もない期待すら抱かせる、圧倒的な105球のパーフェクトゲームだった。
文・望月遼太
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ