大学eスポーツの最前線 :現場だからこそ話せる「いま」と「未来」(2)

日本スポーツ産業学会
チーム・協会

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学生e-sports連盟が見据える未来
西田 陽良 一般社団法人 学生e-sports連盟 副理事長

学生e-sports連盟・西田と申します。大学eスポーツ界の未来についてお話しさせていただきます。
現在、一般社団法人学生e-sports連盟において副代表理事を務めています。京都大学に在籍している学生で、第69代京都大学体育会幹事長、全国七大学総合体育大会の副実行委員長も務めておりました。(一社)大学スポーツコンソーシアムKANSAI(KCAA)でも活動しており、大学スポーツの未来を創る活動、そして大学eスポーツの未来を創る活動、どちらもさせていただいており、唯一無二の存在であると自負しております。
お話しさせていただく内容・趣旨は、我々の今後の展望、それに対する壁と打開策、最後に我々からのメッセージという3本立てです。eスポーツを発展させるにはどうすればいいか、また、大学でeスポーツに関わる意味、大学生がeスポーツに関わる意味、これはどのようなものなのか?これについてさらに考えてみませんかと、そういう機会を今回提供できればと考えています。

学生e-sports連盟の今後の展望

学生e-sports連盟は、「大学esportsの文化創りを通して人を創る」というミッションを掲げております。大学esports文化を創る。どうやって創るのかという問いに対して、1つの手段として大会を開催しています。色々なタイトル、大学対抗戦を開催しながら、大学esports文化を創っていく。現状も行っていますが、さらにそれを拡大させていかないといけないと考えています。
現在学生会員の数が800名から900名程度ですが、大学生のeスポーツユーザー、ものすごくいらっしゃると思います。でもそれがなかなか表面化して来ない。その埋もれている、我々から見て潜在的なユーザーをより顕在化させていきたい。これが1番大事な要素ではないかと思います。
そのためには様々な新規タイトルの大会開催を行なっていきたいです。現状eスポーツの中でも市場規模の大きいeスポーツタイトルはごく少なく、大学対抗戦の存在するタイトルも実はあまり多くない。だいたい我々が把握している限り20タイトル程度です。市場規模の大きいJeSU(日本eスポーツ連合)が公認するeスポーツタイトルは、実はわずか16です。ゲームのソフトウェアの数は、PlayStation4だけでも2000タイトル程度が発売されていますが、現状、その中のわずか1%、2%程度しかeスポーツが確立されておりません。確立していないタイトルに目をつけられればと思っております。そういうところを大きくするチャンスが、大学対抗戦にあるのではないかと。その1つのきっかけが、大学だからこそある、サークルだと考えております。
潜在ユーザーの顕在化について、今後、タイトルごとのサークルがさらに増えてくると思います。そういうサークルを作るきっかけとなるのが、我々の行っている大学対抗戦です。PUBG MOBILEというタイトルの大学対抗戦で、さまざまな新しいサークル新しい団体が誕生しています。過去に大会参加した約100大学の中でも1/3ほどは新規に作られた、「我々が大学対抗戦をやります」と言った後に作られたサークルです。学生のプレイヤーが自分たちで自分の大学のメンバーを集めて、大学対抗戦に参加する。そのプロセスを通じてサークルとして、新たに確立して行く。そういったことを我々としても経験として見てきました。
このようなことを新規タイトルでも行うことで、サークル・学生団体というコミュニティが誕生する。もともと内輪だけとか仲間内だけとか、もしくは1人だけでとか、そういう所でやっていたプレーヤーをより顕在化、表に出すことができる。そういったことが出来る環境がeスポーツの大学対抗戦にあるのではと考えております。
もちろん1タイトルごとの参加者を増やしていく活動もやってはいるのですが、伸び代は限られていると思います。現状確立されているメジャータイトルでやれば人は集まりますが、それ以外のタイトルだとなかなか人が集まらない。そこにどうしても天井が発生しまう。ですので、今後我々としては連続的にやっていこう、横に横に広げていこう、と思っています。
1万人の「いいね!」よりも100人の熱狂。多くの「いいね」よりも、そこに集まる100人の人たち。その人たちをより熱狂させること。これがまず我々に課せられた1つのミッションだと思います。ただ、100人の熱狂を1個作り出すよりも、いろんなタイトルで産み出していく。100×無限大は無限大です。どんどん横に広げていくことで、我々の求められていることを最大化できるのではないかと考えています。
潜在ユーザーを連続的に顕在化していくことによって、eスポーツ文化を創っていきます。これを実現する手段として大会を開催するのはもちろんですが、総合型のeスポーツ大学対抗戦を様々なタイトルで同じ箱でやってしまう。そういったことを実現して行きたいと考えております。

壁と展望

ただし、その総合型eスポーツ大会を開催する時に、なかなかハードルが高い。我々としても、過去に数タイトルで大学対抗戦を開催しましたが、なかなか厳しい問題が数多くありました。その1つがIP。著作権等々の問題になります。この問いが、我々の中で付き纏います。eスポーツタイトルは果たして誰のものなのか?野球であれば誰の物という形で定義することは不可能だと思っています。みんなのものです。ただし、野球ゲームになれば、例えば「パワプロ」になれば、誰のものなのかはっきりします。IPホルダーと言われるパブリッシャーです。そのタイトルの製作者が著作権を保有しています。これがeスポーツの大きな特徴です。このことがeスポーツ界の発展を少し遅らせる原因になっているのではと考えています。もちろん、パブリッシャーさん自身が、大会を開催することで、安全性等々確保できるかと思いますが、それだけだとそのタイトルにおけるeスポーツの発展が遅れていくと我々と思っています。現状3タイトルで大学対抗戦を開催していますが、パブリッシャーさんの許諾を当然ではありますが、全て得ています。一般社団法人として活動する以上、そこの許諾は絶対必要です。ただ、ライセンス料が発生するものは発生してきます。これも当然の話です。パブリッシャーさんの許諾、そしてライセンス料の問題、では総合型eスポーツ大会、あらゆるタイトルにおいて、同じところで開催、同じ枠組みで開催しようとなった時に、同じジャンルの競合タイトルが発生します。
例えば、野球ゲームはたくさんあり、各々のパブリッシャーさんは同業他社になり、パブリッシャーさん同士の連携の問題が同時に発生してきます。同業他社さんとどのように連携しながら、大会を行うか?これに対して、大きなハードルがあるのではと我々は考えております。
これを解消するときに、「権利を手放す=未来への投資」ではないか。と今この場で言わせていただきます。もちろん権利を手放せ、そんな簡単に言える話ではございません。ですが、我々としてはただで権利を手放せとは絶対に言いません。当たり前です。ただ、この点、権利をどう手放すかによっては、それがeスポーツ界の未来への投資としてさらに戻ってくるのではないかなと。さらにプラスになるのではと我々として提案させていただきたいです。
権利をどう手放すかによりますが、少なくとも総合型eスポーツ大会を開催することに対する、大きなハードルを解消できます。正直、大会を開催させて頂いている中でも、大きな1歩になると考えております。そこで我々から1つだけですが、こういうふうに手放していけば、今後eスポーツに対して、よりプラスに向いていくんじゃないかなと。パブリッシャーさんもその協力会社さんもwin-winの関係。そしてプレイヤーたち。eスポーツにかかわるすべての人にとってプラスになる関係性をこの場で提案させていただきます。

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パブリッシャー様が大会を開催するにあたる権利はある程度手放すと、大会を開催することに対して投資をしやすい環境になると思います。当然、そのeスポーツに対する投資が増えるか思います。eスポーツ大会に対する投資が増えたということは、より大会が開催されやすい環境、そして大会の規模が大きくなりやすい環境が構築されます。
それによって、さらなる市場の拡大、eスポーツ市場の拡大、そしてユーザーの増加、同時に大会を数多く開催しますので、プレイヤーも、視聴者の皆さんも増えていく。市場の拡大とユーザーの増加が同時に見込める。市場が拡大すれば当然、企業の皆様においてはもちろん、winな関係だと。ユーザーが増えるということは、新規のプレイヤーも増え、タイトルを発売しているパブリッシャー様においてはソフトウェアの販売数がより増えると思います。大会そのものが、そのタイトルのプロモーションになりますので、プレイヤーもどんどん増えていき、パブリッシャー様も企業様にもメリットが大きくなります。そこで得たお金が今回のミソで、eスポーツで得た資金はeスポーツに投資しないとesports界は発展しないと思っています。どのコンテンツにおいてもそうだと思いますが、何かのコンテンツに投資して帰ってきたら、それをさらにもう一回投資することによって正の循環、いい循環を生み出す。さらにeスポーツが発展する1つのキーになるのではないかと思います。逆にこれがないと、このサイクルが発生しないので、ただただパブリッシャー様の権利を手放し損と言う形になります。eスポーツにお金をかけて、さらにそこでキックバックされたものをさらにeスポーツにかけていく循環を生み出すことができるか、これにeスポーツの未来がかかっていると思っています。正直、非現実なこと言っていることは重々承知していますが、このような形でeスポーツ界の未来を創っていく。そういった世界を見られることを切に願っている状況です。

我々からのメッセージ

ここからもう少し、私たち学生e-sports連盟からメッセージということで何点かお話させていただきます。
まず1つ目。eスポーツに関わる人間全てが各々の意識と常識を変えればならない。すべてのeスポーツ好きな人がeスポーツで生きていきたいと思っているワケではないと思うのですが、好きなeスポーツに関わり、生きていきたいと思ってもできない。好きなことで生きていける可能性がどこまであるかわからず、門戸が狭いと思ってしまっている。そうじゃないと言いたいです、eスポーツ=好きなことで生きていける可能性はだれにでもあると思っています。そしてその門戸は思いのほか広く開かれています。
中高生の調査などでなりたい職業ナンバー3ぐらいにプロゲーマーが入ってきたかと思うのですけれども、プロゲーマーだけじゃないですよね。もっともっと広く考えれば、eスポーツにかかわることで生きていける可能性はもっともっとあるのではないかなと我々は思っています。その門戸が広く開かれているということを、まず認識しなければならない。

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そしてもう1つ、esports界を成長させるのはプロプレイヤーだけでもないです。スタッフだけでもないです。記者さんだけでもないです。すべてのeスポーツに関わる人々がeスポーツ界を成長させていく。そのことを意識しながら、さまざまなeスポーツに関わる活動をしていかないと未来がない。これが1番大事なんじゃないかと思います。

さらにもう1つ。eスポーツ大学対抗戦によって大学esports文化を創る。これは我々だけでは不可能だと思っています。当然です。我々もそうですし、サポートしていただいた企業様、法人様もそうです。IPホルダー様もそうです。そして何より、我々のユーザーである大学、サークル、大学生、こういう皆様と一緒にやって行く必要があり、協働共創と書かせていただきました。われわれの掲げる目的の実現というのは、こういう方々と共同し、一緒に創ることが必要不可欠だと思っております。

今後、様々な方々と一緒に大学esports界を次のステップに進めていきたい。精神論になってしまって申し訳ないですけが、そこが大学esports界を変えるための1番のキーコンテンツです。すべてのeスポーツに興味ある、もしくはeスポーツが好きな大学生が、誰もがeスポーツに関わることができる。eスポーツで何かをすることができる。そして、好きなeスポーツで社会に貢献できる。そんな環境を求めて活動していきます。ご清聴ありがとうございました。

※本稿は、2021年12月14日(火)に開催されたスポーツ産業アカデミー(ウエビナー)の講演内容をまとめたものである。
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著者プロフィール

日本スポーツ産業学会は「スポーツ産業の健全な発展に寄与できる学会」「産官学の共同による開かれた学会」「国際性豊かな学会」等を中心テーマとし、平成2年に設立されました。 当学会が運営している「SPORTS BUSINESS ONLINE」は、論文誌「スポーツ産業学研究」、情報誌「Sports Business & Management Review」に続く第3の情報媒体として2021年に開設したWebジャーナルです。 コンセプトは「スポーツビジネスのあらゆる情報が集結するオンラインジャーナル」。 本学会が主催するセミナーや学会大会などの情報(案内・プログラム・講演録)や、論文記事情報などを中心に様々な情報を発信しています。

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