元王者・狩野亮、本命種目でメダルならず コロナ禍で「世界との距離」測れず浮彫りに

スポーツナビ

北京に向けて、活動の拠点を北海道に移した狩野

狩野は拠点を北海道に移し北京へ向け4年間を過ごしてきた 【写真は共同】

 悔しさが残った平昌大会の後、狩野は活動の拠点を地元・北海道に移した。

「まずは環境を変えてスタートを切りたかったという理由もあります。北海道で出会ったトレ―ナーさんと一緒に、下半身の感覚がある部分と麻痺(まひ)している部分の境目を重点的に鍛えてきました」

 トレーニングによって体幹でバランスが取れるようになり、どんな状況でも安定感のある滑りに繋(つな)がったと明かす狩野。これまで獲得してきたメダルは全て高速系種目で、今回の北京パラリンピックでも「メダルが狙えるのは高速系」と話していた。

 しかし、5日に行われた滑降は7位、スーパー大回転では途中棄権。4年前のリベンジとして臨んだ本命の種目でメダルを逃す結果に終わった。

「自分が思っていた順位までは上がれなかったなと思っています。結果が今の現実ですし、やり切った。それが今の全てかなと思います」

今大会で実感した「世界との差」

【Getty Images】

 昨シーズンは世界選手権や北京パラリンピックのプレ大会などが中止となり、今シーズンも世界中で猛威を振るう「オミクロン株」の影響で世界選手権の派遣が見送り(編注:ヨーロッパ遠征中だった立位チームは参加)になるなど、新型コロナウイルスの発生から約2年間、世界の選手と戦う機会が失われていた。狩野も北京大会前にコロナ禍の2年間について心境を明かしていた。

「(パラリンピックの)プレ大会などがコロナ禍で中止となり、北京のコース状況や山のレイアウトも分からない中ですが、今できることを一つひとつ積み重ねてきました。今の自分はどこのレベルで勝負ができるのか。どんな結果を収められるのか。北京パラリンピックでしっかりと見定めたいと思っています」

 コロナ禍によって測れず、今大会で浮き彫りとなった「世界との距離」。北京のコースが非常に難しく、海外のタフなコースで経験を積めなかったのも大きかった。レース後、狩野は次のように語った。

「今回の北京のコースでは、僕の力では表彰台に届かなかったんだなと、真摯(しんし)に受け止めたいなと思います。ダウンヒル(滑降)の映像を昨日帰って見直しました。僕なりにはそんなに悪くない滑りでしたが、あれだけ(トップと)差がついているんですよね。タイムを縮められても1、2秒だと。彼ら(世界のトップ選手たち)も伸びているんだなと感じました」

 狩野はこの後、7日に行われる高速系と技術系の複合種目、スーパー複合に出場する予定だ。メダル獲得のチャンスはまだ残されている。

 本命種目での表彰台は逃したが、北京パラリンピックはまだ始まったばかり。残り3種目で最高の結果を得るために、狩野は前を向く。

(取材・文:赤坂直人/スポーツナビ)

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント