決勝進出の決め手は「HT後の1投目」 近江谷杏菜がロコ・ソラーレの快挙を分析

竹田聡一郎

9エンドの大ピンチは「さっちゃん無双」で切り抜ける

9エンドのピンチ、ラストロックと、藤沢は要所で確実にショットを決めてくれた 【Photo by Lintao Zhang/Getty Images】

――ウィックも効いて8エンドに最低限の1点を追加。いよいよ勝ちが見えてきたところで、9エンドにはあわや4失点という大ピンチが待っていました。

 この試合で最大のピンチでしたね。日本にミスが出てしまったので仕方ない一方で、ここまでエンドコントロールができていたので、仮に3失点を喫しても7-8。10エンドに逆転すればOK。という開き直り方ができていたのも良かったのかもしれません。ただ、それ以上に藤沢選手の2投が本当に素晴らしかった。1投目であわやトリプルというダブルを決め、さらにシューターを相手の石にロールさせるナイスショット。2投目でもダブルを決めて1点でセーブしてくれました。「さっちゃん無双」と言いますか、ここはスキップが大仕事をしてくれましたね。

――最終10エンドも先ほど挙がった夕梨花選手のウィックをはじめ、見渡しのよいエンドにできました。

 ほぼ完璧だったと思います。ただ、さすがは世界選手権王者スイスです。最後まで本当に粘り強く、藤沢選手のラストロックが短かったり長かったりすればエキストラエンド(延長)突入というプレッシャーをかけてきましたね。

――藤沢選手のラストロック、ひょっとして少し長いかなと一瞬、日本中がヒヤリとしました。

 そうですね。でも、氷上では藤沢選手がリリース直後に「けっこう押した」とスイーパーに情報を共有して、ハウスで待つ吉田知那美選手もストーンの動きを見て「キープしてるよ」と声をかけています。

 これがたとえば「曲がり始めた」であれば、ストーンはどんどん減速しながら曲がっていってしまうのですが、この場合はリリースからストーンの進みがキープしている。つまり予想よりちょっと滑っているという意味ですね。それを聞いて鈴木選手、夕梨花選手は冷静にスイープをやめました。最後まで全選手が集中力を切らさずやるべきことをした結果が出ましたね。

――会心の勝利で、いよいよ決勝を迎えます。

 多くの方にイメージがあると思いますが、ロコ・ソラーレは大舞台を楽しめるチームです。相手の英国も、準決勝で劇的なゲームで優勝候補筆頭のスウェーデンに勝った素晴らしいチーム。どんな結果になっても全員にとって幸せな時間になると思います。

近江谷杏菜(おおみやあんな)

【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 1989年北海道北見市常呂町生まれ。2006年の日本ジュニア選手権でスキップとして優勝するなど世代を代表するカーラーとして活躍し、2008年から当時の日本代表チーム「チーム青森」に加入。本橋麻里(現ロコ・ステラ)、石崎琴美(現ロコ・ソラーレ)らとともに2010年バンクーバー五輪出場。現在はフォルティウスのメンバーとして日本選手権連覇を目指す一方で、日本カーリング協会のアスリート委員としてカーリング競技の強化、向上にも尽力している。趣味はスポーツ観戦と編み物。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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