【フィギュアスケート】全日本選手権プレビュー|北京五輪日本代表内定をかけた男子シングル

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【(C)Getty Images】

4年分の努力と想いを形にするために。すでにオリンピックの栄光を味わった王者も、北京の大舞台を夢見る実力者たちも、さらに先の4年後を目指す若者たちも…。2021年の全日本フィギュアスケート選手権に全身全霊で挑む。懸けるのは日本一のタイトルと、北京五輪行きの切符だ。

■ぶっつけ本番の羽生結弦
男子シングルに出場する32選手の中でただ一人、羽生結弦だけが今季ここまで1試合も戦っていない。出場を予定していたISU(国際スケート連盟)グランプリ(GP)シリーズ2大会は、右足関節靭帯損傷で欠場。文字通りぶっつけ本番で大一番に臨む。

身体の状態は心配されるが、プログラムの完成度を不安視する必要はないはずだ。27歳のベテランには経験がある。新型コロナウイルスに翻弄された昨季も、やはり羽生にとっては全日本選手権が初戦だったが、2つの新プログラムは完璧に仕上がっていた。

いずれもノーミスはもちろん、特にフリースケーティング(FS)「天と地と」では、4回転4本でとてつもない出来栄え点(GOE)を叩き出し、演技構成点では多くのジャッジが10点満点を連発した。今季も同じくFS「天と地と」と、初公開のショートプログラム(SP)「序奏とロンドカプリチオーソ」で、傑出した演技を披露してくれるだろう。

『五輪3連覇よりも4回転アクセルを飛びたい』

昨季から羽生はこう繰り返してきた。すでに五輪2連覇、世界選手権2勝、世界ジュニア選手権1勝、四大陸1勝、グランプリファイナル4勝、ジュニアグランプリファイナル1勝。史上唯一の「スーパースラム」を達成した絶対王者の前人未到への挑戦は、全日本選手権で見られるだろうか。もちろん6度目となる全日本選手権のタイトルを手にすればその瞬間、羽生の北京五輪への出場がストレートに決定する。

■5度目の優勝目指す宇野昌磨
ただし、頼もしい後輩たちは簡単に道を譲ってはくれないだろう。その筆頭が2年前に直接対決で羽生を下し、全日本選手権4連覇を達成した宇野昌磨だ。

宇野は平昌五輪でも世界選手権でも銀メダルに甘んじてきた。しかし1年前の全日本選手権で、羽生が見せた圧巻の滑りこそが宇野を刺激した。勝利と追い求める貪欲さに目覚め、理想を高く掲げる。それがFSに4回転を5本組み込むこと。すでにGPシリーズで同構成に挑んだが、アメリカ杯では4回転サルコウがダウングレード、NHK杯では4回転フリップが2回転に終わった。それでもNHK杯では、今季の日本人で1位、世界では3位のトータルスコアを記録した。

全日本選手権の大事な舞台でも、挑戦を回避するつもりはない。最高難度で勝たなければ意味がない。失敗は覚悟の上だ。自らに滑る喜びを教えてくれたステファン・ランビエルコーチが振り付けたFSのプログラム「ボレロ」で、楽しく、毅然と、宇野は攻める。

■世界ランキング1位の鍵山優真
鍵山優真の勢いはもはや止まりそうもない。全日本ジュニア王者として推薦出場した2019年全日本選手権で、高校1年生としては24年ぶりに表彰台に立った。昨年の大会も同じく上から3番目の位置に立つと、世界選手権では初登場で銀メダル獲得の快挙。今シーズンは男子では世界でも唯一の、GPシリーズ2大会優勝を果たした。

3年間の成績で計算される世界ランキングでは、堂々1位に君臨する。つまり日本スケート連盟の定める五輪出場選考基準をほぼクリアしていると言ってもいい。それでも本人は「優勝して五輪出場権を手に入れたい」と断言する。過去2大会はいずれも羽生と宇野の姿を下から仰ぎ見た。今でも「2人を追いかける立場」と高校3年生の鍵山は語るが、この全日本選手権で追いつき追い越す瞬間が見られるか。

■佐藤駿、友野一希らの台頭にも期待
鍵山と同学年で、2年前にジュニアGPファイナルを制した佐藤駿も高い潜在能力を秘めている。シニアデビューの昨シーズンこそ序盤に股関節を痛め、友達でありライバルである鍵山に後れを取ったが、今季GPシリーズではアメリカ杯4位、フランス杯2位と好成績を並べた。しかもフランス杯では、4回転の中でも基礎点の高いルッツとフリップを着氷。5種類の4回転を操る天才肌のジャンパーとして、一気にトップへの階段を駆け上がる可能性もある。

友野一希も、大旋風を巻き起こすかもしれない。なにしろ最高のエンターテイナーだ。2018年世界選手権では弾けるような演技でFS3位と大健闘し、今季のFS「ラ・ラ・ランド」の締めのコレオシークエンスはまさに傑作。今季GPシリーズロシア大会はSP首位で折り返した。トータルは3位で終え、強烈に「悔しい」と感じたという。世界ジュニア選手権、世界選手権、GPシリーズのすべてが「補欠繰り上がり」による出場だったが、今度こそ、正式な代表選手として五輪への扉を開きたい。

ベテランながらチャレンジングなプログラム作りで存在感が光る田中刑事、5年前の大ケガから復活を遂げ今やその先の進化段階に突入した山本草太も、表彰台に食い込む実力は十分に持っている。島田高志郎もワルシャワ杯SPで見せたような端正な演技を2本揃えることができれば、怖い存在になる。

日本の未来を支えるであろう1人、16歳の三浦佳生にも注目したい。スピード感あふれる滑りと、ダイナミックなジャンプ。今季の全日本ジュニア選手権ではSP7位と出遅れながら、FSで巻き返し優勝した強い精神力も持つ。今の現実的な目標は、来年3月のジュニア世界選手権の表彰台。2026年のミラノ・コルティナ五輪に向けて、はじめの一歩を踏み出したい。
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