【浦和レッズスペシャルインタビュー】個人昇格から日本の頂点、そしてアジアへ。浦和レッズの未来を担う平野佑一、小泉佳穂、明本考浩のタイトルへの決意
【©URAWA REDS】
12日に埼玉スタジアムで行われた天皇杯 準決勝 セレッソ大阪戦。2-0で勝利し、決勝進出を決めた試合のスタートをピッチで迎えた11人のうちで6人、交代出場した5人のうち3人が今季加入した選手たちだった。
【©URAWA REDS】
C大阪戦では股抜きとキックフェイントで2人の相手を抜き去り、GKの逆を突くスーパーゴールで勝負を決定付けた小泉佳穂。圧倒的な運動量とスプリントで攻守に渡って獅子奮迅の活躍を見せている明本考浩。シーズン途中に加入し、テンポのいいショートパスや鋭い縦パスで攻撃をビルドアップする平野佑一。
J2時代の小泉、平野、明本 【©J.LEAGUE】
そして19日、天皇杯 決勝 大分トリニータ戦でタイトルと来季のAFCチャンピオンズリーグ出場権を懸けた試合に臨む。
【©URAWA REDS】
小泉佳穂は真っすぐ前を見たまなざしと同じほど、語気に力を込めた。
絶対的な自信があったわけではない。他人を気にしている余裕がなかったことも含め、2人の活躍を予感していたわけでもない。
それでも小泉は、昨季までJ1リーグの経験がなかった選手たちの活躍には、はっきりとした理由があると確信している。
「一つは、J2リーグのレベルが確実に上がっていて、J2リーグの中にも巡り合わせによってはJ1リーグで通用する選手はたくさんいます」
【©URAWA REDS】
「巡り合わせという点で言えば、リカルド監督のサッカーとマッチする特性を持っていた。特に僕と佑一君はそうだと思います。あと一つ大事だと思うのは、表現が難しいですが…」
行動よりも先に思考するタイプの小泉は、少しだけ間を取り、脳裏に浮かぶ言葉を探しながら続けた。
【©URAWA REDS】
経験を重ねた選手と比べ、自分のキャンバスにはまだ余白が多い。技術や運動能力といった下地は必要だが、監督たちが塗ろうとする色に染まることができる。それにまた自分の色を重ね、さらに鮮やかな色を放つこともできる。
【©URAWA REDS】
大きな夢を描くタイプではなく、目の前のことに集中しなければ奮闘できないタイプだったからだ。ただ、環境がそうさせた面もある。
FC東京U-15むさしからFC東京U-18に昇格できなかった。前橋育英高校でも確固たるポジションを得られたわけではなく、プロにはなれなかった。青山学院大学ではほとんどがプロを志望しないサッカー部の中でモチベーションを失いかけた。FC琉球でのプロ1年目はJ2リーグでもなかなか試合に出られなかった。
「逆に先を見ていたら絶望していたから見られなかったんです。そのときそのときで先が見える状況ではありませんでした。だから自信を持っていた時代がありません」
それでも、レッズに加入することが決まると、タイトルを想像することができるようになった。
【©URAWA REDS】
そして今、タイトルをつかみたいと切に思う。
【©URAWA REDS】
平野佑一も、日本最高峰の舞台でタイトルを獲る自分の姿をつい最近までは想像していなかった。
「自分でもまだびっくりしているような状態です。こんなにうまくいくと思っていませんでしたし、そもそも夏にレッズに来るとも思っていませんでした。分からないものですね」
【©URAWA REDS】
「じゃあ、俺もJ1で成功しないじゃないですか」
平野は先輩の言葉に笑いながら、でも少しだけ無念さと不信感を込めてそう返した。その相手は、今季から水戸ホーリーホックでプレーしている中里崇宏だった。
中里崇宏 【©J.LEAGUE】
「最近は個人昇格で活躍する選手もいるけど、ボランチに限ってはJ2からJ1に移籍してうまくいっている選手はほとんどいない。チームとして昇格したボランチは別として、個人昇格のボランチがJ1でうまくいっている選手を俺は知らない」
どこまでを「個人昇格」と表現できるのか、何をもって「うまくいっている」と評価できるのか、人それぞれであり、異論もあるだろう。ただ、まだレッズに移籍することなど想像もしていなかった当時の平野は、兄のように慕う6歳上の先輩の言葉を聞き、頭を抱えた。
興梠にプレスをかける水戸時代の平野 【©URAWA REDS】
しかし、それからわずか数ヶ月で平野はレッズへ加入した。とにかく初戦が大事だと思っていたが、加入が決まってから初戦までわずかに8日。戦術の吸収も準備もままならなかった。だからなりふりを構えなかった。
そんなとき、ある選手が平野のおもいを包容してくれた。初めて会った際には「うわっ、有名人だ」と思った先輩だった。
【©URAWA REDS】
そうして初戦ながら自分の持ち味を出し、まるで何試合も戦っているように周囲に指示を与えて連敗ストップに貢献した平野は、ほどなくして主力となった。彼が持つビルドアップ能力は、リカルド監督が作るチームの完成度を高めたとさえ言われる。
【©URAWA REDS】
そう言って平野は笑った。
「勘違いしては成長が止まる」と思っている。だから普段は自分の好プレーの映像は見ない。SNSのタイムラインに流れてきた映像を見てしまえば「誰だよ、リツイートしたのは」と口を尖らせる。そうは思いながらも映像に釘付けになって悦に入るのだが、すぐに我に返って普段はうまくいかなかったプレー、課題であるポイントを映像で確認する。
【©URAWA REDS】
『理論』タイプの2人とは対照的に、『直感』タイプの明本は、タイトルを獲得する自分の姿を思い描いていた。
【©URAWA REDS】
それでも明本はJ1リーグのクラブからのオファーを断り、自らプロキャリアを栃木SCで始めることを選んだ。幼少期からお世話になったクラブでプレーすることは、具体的なオファーが来る前から決めていたことだった。
栃木時代の明本 【©J.LEAGUE】
「でも、今となっては間違っていなかったと思います。充実しているので後悔はありません」
いつか何かが起きると思っていた。たとえば将来のことを思えば、「いつかケガをするかもしれないし、どうなるかは分からない」と慎重な言葉を選ぶが、根拠のない自信もあった。プロ1年目を栃木で過ごし、自分を信じたからこそ、2年目のレッズからのオファーがあった。ワクワクしながら新指揮官が率いるチームに飛び込んでみると、さまざまな役割を与えられた。
「ポジションはどこ?」と冗談めかして聞けば、「自分でも分かりません」と笑う。
【©URAWA REDS】
ただ、明本のポジションが分からないのは、複数のポジションをこなすからではない。そもそもリカルド監督のサッカーにおいて、ポジションはスタートの立ち位置にすぎず、フォーメーションの表記もあまり意味を持たないが、明本は目まぐるしくプレー位置を変える。
【©URAWA REDS】
そのプレーからは野生味さえ感じられるが、無鉄砲ではない。レッズで、リカルド監督のもとで鍛えられていることがある。
【©URAWA REDS】
三者三様ではあるが、それぞれがレッズで成長し、自信を手にした。そして、頂点まであと1つの場所までやってきた。
【©J.LEAGUE】
「このメンバーでタイトルが懸かった試合を戦うことは一生に一度です。まずはこのチーム全員でしっかりとタイトルを獲りたいです。僕は一番、闘う姿勢を前面に出さなければいけない選手ですので、ファン・サポーターの方々、パートナーの方々にそういう姿を見せたいと思っています」(明本)
【©URAWA REDS】
【©URAWA REDS】
【©URAWA REDS】
【©URAWA REDS】
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ