連載:原晋「改革する思考」

青学大・原晋監督の「改革する思考」 経験、勘、度胸からの脱却

原晋

エビデンスを確認しながら意見交換ができる人材を育てるのが指導者に求められることだと原監督は言う 【写真:アフロスポーツ】

 競技面ではどうでしょう。指導、練習計画の策定においても、これからはKKDではなく、エビデンスに基づいた判断が求められるようになります。青学が2015年から2020年までの6年間で5回、箱根駅伝で優勝できたのは、他校とのエビデンスの差とも言えます。KKDではなく、科学。

 ただし、2019年のように敗れる場合もあります。しかし、エビデンスを基に考えていけば、間違った点に戻ることが可能なのです。

 私は今回の危機を通して、学生たちにもそうした発想を持って欲しいと考えています。ピンチをチャンスに変えるには、将来に対する問題点を日ごろから考える能力を磨いておかないと、身につきません。ピンチの時にあたふたしないようにするためには、目先のことにとらわれすぎず、中長期的な視野を学生時代から身につけておいて欲しいのです。

 そして、思ったことを伝えないとダメ。今回、政府が様々な政策を打ち出していくなかで、「おかしい」と思ったことに対しては声をあげることで、政策によってカバーされる領域が増えました。

 これは部の運営においても一緒で、常日頃から思ったことを声にする文化を作っておかないと、集団が間違った方向に向かってしまった場合に、みんなで沈没しかねない。青学は私を筆頭に「言いたがり」の人間が多いので、学生たちも臆せず意見を言える空気はあります。

 もはや、「ハイ、ハイ」といい返事をするだけの人材は必要ありません。意見を持ち、それをエビデンスで確認しながら、意見交換ができる人材を育てる。それがいま、指導者に求められている役割だと思うのです。

 私も、選手たちも、日本の未来に思いを馳せつつ、日々、できることに集中していくことが大切になるでしょう。幸い、いまの青学には先輩たちが積み上げてきたことでエビデンスがあり、大会に対しても様々なアプローチが可能になっています。こんなピンチのなかで創造性を発揮していきたいのです。

 その意識、「改革する思考」を、読者のみなさんと共有できればと思っています。

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