“MVP”鳥海の裏で支えるベテラン2人 車いすバスケの躍進に、若手への信頼感

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藤本「若手を信頼しきっている」

エースの藤本は若手の活躍に「彼らを信頼しきっています」と話す。ベテランと若手、相互の信頼関係の強さが日本の強みにつながっている 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 藤本は、鳥海やチーム最年少20歳の赤石竜我ら若手についてこう語る。

「僕なんかより、はるかにパフォーマンスが高いなと思ってやっています。彼らに支えられながらの40分間で、彼らを信頼しきっています。彼らのパフォーマンスが勝ちにつながる。彼らのミスをカバーするためにファイトして戦っている」

 もちろん、藤本のパフォーマンスが彼らより低いということはない。しかし本人が語るように、お互いが信頼しあっているからこそ、今のチームの好パフォーマンスがあるのだろう。そしてこう続けた。

「僕と赤石は一番(歳が)離れているんです、私生活で話題がかみ合うことはないですが、バスケットのトーンは一緒です。彼のどうしても勝ちたいという思い、そのためにやらなければいけない事を、かなり高いレベルでシェアできているということは、頭が下がります」

 藤本は謙遜(けんそん)するが、新たに加わるメンバーがそう思える環境を作ってきたのは、間違いなく藤本や香西ら、長年日本をけん引し続けてきた選手たちだ。

 最後に京谷HCに香西や藤本らの出来を尋ねると、「当然でしょう、あれくらいやってね」と答えた。その一言から強い信頼を感じ、そして少し間をおいてこう続けた。

「こういうビッグゲームの中で、ちゃんと形としてしっかり出せることは、彼らが日本代表を長年引っ張ってきたプライドがあるからでしょう。そう言った意味では、若手に負けじと、得点という形でパフォーマンスをだしているというのは、非常に助かってますし、全体としても良いチーム力アップになっていると思います」

 今大会の日本の強さは、「トランジションとディフェンス力」にあるのは間違いないが、その力を発揮できているのは、このチームの基礎を作ってきたベテランと、それを昇華させ躍動する若手がいるからだ。

 9月3日に行われる準決勝の英国戦、いよいよ未知の世界での試合となる。さまざまな年齢層の選手たちの働きがかみ合い、良いケミストリーを起こしている今のチームが、香西の言う「やるべきことをやり続ける」ことができれば、その先に決勝とメダルが見えてくるだろう。

(取材・文:細谷和憲/スポーツナビ)

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