ファン、クラブの双方がウインウイン STVVが発行したトークンの魅力とは?

飯尾篤史

購入者の中には仮想通貨投資家も

21年2月にはクロスバー当てチャレンジの罰ゲームを決める投票イベントを実施。敗者のFWデュカン・ナゾンがクラブマスコットに変装し、街を歩き回った 【(C)STVV】

 参画しているクラブのなかでも、STVVの投票や活動の頻度は特に高いという。ファン・サポーターにも好評で、購入者が増えているため、STVVのファントークンの価値はずいぶん高まっている。

「発行した当初は1ファントークン2.4ドル(約262円)だったんですけど、今は42ドル(約4600円※4月22日現在)。単純計算でも20倍近くのリターンが出ています。トルコのトラブゾンスポルやスイスのヤングボーイズ、PFL(プロフェッショナル・ファイターズ・リーグ)というアメリカの格闘技団体といった人気のあるスポーツ団体よりも、STVVの方が時価総額が高い。だから、STVVのファントークン購入者の中には、国内外のSTVVファン・サポーターのほかに、仮想通貨投資家も少なくないんです。純粋に投資としてファントークンを購入されているようです」

 実は、村田氏もバルセロナをはじめ、いくつかのクラブのファントークンを保有している。

「私自身、もともとスポーツやスポーツクラブのファンですし、こうした新しいサービスを使うことがすごく好きなので、すぐに購入してみました。それで、ファンエンゲージメントを高めるすごくいいサービスだなとユーザー目線で感じたので、STVVでも導入することに決めたんです」

欧州の中小クラブから問い合わせも

21年4月には復刻版レトロシャツのデザインを決める投票イベントが実施。往年のファン・サポーターの心を揺さぶる懐かしいキットがずらり 【xn--socios-hia.com】

 2020年12月のファントークン発行以来、順調に発行数を増やしているが、当初は困難もあったという。地元から異議を唱える声があがったのだ。

「地元のファン・サポーターに、オーナーシップを売るのかとか、チームカラーを勝手に変えられてしまうんじゃないかとか、地元ファンをないがしろにしてグローバルのファンを開拓しようとしているんじゃないかとか、誤解されてしまって。成績も芳しくなかったから、クラブへの疑義が強い時期でもあって。その後、しっかりコミュニケーションを取ってからは、みなさん、イベントに参加して、楽しんでくれています」

 現在、ヨーロッパのサッカー界でファントークンを発行しているのはビッグクラブばかり。ベルギーの地方クラブであるSTVVの参画は異色で、ヨーロッパの中小クラブからの問い合わせも多いという。

「ちゃんと運営できているの? 収入になっているの? っていろいろな質問が来ますね。ただ、これはやっぱりチームの力なので、小さいクラブとはいえ、マーケティングや広報が非常に頑張って運営してくれているから成り立っている。そのあたりもしっかり伝えるようにしています」

 ビジネスとしてのファントークンの可能性は、どう感じているのだろうか。

「今までサッカークラブやスポーツクラブは試合日にどれだけ稼げるかにフォーカスして運営されてきた部分があるので、営業やチケット販売の方々がものすごく活躍されてきたんですけれど。今回、非試合日にファンの方々にとって面白いイベントをやることで、今までになかった収益が生まれてきた。今後、マーケティングや広報の方々が収益に直結するような形で活躍できるような、パイロットケースになれたかなと思っています」

 今後はデジタルトレカゲームなどのNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)にも取り組んでいく予定だという。ヨーロッパのサッカーシーンで、中小クラブの可能性を広げるSTVVの取り組みから目が離せない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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