会心の走りで五輪切符をつかんだ伊藤達彦 加速度的な成長の先に、海外勢との戦いへ

加藤康博

ライバル・相澤には「絶対に負けたくない」

学生時代からのライバル・相澤晃には「絶対に負けたくない」。大舞台でリベンジを果たせるか、注目が集まる 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 東京国際大4年時にその才能を大きく開花させた。2019年7月のユニバーシアードのハーフマラソンで銅メダルを獲得し、20年の箱根駅伝では各大学のエースが集う2区で区間2位で走った。Honda入社後の昨年7月に、10000メートルで27分台に突入。そして2度の日本選手権での好結果と、加速度的に成長を遂げている。

「自分で考えてメニューを組んだり、いろいろなことにチャレンジできる環境が自分に合っているんです。ウェイトトレーニングも始めましたし、ほかの選手と一緒のメニューの時に、自分だけ少し遅れてスタートして追いつくようにし、負荷を上げることもありました」

 この日見せたスパート力はHondaで同期入社のスピードランナー、青木涼真との練習で磨いてきたものだ。学生時代は荒々しくダイナミックなフォームが特徴だったが、入社後は効率的な動きへと改善もはじめ、洗練されつつある。その可能性はまだ大きく広がっている。

 母国での大舞台で意識する相手は、先にその座を決めていた相澤だ。さかのぼればそのライバルは12月の日本選手権だけでなく、先に挙げたユニバーシアードの優勝者。箱根駅伝2区でも競り負けている。2人が肩を並べて走る姿は陸上ファンにはおなじみの光景となったが、「同学年で一番意識する相手です。相澤には絶対に負けたくないという気持ちで走ります」ともう負けるつもりはない。そして、視線はその先の海外勢との戦いにも目を向ける。

「世界大会となれば今日のようにペースも一定ではなく、上下動の展開もあります。チームには外国人選手が2名いるので、一緒に練習しながら対応できる力をつけていきます。日本人はトラックではかなわないと思われているのでそれを覆す走りをして、入賞できるように頑張りたいと思います」

 成長曲線が急激に上がっている23歳。残り3カ月でさらに成長してくれることだろう。その走りに期待したい。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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