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コロナ禍で生まれた「スポ止め」のいま
学生スポーツ支援から変革へ

3つのプロジェクトを展開

「スポーツを止めるな」は元ラグビー選手である野澤武史のアクションから始まり、ラグビーでの成功パターンをもとに他競技に横展開していった
「スポーツを止めるな」は元ラグビー選手である野澤武史のアクションから始まり、ラグビーでの成功パターンをもとに他競技に横展開していった【スポーツナビ】

――現在の活動内容について説明をお願いします。


最上 当社団法人は大きく分けると3つの枠組みになっています。1つは「HANDS UP」のシステムです。プレーをアピールして、次のプレーする機会を探してもらうものです。Twitterでやった活動を、もっとシステム化していかないと不都合があるなと気づいたからですね。


 競技、学校によっては、そもそもSNSへのアクセスを制限されている子どもがいます。また高校生よりもっと若い子にもチャレンジする機会が必要というニーズがありました。小学生がTwitterを使って投稿するのはちょっと怖いですよね。親御さん、先生方も中身を見られる、IDなどで管理されている安全安心な環境が必要だよね……というのがHANDS UPです。


 Twitterは一方的に選手がアピールしていました。これに対してHANDS UPは双方向で、学校サイドが「自分たちはどういうチームなのか」「どういう環境、歴史があるのか」といった内容を伝えられるんです。学校の入学方法もそうですね。そうなれば登録してくれた子どもたちの情報、選択肢が増えていきます。「プレーアピールシステム」と言っていますけど、実は学校やチームのアピールにもつながるものを志向して作っています。


 2つ目は「青春の宝プロジェクト」です。インターハイに代表されるような、大きな大会が昨年はなくなりました。つまり意図しないタイミングで、いきなり引退した子が出てしまっています。その子たちの思い出を作ってあげたいなという発想があって、学生さんからプレーの映像を公募して、トップアスリートが解説をつけてプレゼントする事業をやっています。


 ジャパンラグビートトップリーグ、Bリーグ選手会の皆さんと当社団法人で提携していま進めています。ラグビー、バスケ、柔道、バレーボール、アメフト……。この5競技で「青春の宝プロジェクト」を実施しています。全国どこから応募してくださって結構で、リモートが多いんですけど、上映会を学校で実際に行うところまでをやっています。タイミングが合えばトップアスリートが参加して、子どもたちとコミュニケーションを取ります。


 3つ目の活動が教育プログラムと呼んでいるもので、その柱が「1252プロジェクト」です。学校サイドには授業、部活、さらにコロナもある中で、プラスオンの授業はなかなか大変です。なので我々のような第三者が、専門家の知恵も借りながら、情報が発信できる仕組みを用意し、求める学校さんに提供することを目指しています。


伊藤 1年間52週のうち、個人差がありますけど、月経期間は約12週と言われています。それだけでなく月経前のPMS(月経前症候群)、PMDD(月経前不快気分障害)という症状も影響して、12週だけでない場合もあるのですが、この名前をつけさせていただきました。


 女性アスリートが活躍するためには月経、自分の体を理解していくことがすごく重要になってきます。「スポーツをやっていて良かった」「スポーツによって人生が素晴らしいものになった」と言える元アスリートを増やしたいという思いもあります。専門家の先生、さまざまなステークホルダーの方たちと話す、コミュニケーションを取る場所を作って、化学反応が起きたり、もっと周知が進んだり、意識が高まっていけばいいなと考えて立ち上げました。

「機会の平等」を提供し、人材輩出へ

学生スポーツ支援から変革へ。「機会の平等」を提供すると同時に、最終的には「人材の輩出」を目指す
学生スポーツ支援から変革へ。「機会の平等」を提供すると同時に、最終的には「人材の輩出」を目指す【スポーツナビ】

――活動を通して「スポーツを止めるな」が社会で果たすべき最終的な役割は何ですか? 


野澤 やはり人材の輩出です。どんな人材かと言うと、主体的に動ける人材です。そのために部活は最高の学びの場だと思っていますし、そこがより開かれていい場所になっていってほしいですね。「主体性な人材」を噛み砕いて言うと、判断・決断・行動ができる人材だと考えています。正しい判断をするためには正しい情報が必要で、そのために本当に必要なものを我々は提供したい。


 HANDS UPもただトップアスリートが上のレベルでやるために動画をアップするだけではありません。動画のアップは、セルフプロデュースを学ぶ機会になります。まず「リクルーターに見てもらうとはどういうことか?」と考えなければいけません。「自分の強みが何か」ってなかなか考える機会がないんですね。より主体的な人材を社会に輩出していけるようになることが、我々の使命の1つなのではないかと思っています。


最上 結果の平等ではなくて、「機会の平等」がポイントかなと思っています。地域、競技によって、環境にはすごく差がある。選手たちが学校の先生、親の庇護の下にあるうちは、みんなが公平にチャレンジできる機会をそろえてあげるべきだと考えています。我々の活動がそういった環境整備につながっていくといいですね。


 我々の活動はオンライン、デジタルと相性が良い反面、リテラシー格差が如実に出ます。そういった部分を埋める、リテラシーのスタンダードを引き上げていくことも必要です。我々の活動だけで補えるものではありませんが、目指すべきものはそこです。みんなが公平にチャレンジできる環境の中でフルスイングしてもらって、自立する人材になってもらうことが最終的な目的です。


――このムーブメントを推進する上で、これからより必要になってくるものはなんですか?


最上 いろいろ必要ですね(笑)。


伊藤 学生スポーツの選手一人ひとりが、もっとリスペクトされるべきだと思います。誰かの管理下にあって、支配されるのでなく、一人ひとりが自立するべきです。学生一人ひとりがそういう意識を持つために、やっていくべきことがいっぱいあります。せっかく「やってくれる人」がいても、受け取る側に意識がなかったら、(課題の解消は)なかなか進みません。学生アスリート自身の意識も課題なのかなと考えています。


野澤 僕が思ったのは、大人が変わることかな。この前ラグビーの大西将太郎さんが言っていたんですけど「スポーツを止めるな」と言ったとき、止めているのはすべて大人だと。部活の課題って、多くは大人が作ったものなんですね。子どもたちは「スポーツをやりたい」と言うだけなので。


 変化には痛みが伴うし、いままでやってきたことを否定しなければいけない場合もあります。大の大人が恥ずかしい思いをする場合もある。大人が積極的に変化を受け入れて行動する――。それをやっていかなければいけないのでは、と思いますね。


伊藤 スポーツ界も変革の時代に入ってきていると思います。

大島和人
大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。バスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、バレーなどの現場にも小まめに足を運び、試合観戦数は毎年300試合を超える。日本を実はサッカーだけでなくバスケ強国であるスペイン、バレー王国・ブラジルのような球技大国にすることが一生の夢で、“球技ライター”を自称している。

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