3000m障害は有力選手がめじろ押し 日本選手権から五輪代表は生まれるか?

加藤康博

故障から復帰の塩尻がレースを引っ張る

右膝靭帯の損傷から復帰した塩尻和也も、虎視眈々と優勝を狙う 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 今季、8分30秒00を切っているのがここまで名前を挙げた4人。しかし忘れてはいけないのが前回優勝者の阪口竜平(SGホールディングスグループ)。2月にボストン大での室内競技会男子5000mで日本歴代3位となる13分29秒61、7月のセイコーゴールデングランプリでも1500mを3分43秒53の自己ベストで走った。全日本実業団のこの種目を欠場し、今季は目立った記録を残していないものの、ハイペースで押し切れるスピード持久力とラストスパートは大きな魅力だ。

 そして順大時代の2016年にリオデジャネイロオリンピックに出場した塩尻和也(富士通)は、昨年大会の予選で8分27秒25の好タイムで走っている。ドーハ世界選手権出場が決まっていたものの、その後に出場したIAAFワールドチャレンジ(クロアチア・ザグレブ)のレース序盤に右膝を痛めて途中棄権。右膝靭帯損傷と診断され、手術に踏み切ったためドーハは走れなかった。3000m障害の復帰戦は9月。その間に周囲のレベルが上がったことに危機感を抱くも、「以前は標準記録突破は難しいと感じていましたが、他の選手がタイムを上げてきたことで、今は自分でも不可能ではないと考えています。挑戦者の気持ちで臨み、優勝を目指したい」と話す。11月の東日本実業団駅伝7区で区間賞を獲得するなど、状態は上がってきており、走力面での不安はない。オリンピアンの意地を見せたい。

 ホクレン千歳大会では先頭の1000m通過は2分47秒9、同じく2000mは5分39秒9だった。ラスト1周で先頭集団からフィレモン・キプラガット(愛三工業)と三浦が抜け出したが、そこまでは山口と青木も2人の背中についていた。今回の日本選手権もキプラガットがオープン参加で出場するため、同じペースでレースが進めば、東京オリンピック参加標準記録の突破は現実味を帯びてくる。しかし塩尻は序盤からハイペースで進める展開を好むため、ホクレン千歳大会以上のペースで前を引き、終盤までに他の選手をふるい落しにかかる可能性も十分に考えられる。いずれにせよ誰もが標準記録突破を視野に入れている以上、スローな展開は考えづらい。そこを勝ち切るのは果たして誰か。

 スタート時間は4日16時5分。トラック種目最初の東京オリンピック内定者がこの種目から生まれる可能性は十分にある。

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント