近鉄を失い16年、ホーム最終戦を振り返る 「本当のラスト」はあの日ではなく…
延長サヨナラ勝ちで全選手での場内一周
延長11回、星野がサヨナラ打を放つと全選手がベンチを飛び出した 【写真は共同】
近鉄ナインは勢いよくベンチから飛び出した。歓喜の輪がセカンドベース横で出来上がる。スタンドは総立ち。そして拍手。その後、所属する全選手がグラウンドに姿を現し、サインボールを投げ入れながら場内を一周。近鉄の球団歌が流れ、「ありがとう!」の声が飛ぶ。選手たちは目を潤ませ、ファンは涙した。それが歓喜の涙でないことは、誰もが知っていた。
本当の近鉄最終戦は…
グラウンド一周後、目を赤くはらし涙をこらえた中村紀洋(写真左) 【写真は共同】
この年を境に、選手たちの野球人生は大きく変わった。それはファンも同じだった。礒部選手会長は「近鉄への愛着や誇りは絶対に消えません」と言い、梨田監督は「お前たちがつけている背番号は、すべて近鉄バファローズの永久欠番だ」と選手たちを送り出したが、ファンの心情は、より複雑であり、ある意味で選手たちよりも深刻だった。結果的に「合併・消滅」は阻止できなかったのだ。結果的に選手たちに「行く先」はあったが、ファンにはなかった。「置き去りにされた」というのが、私を含めた多くの近鉄ファンの正直な気持ちだろう。
それでもプロ野球は続き、元近鉄戦士たちはそれぞれの道で懸命に働いた。「オリックスと楽天、どちらのファンにもなれなかった」私は、仕方なくチームではなく選手個人を応援し、コンピューターゲームの中で元近鉄戦士をかき集めて「架空の近鉄」を作った。しかし、年月が流れ、年々引退する選手が増えることで、それも不可能になった。それでも2020年現在、岩隈久志、坂口智隆、近藤一樹の3人が現役を続けている。近鉄消滅から16年、彼らが引退した時、ようやく、本当の意味で、「近鉄ラストゲーム」を迎えるのかもしれない。逆に言えば、それまでは最低限、「近鉄は存続している」ということでもある。
【お知らせ】プロ野球復刻試合速報を実施
「スポーツナビ 野球編集部」Twitterアカウントのリプライにていただいた、「あなたの印象に残る試合・思い出の試合」を参考に選出し、近鉄含む13球団の試合とオールスター名試合を復刻いたします。
今回取り上げた「2004年9月24日 近鉄vs.西武」は、5月6日(水)13時より速報開始!
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