若き侍はなぜ5位に終わったのか 投手優先、ショート偏重の編成が全て?

沢井史

響いた「本職不在」

内野手7人のうち6人が遊撃手。慣れないポジションを守る選手が続出していた(写真は東邦・熊田任洋) 【写真は共同】

 守備面に目を移すと、まず「本職不在」のポジションの影響が大きかった。

 今回は内野手7人のうち、遊撃手が6人選ばれている。坂下翔馬(智弁学園)は2年夏までは二塁手だったため二塁を守るのは良しとしても、慣れない一塁手を韮沢雄也(花咲徳栄)が主に務めることになった。

 国際大会は慣れないグラウンドコンディションや雨などの影響もあって、日本ではなかなかないボールの跳ね方をすることもあり、捕球には難しさに難しさを重ねた。送球する方も逸らすまい、とより慎重になってしまい、ミスにつながる場面も散見された。

 反対に外野手はわずか2人。遊撃手の森敬斗(桐蔭学園)が正中堅手となったが、ここにも「投手優先」の選考が影響している。2年生ながら選考された鵜沼魁斗(東海大相模)は出場機会が少なく、アメリカ戦で本塁打を放った横山陽樹(作新学院)もフルでスタメン出場したわけではない。

 外野は森が軸となっていたが、打撃のいい正外野手をもう1人でも選考しておけば、外野手を兼任した西や宮城への負担も軽減されたかもしれない。

2年生の選考は是か非か

横山(写真)や鵜沼といった2年生もメンバーに入ったが、秋季大会との折り合いは各都道府県レベルでも必要になる 【Getty Images】

 それともうひとつ。毎年ささやかれているのが、2年生の選考の是非だ。

 国際大会が開催されるこの時期は、来春のセンバツ出場への重要な参考資料となる秋季大会の時期が被るため、2年生で候補に挙がった選手がいても断る学校も少なくない。選ぶ側も慎重になるのは当然のことだが、最近だと17年のW杯カナダ大会で藤原恭大(大阪桐蔭〜千葉ロッテ)と小園海斗(報徳学園〜広島)が2年生ながら代表に選ばれ、1・2番コンビを組むなど大活躍した。

 今回選ばれた2年生は出場機会が少なかったため、「選ぶ必要があったのか」という声もある。鵜沼の在学する東海大相模は、7日に秋季大会初戦を迎えていることもあったからだ。ただ、昨年のアジア選手権では、2年生で唯一選考された奥川もマウンドに立つ機会は少なかったが、宿舎で同部屋だった根尾昂(大阪桐蔭〜中日)の姿勢に刺激を受けて秋以降に急成長。現在のように、世代を代表する投手になったケースもある。

 たとえ試合に出られなかったとしても、代表チームの空気を体感することで今後の彼らのプレースタイルに影響を及ぼすものは多く、チームに持ち帰って生かされる要素はあまりにも多い。

 ちなみに日本高野連の竹中雅彦事務局長によると、日本高野連として各都道府県の連盟に下級生で選ばれた選手や監督がいる場合は、大会の日程などを考慮してもらうよう毎年お願いはしているという。あとは都道府県レベルで、日の丸を背負って日本代表としてプレーすることがいかに誇らしく名誉であることなのかを、大会運営側がしっかり理解しなくてはならない。

世界の大舞台へどう目を向けていけるか

今回のメンバー20人。例によって甲子園終了直後にチーム形成を余儀なくされた。日本の高校野球は甲子園がすべてと言っていいほど大きなものだが、今後、世界の大舞台にどう目を向けていくのか 【Getty Images】

 木製バットの対応は、もう毎年言われ続けていることだ。

 昨年10月に国際大会のプロジェクトチームを発足。今年から木製バット対策や国際大会に向けた研修も含め、4月に3日間の一次候補合宿を行うなど、国際大会への意識は高まっている。

 だが、夏の甲子園後にメンバーを招集して合宿するなど、チーム形成の時期が短いことも課題だ。日本の高校野球はやはり甲子園の存在が大きい。それでも高校野球界全体で、世界の大舞台へどう目を向けていけるか。甲子園の先にある世界の頂に立つには、一つひとつの課題と向き合い、議論を重ねながら迅速にクリアにしていく必要がある。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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