若き侍はなぜ5位に終わったのか 投手優先、ショート偏重の編成が全て?

沢井史
 韓国・機張(キジャン)で行われた「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ(W杯)」。日本は5位で、最終日を待たずに全日程を終えた。2年前のカナダ大会は3位、4年前の日本大会は準優勝だったが、今大会は7年ぶりにメダルを獲得できなかった。

U-18侍ジャパンはスーパーラウンドを1勝2敗と負け越し、決勝および3位決定戦に駒を進められなかった 【Getty Images】

 世界一を目指してきた、若き侍ジャパンの戦いが終わった。

 スーパーラウンド最終戦、7日のオーストラリア戦に勝利すれば、上位進出へわずかな可能性を残していた。それだけに「今日はまず勝つことが全て」と奮起して挑んだが、5回無安打無失点ピッチングを見せた南アフリカ戦(8月31日)以来、7日ぶりの先発となった浅田将汰(有明)が2回に4点を失った。

 とはいえ、許したのは快音の響く鋭い当たりではなく、三塁手の石川昂弥(東邦)の後逸や、遊撃手の武岡龍世(八戸学院光星)が捕れそうな打球を捕球できずに中前に転がった当たりが安打となり、失点につながった。2番手の前佑囲斗(津田学園)、3番手の池田陽佑(智弁和歌山)がピンチを背負いながら粘投するも、最後まで打線が援護できず1対4で敗れた。

「投手ができる選手を優先したい」

韓国戦で満を持して先発した佐々木だが、右手血マメの影響でわずか1回で降板した(写真は永田監督が佐々木の様子を見るためにマウンドへ向かった場面) 【Getty Images】

 大会を通し、目についたのはこういった失策に近い安打や、守備のミスが結果的に失点につながったことだ。

 掘り下げて言うと、今回の代表選手は、投手、もしくは投手ができる選手を優先して選考されている。理由は、「10日間で最大9試合を戦わなければならない過密日程」と、「球数制限が設けられている」からだ。

 選ばれた選手の顔ぶれを見ると、まず「夏の甲子園で優勝した履正社の選手がいない」という声をよく聞いたが、実は履正社の選手数名も選考のテーブルには挙がっていた。だが、「投手ができる選手を優先したい」という現場の意向で、投手兼任の選手を選考するに至ったのだ。

「投手はいるに越したことはない」という思いでこの選考となったとはいえ、最速163キロの剛速球を持つ佐々木朗希(大船渡)や、夏の甲子園準優勝投手の奥川恭伸(星稜)、154キロ右腕の西純矢(創志学園)らの顔ぶれを見るように、今年は投手力が充実していた。

 実際、奥川は甲子園の疲労、佐々木は大学代表との壮行試合時に発覚した血マメの影響で、オープニングラウンドは登板を見送る事態も起きた。それでも西や宮城大弥(興南)、飯塚脩人(習志野)、林優樹(近江)ら「投手」として登録されたメンバーが奮起してマウンドに立ち、大量失点を喫する場面はほとんどなかった。

 佐々木の血マメに関してもさまざまな意見があるが、スーパーラウンド初戦のカナダ戦で奥川が快投を続ける中、継投はどうなるか注目された。ブルペンは展開ごとに飯塚や宮城、そして僅差だと佐々木が登板する可能性もあり、慌ただしく動いていた。

 だが、7回に追加点が入ったところで、8回からマウンドに立ったのは飯塚だった。佐々木は僅差を想定して相当数の投げ込みを行っており、その影響が翌日先発した韓国戦に出てしまったのかもしれない。展開が読めなかったとはいえ、首脳陣の起用法も明確ではなく、肩を作ってはベンチに戻り、そしてまたブルペンへ……という投手も何人か目に付いた。マウンド以外での“負担”が試合に影響していないとは言えなかったように思う。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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